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"DIG THE CULTURE Vol.20" 「林檎と紅茶と」

2023.10.25

タルトもスコーンもクッキーも、りんご尽くし。夢を叶えたベイクショップ&カフェ

店名の通り、ここはりんごの焼き菓子と紅茶がたのしめるお店。ショーケースにはタルトやチーズケーキ、スコーンなどの焼菓子が常時20種ほど並んでいて、そのほとんどにりんごが使われている。オーナーシェフの居石(すえいし)和恵さんは、子育てを終えた後にカフェの立ち上げを決意。どんな想いで出来上がったお店なのか、お話を聞いてきた。

農家さんが大切に育てた“訳ありりんご”を焼菓子に

20歳のころからパティシエとしてキャリアを積んできた居石さん。結婚・出産をきっかけに一度は仕事を離れたが、子供が大きくなったタイミングで「自分の店を持つ」という夢が再びむくむくと湧き上がってきた。そして2021年7月、西池袋のシェアキッチンで営業をスタート。1年後の2022年6月には、念願の実店舗「林檎と紅茶と」を椎名町にオープンした。下町に溶け込む、なんとも温かい雰囲気のお店だ。

「内装は韓国のカフェをイメージして、デザイナーさんと相談しながらつくりました。お客さんの幅はお子さんからお年寄りまで幅広くて、インスタグラムを見て遠くから来てくれる若い子もいます。りんごに特化しているので、りんご好きのお客様もいらっしゃいますよ」と居石さん。一緒に働く旦那さんも「楽しいですよ」と、笑顔を見せてくれる。
 
「林檎と紅茶と」という店名の通り、お店のテーマはりんごを使った焼菓子とそれに合う紅茶。紅茶が使われている焼菓子もおいしそうだ。でも、どうしてりんごと紅茶?

「父の実家がりんご農家で、味は良いのに傷があって出荷できない“訳ありりんご”が出るんです。それをおいしく活かしたくて、りんごの焼菓子に特化することにしました。今ではほかの農家さんとも繋がって、いろんな品種の訳ありりんごが届きます。紅茶は、私がずっと紅茶の専門店で働いていたので知識もあるし、これを焼菓子に合わせようと決めました。焼菓子に紅茶を使う時も、パウンドケーキはダージリン、スコーンはアールグレイ、フィナンシェはキームンなど、相性の良い茶葉を使い分けています」

農家さんにとっては訳ありフルーツは、ジュースにするくらいしか使い道がないが、焼菓子やジャムにすればおいしく食べられる。りんごだけでなく、SNSを通してさまざまな農家さんとの繋がりを広げている居石さん。夏の時期は山梨県の果樹園・HOPE園さんのはね出し桃を使った焼菓子など、季節の限定メニューが登場することもある。

子どもも大人もおいしい。優しいりんごスイーツ

自然光が気持ち良いカフェのカウンターに並ぶ、20種類ほどのお菓子たち。パティシエ時代も焼菓子担当が長かった居石さんは、焼菓子が得意。だからこのお店でも、タルトやスコーン、パウンドケーキ、クッキーなどの焼菓子がたのしめる。崩れにくく持ち歩き時間を考慮しなくていいので、お土産にももってこいだ。それにしても、りんごでこんなにいろんな種類の焼菓子ができるなんて驚き。どれを食べようか迷ってしまう。
 
「私のおすすめは『林檎のタルト』です。タルトの中にスパイスで煮たりんごを敷き詰めて、上にはスライスのりんごをトッピング。りんごづくしのタルトです。せっかくなのでお茶もりんごで合わせましょうか。今日は暑いので、アップルティーソーダなんてどうですか?」

タルトは厚めでサックサクの食感。バターが香るタルト生地に、甘酸っぱいりんごがすごく合う。ここにシュワッと紅茶が香るティーソーダが絶妙の爽快感。りんごと紅茶の相性ってすばらしい。

「紅茶はアールグレイから和紅茶、フレーバーティーなど14種を厳選しています。『アップルベリー』や『りんご加賀ほうじ茶』などアップル系のフレーバーティーがいろいろあるので、お菓子もお茶もりんごで合わせるようにおすすめすることもよくあります」
 
住宅地に囲まれた土地柄、子供からお年寄り、妊婦さんなどのお客さんが多いため、お菓子に洋酒やスパイスを使わないようにしたり、使っても少量に抑えたりしているそう。どんな人でも安心して食べられる、優しいりんごスイーツなのだ。
 
「どんな方も気軽にのぞいていただきたいです。たとえばママ会でも、どんどん使ってもらえたら。おしゃべりがママの活力になるのは私もよくわかっているので(笑)」。

生まれも育ちも豊島区。今後は外へも出ていきたい!

お店を作る場所を豊島区で探していたという居石さん。聞けば、生まれてからずっと豊島区で暮らしてきたという、生粋の区民だった。そんな彼女は、このまちのどんなところが好きなのだろうか。
 
「生まれは池袋の西口あたり、小学生の途中から雑司が谷に住んでいました。サンシャインシティと同い年で、怒られるかもしれませんが、小さいころはあそこで鬼ごっこをして遊んだ思い出もありますね。『1階だけね!』とか言って(笑)。池袋はターミナルで大都会だけど、一歩離れると下町になっているのが、このまちのおもしろいところだと思います。お店がある椎名町も、池袋から近いけれど中心部すぎない場所を探していて出会いました。下町で人通りも多くて、雰囲気が気に入っています」
 
最後に居石さんの今後の目標を聞いてみた。

「オープンして1年間必死だったので、これからは椎名町のご近所さんとの関係を深めていけたらと思っています。また逆に、外へも出ていきたいなと思っていて。『IKEBUKURO LIVING LOOP』などのマルシェには何度か出店させていただきましたが、もっと増やすのが目標です。農家さんとのコラボもできたら素敵ですよね。どんどん外へ出ていって、お店と外の世界を繋げていけたらいいなと思います」
 
椎名町のりんごスイーツが全国区になる日が近いかもしれない。みなさんも、りんご尽くしのティータイムをたのしんでみては。
 

文・写真:としまハウス編集部


<取材先情報>
「林檎と紅茶と」
Instagram:https://www.instagram.com/ringo.to_koucha.to/
営業時間:10:00~18:00 ※月曜定休日