わたしの東大受験物語
はじめに
みなさんはじめまして。東進東大特進コースのスタッフで、東京大学文科一類1年の大森菜月(おおもり なつき)と申します。
私は愛知県の出身で、南山高等学校・中学校女子部という私立女子校で、中高6年間を過ごしました。
今回は、私が最終的に東大文系を志望するに至るまでの紆余曲折(本当にいろいろありました…)や、東大受験にあたっての勉強について振り返っていこうと思います。文理や志望校選択に迷っている方はぜひ始めから、もう決まっているよという方はその部分は飛ばしてでも、お付き合いいただけますと幸いです。
東大文系志望になった高1
中学生から晴れて高校1年生になった時の私の志望は、「名古屋大学理系」というものでした。今通っている大学と科類とは、まったくと言っていいほど被っていません。
この志望だった理由も、特に何ということもなくて、名古屋大学が家から近くて親や近所の人に頭がいいと褒められる大学だったから、そして私の高校でも目指す人が多かったからです。さらに、高校では理系志望の人が多く、周りの影響で私も理系にいこうかと考えていました。
そんな状態の高1春、中学受験を終えてから初めて受けた全国模試。結果を受け取ったのはもう少し後だったような気がしますが、思ったよりも成績がよく、名古屋大学はA判定、試しにと書いてみた京都大学もB判定でした(東大ではなく京大を書いた理由も簡単、家から近かったからです)。結果は素直に嬉しく、志望を変えてみようかと思うきっかけになりました。
一方で、英数国の3科目で受験しましたが、圧倒的に数学ができていませんでした……泣。さらに、文理選択について真剣に考えていくうちに、私は実は人文学に興味があるのではないかとも思い始めていました。
かっこいいリケジョや医学部進学へのふくらむ妄想もありましたが、理科よりも社会に興味があること、仲の良い友人に「あなたは文系だよね」と言われたことが決め手になって、私の中で文系志望が固まっていきました。
ところが。ここでまた一つ、大きな壁が立ちはだかります。親です。彼らは私の受験生活を通して圧倒的な味方でしたが、口出しもわりとありました。私自身や周りを見てきて、親が文理選択や志望校決定に及ぼす影響は限りなく大きいと感じています。私の父親は、「東大理系」推しでした。実は本人が東大理一の出身です。
この頃には、初めての模試の結果を踏まえて数学をきちんと勉強していたこともあり、偏差値では英数国での差はあまりない状態でした。こうなると私はいよいよ迷いだします。好きで得意なのは文系、でも稼げそうなのは理系(諸説あります)、京大の方が近いしお寺もたくさんあって楽しそうだけど東大の進振り制度もいいなあ……。脳内はおそらくこんな感じでした。夢があっていいですね。
しかし、学校の制度上、11月には文理を決めなければいけませんでした。日々、「文系にしようかな」と言うと「理系の方がいいよ」と親に言われ、でも文系の方が楽しいし、と悩み。結果として文系に決めたのは、この疲れる論争を今後も繰り返したくない、という思いもあったのではないかと思います。周囲のいろいろな人に相談し、「最終的に自分で決めないと、あとでうまくいかなかったときに他人を責めることになる」という言葉が決め手になりました。
このあと、「やっぱり理系にしておくべきだったか」と思ったことも何度かあります。しかし、自分で決めたことだから文句は言えないし、何より社会の勉強が楽しかったので、文系にしてよかったと心から思えています。(というか、理系にしていても、「やっぱり文系だったか」と私は思うことがあるでしょう。そういう人間です……。)
文系志望が確定したところで、志望校も決まりました。おそらく社会は得意なので、志望校もより高く設定できるだろうこと。そして父親の説得がこちらは実り(?)、入学時に学部を決めなくていい進振り制度に魅力を感じたこと。この2つから、東大志望が確定しました。このあと、志望が変わったことはありません。
以上、長くなってしまったので、文理・志望校選択において少し心にとめておいてもらえると嬉しいなと思うことをまとめてみます。
・志望校は高めに見積もっていいと思います。これから成績はいくらでも伸びます
・ご両親はあなたの味方です。ただ、時に意見が合わない時があります
・そんな時は、人生の先達の意見を可能な限り聞きながらも、最後は自分で決めてください
・自分で決めれば、あとでうまくいかなくなっても、ご両親のせいにはできません。なんとかこの選択をいいものにしようと自分で頑張る気になります
さらに以下、この期間の勉強についてです。
・全国規模の模試を一度受けてみてください
・結果を受けて、苦手と思わしき教科を集中的に学習しましょう
