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コラム:汗の力

 今日は「自給自足の暮らしに挑む人々」の投稿は一旦お休みにして、自身の暮らしについて、少し触れてみたいと思います。

30年ほど前に建てた我が家は、数年前に亡くなったけど、大工だった父親が、私たちのために腕を奮って建ててくれた木造家屋です。
寒さの厳しい2月頃に基礎工事を始め、庭に親父が寝泊まりできる小さな小屋を建てることから始め、一人でコツコツと時間を掛けて築いてくれたものです。

電気屋、板金屋といろんな人が出入りし、確実に組み上がってはいくものの、大工は親父ひとり、その進捗はゆっくりで、後から着工した近隣の家は、先に工事が完了、すでに入居が始まっていました。
一体いつになったら住み始められるのかと気を揉む一方で、半年近く単身で小屋に寝泊まりしながら働く親父の健康も心配です。時折差し入れをしたり、少しでも加勢をしようと、週末の度に大工見習いとして、現場に足を運んでいた当時のことが、今では懐かしい思い出です。

そんな愛着のある我が家も、長年住み続けてきたことで居間とキッチンの床材に、所々痛みが生じてきました。
そのため、今年、思い切ってリフォームをすることにしました。

先日は解体屋さんが来て床材をはがした後、床張りをする前に、根太(床材を貼るための基礎となる部分です。)に残った古い床材のカス、これの削り取る作業をお手伝いさせていただきました。

作業の途中、根太の表面に、親父の引いた墨付け跡を発見しました。


いつも黙々と仕事をしていた親父、週に1、2度は着替えを取りに実家に帰り、お袋の作る食事を口にしていましたが、それ以外は、自炊で質素な食事しかとっていませんでした。
半年も経った頃、無事に家が建ち、引き渡し時期を迎えることができました。その時、親父は元気で誇らし気な顔をしていましたが、いつになく痩せ細ってみえました。
一体どんな思いで日々を過ごし、この家を建ててくれたのか?

そんなことを思い出していたら、思わず涙がこぼれ出そうになりました。

残暑の空


床下から現れた墨付け跡は、暑い夏の日、毎日、額に汗しながら働いていた親父の姿を呼び戻し、確かにここにいたこと、今もここの場所に生きづいていることを教えてくれた気がして、ちょっと嬉しくなりました。

…ありがとうね。


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