#5 『Connected Love』
Connected Love
夜の街は冷たい空気に包まれ、アスファルトが静かに息をしているようだった。
彼女はスマホを手に立ち尽くしていた。画面に表示されるのは、見覚えのない番号からのメッセージ。
「ありがとう。」
短いその言葉が、忘れたはずの記憶を引き寄せる。番号を見た瞬間、彼女は分かってしまった。消したはずの記憶が、胸の奥で目を覚ます。
指が震える。打ち込んだ言葉はただ一言。
「どうして今?」
メッセージはすぐに返ってきた。
「会って話そう。あの場所で。」
彼女の頭に浮かんだのは、小さな公園だった。二人で見つけた秘密の場所。今もあるのだろうか――いや、行かなくてはならない。
公園に着いたとき、彼女は胸が締め付けられる思いがした。変わらない街灯、木々、ベンチ。そして落ち葉を踏む音だけが静寂を破る。
そこには誰もいなかった。
ポケットの中でスマホが振動する。画面を開くとまたメッセージが届いていた。
「空を見上げて。」
彼女が顔を上げると、無数の星が夜空を埋め尽くしていた。その星の中に浮かび上がる、かつて二人で見つけた「秘密の星座」。見えない絆で結ばれた物語。
その星座をぼんやりと見つめていると、彼女の胸に穏やかな暖かさが広がる。
スマホの画面には最後の言葉が表示されていた。
「僕はいつもここにいる。君の隣に。」
目頭が熱くなった。涙が頬を伝い、地面に小さな跡を残す。過去は変えられない。でも、つながりは今も残っている。それだけで十分だった。
彼女はそっとスマホに返信を打つ。
「ありがとう。」
それが最後のメッセージだった。彼女の心には静かな満足感が残った。星空が薄れていく朝焼けの中、彼女は新たな一歩を踏み出した。
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