・英語:英単語1冊、英文法のぶ厚い問題集1冊を夏休みを使って完璧にしましょう。読書が好きな方は、ぜひ洋書の多読をしてみてください
・数学:数IAの網羅系の基礎問題集を3周くらいやって完璧にしましょう
・国語:古文は助動詞の活用や意味を、漢文は句形を覚えてください
このあたりがうまくいけば、模試でもかなりいい判定をもらえると思います。
やる気の出なかった高2
タイトルの通りです。こんなところに書くなんて本当に申し訳ないです……。今の怠惰のために、将来思わぬところで恥をかくかもしれないのでみなさんもお気をつけて。
ただ念のため言っておくと、高1できちんと勉強していたため成績はよく、模試でもすべて東大文系はA判定でした。
勉強もまったくしていなかったわけではないので、当時やっていたこと、今から振り返ってやっておくとよかったと思うことを書いていきます。
英語:
英単語帳をひたすら繰り返していました。1冊が完璧になったら、次の単語帳に移っていいと思います。基本的な単語はどれも同じですが、難単語は英単語帳によって違うことがあるので。
また、英文法を高1でしっかりめにやらなかった人はぜひここでやってほしいです。選択式で1000題くらい入っている問題集を周回しましょう。他動詞なのか自動詞なのか、この動詞のあとにはどの前置詞がおけるのか、等々。文法問題を解くときだけでなく、自分で英作文をするときに必須の知識です。
加えて、私は英作文が苦手だったので英作文の基礎的な問題集を1冊、発展的な問題集を1冊やりました。英文解釈が苦手な人、リスニングが苦手な人、さまざまだと思いますので、自分の苦手な単元を基礎から始めて応用までやってみてください。
また、高1のところにもさらっと書きましたが、洋書の多読は本当におすすめです。最初は簡単な絵本から始めて、慣れてくれば最終的にはハリー・ポッターの原書なんかも読めるようになります。東大英語の第5問は例年、物語や随筆が出ますが、ここで多読の経験を活かすことができます。高3生は時間が限られているので過去問演習等で第5問に慣れることをお勧めしますが、高2以下の方はぜひ。
数学:
数IAは基礎的な問題集を高1の時に終わらせていたので、より発展的な内容の問題集を解いていました。逆に高1で手をつけていなかった数IIBは基礎的な問題集から始め、終わり次第、発展的な問題集に移りました。
数学は伸ばすのに時間がかかる教科ですし、文系ですと高3からは社会の勉強が忙しくなると思います。高2の時点である程度の応用問題まで解けるようにしておくと、高3で少し余裕が持てるかと思います。
国語:
現代文は、どうしても苦手という方は林修先生の授業を受けるなど、自分以外の人の現代文の解き方や読み方を学び、それを真似してみると少しはつかめるのではないかと思います。
古文は古文単語と助動詞や助詞が大切です。古文単語は特に忘れやすいですが、模試のたびに直前に復習するなどすると、定着していくのではないかと思います。時間があって読書が好きだよ、という方はぜひ平安時代の日記や軍記物語の、古文と現代語訳が両方載っている本に手を出してみてください。私の勝手なおすすめは蜻蛉日記、更級日記と平家物語です。
漢文は句形と漢字の意味を覚えると読めるようになるかと思います。
社会と数学をやり続けた高3
そんなこんなで国数英はなんとか軌道に乗っていましたが、高3では、社会が課題になっていました。そもそも社会を始めたのが高2の2月か3月(ほぼ高3ですよね……)と遅く、選択も世界史・日本史だったので膨大な知識量に追われていました。もう少し早めに始められることをお勧めします。
さらに、数学は簡単めな問題だと解けるのですが、難しい問題になると途端に解けなくなりました。結局、ところどころ持ち直すことはあったものの、数学は高1の初めての模試からずっと苦手な教科であり続けました……泣。それでも感覚を失うのが怖かったので、社会の暗記をする傍ら、数学の問題集をぐるぐる解いていました。
以下はそれぞれの科目の勉強内容についてです。国数英に関しては、基本的なところはこれまで高1や高2のセクションで書いたことを参考にしていただけたらと思います。
英語:
得意だったのであまり時間を割きませんでした。全体を通しての過去問は3年分ほどやりました。
ただ、1Aや2Aが苦手だったので、この2つに関しては15〜20年分ほど解いたと思います。同じように1Bやリスニングが苦手という方は、まとまった量の過去問を解いてみてください。傾向がつかめて解きやすくなるかと思います。
また、4Aは苦手な方が多いと思います。私も漏れなく苦手でしたが、文法的な間違いを探そうとするのではなく、きちんと文意をとって最初から読んでいき、意味が通じなくなったところが答えの選択肢、という心持ちで解いていくことで、ある程度解けるようになりました。
