第3回東大本番レベル模試 国語所感
■国語(現代文第1問)
総評:やや易
和田伸一郎『メディアと倫理 画面は慈悲なき世界を救済できるか』からの出題でした。文章自体は主張が一貫しており読みやすいものでした。出題内容も奇をてらったものはなく基本的なものです。入試本番にむけて、厳密な論理の把握・設問の要求にこたえる訓練を、過去問演習を通じて行いましょう。
㈠やや易
第三段落から第六段落にかけて「衝撃」の内容が繰り返されているので、その要素を丁寧に整理すれば良い問題でした。主語が「人々」ではなく、同時多発テロの「映像」であることには注意しましょう。
㈡やや易
抽象的な表現の説明が求められた問題でした。傍線部のある第八段落の冒頭「再度、画面の機能に~」で話題が変わることや、傍線部の直前までは「画面」本来の役割について書かれていること、さらに、第十一段落冒頭が「実際」で始まり第十段落の内容を確認していること等に注意すると、第八~第十段落の整理をすればよいと気付けるでしょう。
㈢標準
周辺部から根拠を拾うだけの問題です。傍線部直前の「したがって」に引っ張られて、直前部のみを用いて解答しないようにしましょう。この直前部は傍線部「それだけ」がさす部分です。
㈣標準
問われているのは「繭への引きこもり」がなぜ「もはや逃れようのないもの」なのか、です。最終段落で「お茶の間」と「繭」の対比が明示されています。「お茶の間」への逃避では、依然「世界」の中に存在したうえで、「最小限の集団性」があり、「画面」が見られた=「世界」に『存在し』直す余地があったのに対し、『繭化』では「世界それ自体」からひきこもる=もう「世界」に戻る余地のない極限、だというのが解答の中心に据えられるのは容易に把握できるでしょう。何よりも最初に傍線部に直接的につながるように、述語を決め、本文全体を踏まえ『世界への信仰』の喪失などにも触れてまとめましょう。
㈤標準
特別難しいものはありません。東大入試の漢字は基本的なものばかりなので、全問正解したいところです。
■国語(古文)
総評:やや易
文章自体、特別難しい単語が出てくることもなく、わかりやすいストーリ仕立てになっていました。このような比較的簡単な出題では、いかにミスなく解答できたかが差をつけるポイントとなる為、普段の演習においても、丁寧な解答を心がけましょう。
㈠ 標準
基本的な現代語訳問題です。傍線部を要素ごとにわけ、一言一句漏らすことなく訳出することを心がけましょう。イの「敢へて」が呼応の副詞であること、オ(理系はエ)の「罷る」には「目上の人のところから退出する」「参る」の他に「死ぬ」という意味があることもおさえておきましょう。
㈡ 標準
文章全体の理解が問われた問題でした。とはいえ、前述の通り文章自体は難解なものではないので、「夫」の「妻」は既に亡くなったこと、狭間という能の役者が文章最後の「よしある芸人」を指すことなどが把握できれば容易に解答できるでしょう。
㈢(文科のみ)やや易
狭間の父が「筑紫」に居続けた理由が問われています。筑紫に行ってもうまくいかなかったことを踏まえた上で、直前の「已然形+ば」に注目すると容易に解答できる問題でした。
㈣(文科のみ)やや易
まず、前後の文脈からこの発言の主が狭間の父であることをおさえましょう。すると、問われているのは、どうして「下人」が筑紫までやってきたのか、であると分かります。下人の心のうちについて述べられているのは直前部のみなので、そこをまとめれば解答できます。
㈤(理系は㈢)やや易
「いまいまし」というマイナスの言葉から、狭間の父の不快な感情があらわされていることが読み取れたら、あとは前後の文脈を適切に読み取り解答に反映するだけの問題です。㈡と同様に、狭間の父が、地元で亡くなったはずの妻と一緒に筑紫で暮らしていたが、それは実は幽霊であったという部分を捉えられた人には簡単だったでしょう。
■国語(漢文)
総評:標準
文章自体は書簡の一説ということで、よくある形の出題にはなりました。第一段落と第二段落に話の繋がりはないので、そこを勘違いするとやや読みづらかったかもしれません。
㈠ やや易
bは同型の繰り返しに注目すると容易に解答できた問題でした。cに関しては、現代においても「膝を交える」という表現があることからも意味を推測しやすかったのではないでしょうか。
㈡(文科のみ)易
傍線部「譬えば」や「なホ~ごとシ」の再読文字に注意すると、傍線部はこれまで述べられてきた内容の比喩であることが分かります。再読文字などの基本知識が問われる問題は、そろそろ確実に解答できるようにしておきましょう。
㈢(理科は㈡)標準
これまた傍線部の趣旨を説明する問題です。傍線部の二文は同じような内容を意味することや、ともに反語表現であることに注意し、前後の文脈を読み取りましょう。出来不出来にかかわりなく、これを機に反語表現の句形の再復習をしておきたいです。
㈣(理科は㈢)標準
些か読みづらいように思われますが、注釈をヒントにすると解答できた問題です。「於」の反復や「虞」⇔「秦」と「愚」⇔「智」の対比、傍線部直後の「之に遇へり」に注目し、「虞では愚か者であった百里奚が、秦では理解者に出会って智者となった」、という流れを捉えて傍線部に合うように解答を作成しましょう。また、傍線部に登場する「与」は複数の読み方・意味を持つのでこの機会にすべて覚えておきましょう。
■国語(現代文第4問)
総評:やや難
本文は、全体としての流れは理解しやすいですが、個々の主張の論理は、その根拠が周辺に細かく散りばめられているために把握しづらいものでした。その中でも、解答の根拠の範囲さえ確定させればあまり的外れな解答は書けないように設問が設定されていたので、本文内容が理解しづらくとも設問には食らいつき、普段訓練しているような解答の書き方にも留意しつつ少しでも得点を重ねてください。
(一)標準
理由となりそうな箇所を傍線部の周囲から見つけることは難しくないけれども、拾った要素をそのままつなげて書いて満足せず、よりわかりやすい表現がないかと考える丁寧さが必要。
(二)標準
比喩の処理は、第四問対策として必ず練習しておく必要があります。本問では傍線部に直喩が含まれているから、直喩の言い換えが必要。あとは、第9段落の内容を適度に抽象化すれば解答にたどりつけます。
(三)やや難
解答の根拠とすべき内容は傍線部から少し離れているから、第17段落まで読み進めなければなりません。本文内容が理解しにくかったとしても、理由となる内容の場所さえ特定すれば、それほど外れた解答にはならないでしょう。「光の光」という、筆者が用いる独特な表現をそのまま書くだけではなく、解答中でその意味を説明できたかどうかもポイントです。
(四)難
本問のように理由がわかりにくいとき、解答が傍線部の理由となるようにするには、傍線部をよく分析して、解答の述語を先に決めるのがよいでしょう。模範解答のように「信じる」ことと「理解する」ことを区別して考えるのは本番では困難と思われますから、本問では2〜3点獲得できれば十分です。
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