見出し画像

#4 『星空のカーテン』

『星空のカーテン』

夜の公園は静寂に包まれていた。少女は広場の隅にあるベンチに座り、見上げた夜空に吸い込まれるようだった。無数の星が瞬き、まるで空にかけられたカーテンのように広がっている。

「願い事をするなら、やっぱり星だよね。」
少女がつぶやいた瞬間、背後から声がした。
「星に願うだけじゃ叶わないけどね。でも、星はヒントをくれるかもしれない。」

驚いて振り向くと、年配の男性がそこに立っていた。肩には古びたリュック、手には小さな望遠鏡を抱えている。彼は微笑みながら、ベンチの端に腰を下ろした。

「何か悩んでいるのかい?」
少女は一瞬ためらったが、そっと頷いた。
「未来のことが、何もわからなくて。」

男性は望遠鏡を少女に手渡した。
「じゃあ、これで星を見てごらん。君が探しているものが見つかるかもしれない。」

恐る恐る望遠鏡を覗き込むと、目の前には無数の星々が広がっていた。いつも見る星空よりもずっと近く、ずっと鮮やかだ。

「小さな星でも、光を届けるのに何億年も旅をしている。そんな星を見ているとね、自分の進む道も見えてくる気がするんだ。」

少女は静かに望遠鏡から顔を上げた。星空の下、胸の中で小さな灯火がともったような気がした。


『時のカケラ』好評配信中!



TuneCoreクリエイターズ
Toshi Maruhashiの楽曲が無料BGMとしてご利用いただけます!
ダウンロードはこちらから



いいなと思ったら応援しよう!