糸にかける魔法
糸の話ばっかり続いてしまってる気がしますが、糸屋なのでご了承くださいませ。
テキスタイルに魔法をかける話は後日お話するとして、糸にかける魔法も基本的には同じなのですが、我々は
糸に蒸気を与える工程をセットと呼びます。
これがなかなか曲者なんです。
糸を作る工程の中で蒸気を加えるタイミングがいくつかあるのですが、一度セットしてしまった糸はそこで決まってしまうんです。
糸って繊維を束ねて出来ているんですが、繊維が蒸気を吸って膨らみます。その繊維がリラックスしてしまうんです。リラックスして繊維が元の状態に戻ります。特に蒸気の影響を受けやすいウールやアクリルは効果が出やすいです。
想像してみてください。
毎朝、頑張って整えた髪の毛が空がどんよりしてくるだけで収拾つかなくなったりして困りますよね?髪の毛がリラックスしちゃうんですよ。そしたら再度整えるのって大変ですよね?それです。
それを僕らはコントロールします。温度や時間、タイミングを駆使する事によって必要な膨らみや形状、キックバックを生み出します。温度が足りなかったり、時間が短かったり、タイミングが違えば必要な効果が出ないの上に、最終製品になった時に大きな差になって現れてしまうのです。
魔法は失敗すると自分に返って来ちゃうのです。
とても簡単な工程ですが、セットがうまくかかった時の効果は絶大で魅力ある製品に仕上がります。
だから魔法なのです。