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#10 『Fighting Spirit』

『Fighting Spirit』

暗闇に包まれた戦闘訓練施設「ナイン・バレルズ」の第七訓練場。無数のランプが明滅し、煙のような冷気が地面を覆っていた。ユナは荒い息を吐きながら、倒れた瓦礫の隙間から星空を見上げた。

「ここで終わるわけにはいかない……!」

心の奥底で湧き上がる叫びが、震える身体を無理やり立ち上がらせる。

その夜、訓練場に突然警報が鳴り響いた。適応者候補たちを鍛えるための施設が、謎の襲撃者に狙われたのだ。施設内にいる全員が試験どころではない現実の戦闘に巻き込まれた。教官のヴァレンティナは候補生たちを迅速に避難させるよう指示を出したが、ユナたちは最前線に立たざるを得なかった。

「ユナ!」

レオンの声が背後から響いた。振り返ると、彼は自分の傷だらけの手を差し出していた。

「一人で行くな! 俺たちはチームだろう!」

ユナは躊躇いながらもその手を取った。レオンの冷たい手の感触が、奇妙に安心感を与える。

訓練施設の中庭で、襲撃者との戦闘が繰り広げられた。敵は驚異的な速度と力を持つ機械兵器だった。ユナは訓練で習った戦術を思い出しながら、レオンやキースと連携して戦った。

「逃げてるだけじゃダメだ!」キースが叫んだ。「立ち向かわなきゃ、俺たちが守れるものなんて何もない!」

その言葉がユナの心に火をつけた。戦う理由を見つけられずにいた彼女だったが、今は目の前にいる仲間たちを守りたい、その一心で身体が動いた。

瓦礫の山を飛び越え、ユナは敵の攻撃をかわしながら接近する。そして、その瞬間、彼女の内なる力が解放された。適応者としての能力――物体を振動させる波動を操る力が覚醒したのだ。

光の波が敵を包み込み、次々に無力化していく。ユナの力に引き寄せられるように、レオンとキースも反撃を開始する。三人の連携が襲撃者たちを撃退し、施設を守り抜いた。

戦いが終わり、夜明けの光が差し込む中庭で、ユナは静かに目を閉じた。彼女の手のひらにはまだ力の余韻が残っている。

「これが、私の戦う理由……」

その言葉を聞いたヴァレンティナはそっと微笑み、彼女の肩に手を置いた。

「君には力がある。そして、その力を使う理由を見つけた。これからの君がどんな道を歩むか、それを見守らせてくれ。」

ユナは頷き、傷だらけの手を握りしめた。

まだ見ぬ未来に向けて――彼女の「戦う意志」は揺らぐことはない。

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