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断捨離

「物を買うのはあんまり好きじゃないな。物が残らないように、食べ物とかサービスとかにお金使いたい」
大学生時代の友人がこう言ったのを聞いて、私は心底驚いた。手元に何も残らないなんて、なにかもったいない気がしたのだ。
「それ、なんでなの?」
「物が残ると、それを見るたびにお金を使った事実を思い出すから。それが嫌だ」
目から鱗とはこういう事なのだろう。

私自身は物が好きな人間だという自覚がある。物を集めるのも好きで、まるでカラスのように溜め込みたくなる。

こう書くとなんとも物質的な物欲全開のように聞こえるだろうが、実はそういうわけでもないのだ。どちらかと言うと、物に付随する「物語」の魔力が大きい。例えば、アルバイトに精を出して、それでようやく手に入れた洋服とか、店員さんとああでもないこうでもないと色んな話をした上で購入した万年筆とか、品物を手に入れた場面や状況について思い入れがあるのだ。それが品物の価値を高めている。

思えば、着物を買う時も、素材や産地にまつわる蘊蓄に惹かれて購入を決める事が多い。

だからこそ集めた物は手放し難いのだが、この度、色んな物を手放す事に決めた。「断捨離」というやつである。少し身軽になりたいと思ったのだ。そこには発想の転換もある。

考えようによっては、断捨離など大したことはない。なぜなら、エピソードに重みがあるなら、実は物自体には大して意味もないからだ。そしてエピソードはこうして写真と一緒に文章に残しておけばよい。という事で、しばらくは物を処分するつど、その物についての写真日記を付けていこうと思う。

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