数学:
単元別になっている過去問の問題集を買い、何周かしました。微積や確率が比較的できたので、この単元が出たら取れるようにしようと集中的に勉強していました。過去問は15年分ほど解きました。
国語:
現代文は林修先生の授業に任せっきりでした。過去問も授業でしか解いていません。漢字でいつも失点しまう人は、漢字の問題集を1回やるといいと思います。第4問は半分とれたら上出来だと思うので、点数が悪くても気にしないでください。
古文は永遠に言い続けますが単語と助動詞と助詞が大切です。漢文も句形と漢字の意味が大事。古文漢文の過去問は7年分やりました。古文は源氏物語などの物語系がでると異様に難しくなり、説話系が出ると簡単になるので、どちらも体験しておくとよいかと思います。漢文は詩に注意です。
日本史:
まずは教科書で流れを覚え、東進の一問一答を使って歴史用語を暗記しました。共通テストに出るくらいの単語は最低限覚えておくとよいと思います。過去問で東大の問題形式に慣れてください。どなたかに添削してもらえるといいと思います。
世界史:
同じく教科書で流れを把握し、一問一答で用語を暗記しました。用語の暗記で第3問は対応できると思います。第2問対策の個人的なおすすめは、一問一答の空欄の単語だけでなく、問題文も一緒に覚えてしまうことです。第一問は書きまくって添削していただいて慣れるのがいいかと思います。
思ったよりよかった共通テスト
共通テストは当たり前に緊張しました。そして当時は休み時間に換気をしていたので非常に寒かったです。お腹も空きました。
持っていくと大変なものは文字入りの服や鉛筆、ありがたいものはカイロとお菓子かと思います。
結果はこれまで受けてきた模試と比べて一番良く、落ち着いた気持ちで2次試験を迎えられることになりました。
また、早稲田大学の共通テスト利用にも出願していましたが、これも合格をもらうことができました。特に関東圏以外にお住まいの方は、共通テスト利用で合格をもらえると、交通費や移動時間を節約できてとてもいいと思います。
共通テストは実質初めての本番ですし、緊張することかと思います。(逆にしない方は羨ましいです!)ですが、模試などよりも問題が易しいことが多いですし、当日は学校の友人と同じ教室になれることもあります。(難しいとは思うのですが)なるべく平常心で、簡単めの模試のような気持ちで解いてさっさと帰りましょう。
2次試験
前日からホテルに泊まり、試験会場の下見に行きました。私は文系だったので駒場キャンパスでしたが、渋谷から近いのに閑静な雰囲気で、とても素敵なところだなと思ったのを覚えています。
実際は学生がいると閑静とは程遠いのは置いておいて、トイレや教室の位置の確認のためにも、下見に行くのはおすすめです。
翌日のお昼はホテルのルームサービスを使う予定でしたが、なんとルームサービスは現在ご提供しておりません、と言われてしまいました。完璧な計画とならず……ルームサービスをご検討の方はぜひあらかじめ確認してください。
諦めて渋谷マークシティでお惣菜を買いました。しかし下調べ不足のせいでお惣菜コーナーをなかなか見つけられず、電子レンジでできるご飯も見つからず、大変だったのはまた別の話……。みなさま下調べはしっかり。
気を取り直して1日めは、国語はわりにうまくいったのですが数学が悲惨でした。ただし想定内。
この日の夜は自己採点をしないように気をつけてください。間違いを見つけて落ち込むだけです。気になるとは思いますが、あの問題は途中で計算が間違っていたから完答できていない、と知ったしまうより、いちおう最後まで解いた、たぶん完答、と思いこんでいた方がいいと私は思います。
2日めは得意な英語と社会だったので、特に問題なく終わりました。そしてこの日は、ずっと読みたかったけれど勉強のために我慢していた本を持ち込んでいました。最後の試験が終わっても、解答用紙の回収とかで教室から解放されるまでには結構な時間があります。もうどうせ試験は終わっていますし、後期も受けるつもりがなかったので、この間は思う存分好きな本を読んでいました。
最後に2次試験のまとめです。
・下見はぜひしておくといいと思います
・お昼ご飯の予定は計画的に
・自己採点はしない方がいいです
・トイレに行きたくなったら隣の人をどかしてでも行きましょう。本番に行っている人もいました
・判定がいい人は、いつもの実力の120%を出そうとするのではなく、大きなミスをしないように心がけるのもありかと思います
・「やっと最後の模試だ」「早く終われ」という気持ちで私は解いていました
まとめ
長々と書いてしまいましたが、何か一つでもみなさんにとって有益な情報があれば幸いです。
みなさんの合格を心から応援しております!