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「練馬城址公園整備計画の見直しを求める陳情」経過報告(3) 陳情の内容説明資料

私たちが都議会に提出した「練馬城址公園整備計画の見直しを求める陳情」の審査に先立ち、陳情の内容を環境建設委員会委員の各会派の議員さん方に説明をさせていただきました。
その際に使用した資料のPDFを以下に添付いたしますので、皆様にも共有させて頂きます。どうぞご覧下さい。

【資料の取得方法】
「ダウンロード」ボタンをクリックまたはタップすると、ダウンロードが開始されます。

なお、この資料は、実際にお会いできなかった委員の議員さんにも、郵送にてお送りいたしました。

皆様にご覧頂く際には、このPDFだけでは少しおわかりにくいかもしれませんので、今回は、この陳情の説明資料の要旨とポイントをまとめ、以下にてご紹介させて頂きます。

陳情は、1.覚書の経緯の検証、2.広域防災拠点の責任ある対応、3.としまえんのレガシーの保全、の3点を願意として挙げましたので、説明資料もその3点を各々に分けています。


1.「都市計画練馬城址公園の整備に係る覚書」の検証
まず、練馬城址公園の整備に関する経緯について時系列で振り返りました。

1926年 「練馬城址豊島園」開園
運動と園芸を東京市民に広く奨励するために公開したのが始まり。

1957年12月
「建設省告示東京都市計画公園緑地」に基づき、「豊島園」は練馬城址公園として都市計画公園の指定を受ける。

2011年11月
東京都は「都市計画公園・緑地の整備方針」を改訂。
広域防災拠点の「都市計画公園」として、「としまえん」を指定し、2020年までに事業認可をめざす優先整備区域とした。

2016年9月
小池都知事「都立公園の多面的な活用の推進方策について」の諮問。
諮問を受け「都立公園における多面的な活用の推進方針」答申。

2017年3月
「練馬城址公園基本計画作成委託報告書」
「子どもから大人まで、自然とともに遊び、自然のなかでくつろぐ公園」という基本理念がかかげられ、都心では味わえない豊かな自然体験ができるプランが示された。
2018年3月
「練馬城址公園整備計画作成委託報告書」
基本計画を受け、具体的な整備計画が策定された。
<テーマ>「楽しい遊園地から楽しい公園に」

当初公園計画案

2020年6月
「都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」締結
としまえん跡地は「広域防災拠点」としての練馬城址公園を整備予定だが、石神井川北側のほとんどはスタジオ・ツアーの開発事業区域としてワーナーブラザースに30年間賃貸。

2020年7月 「都市計画公園・緑地の整備方針」改訂
としまえん跡地全域を2020年度から2029年度の10年間に優先的に整備を進める区域(優先整備区域)に指定

2020年8月31日 としまえん閉園

2021年5月 「都市計画練馬城址公園の整備計画」を決定
※「緑と水」「広域防災拠点」「にぎわい」の三つの機能を備えた公園の実現を目標

【ポイント】
としまえんが都市計画公園の指定を受けたのは昭和32年でしたが、具体的に動き始めたのは、2011年です。その際に、2020年までに事業認可をめざす優先整備区域とされました。
それを受け、2017年には公園基本計画2018年には公園整備計画の報告書が作成されました。この報告書はかなり綿密に、また丁寧に作成されています。
コンセプトも「楽しい遊園地から楽しい公園に」ということで、この報告書を見る限り、公園計画は特段問題なく進行していたように思われます。
しかし、2020年6月に締結された「都市計画練馬城址公園の整備にかかる覚書」により、様相は一変したわけです。

覚書締結により、全体の約4割にも及ぶ広大な敷地が、ハリーポッターのスタジオツアー施設に置き換わり、このエリアで公園が整備されるのは少なくとも30年以上先延ばしとなりました。

網掛け部分がハリーポッタースタジオツアー施設計画地

当初公園計画では、緑や広々とした空間での憩いの場、そして練馬区のランドマーク(カルーセル・エルドラド)にも言及されていましたが、建築面積が3haを超える巨大な建物に覆われることになり、公園予定地が大幅に縮小、その議論は立ち消えとなりました。
このように、当初の公園計画から大きく軌道修正せざるを得なくなった原因である「覚書」は、どのような経緯で、何を目的に締結されたのか。また、10年以内に事業着手すべき優先整備区域内で、それもその半分近くを占める広いエリアで、30年もの長期に渡り公園整備を棚上げする根拠は何なのか?

ワーナーが公園の民活エリアに名乗りを上げた、という説明もありましたが、そもそもスタジオツアー施設は公園内の施設ではなく、公園外の商業施設であり、公園の民間活用とは全く関係のない事業です。
もっと言えば、公園を縮小させるという障害となる事業にも関わらず、何故、東京都知事や練馬区長といった行政のトップがお墨付きを与える「覚書」にサインをしたのか?

そのことにより、諸々の歪みや矛盾が生じ、後述する防災の問題やコミュニティの問題に至るまで、東京都は住民の疑問に明確な答えが出せない状態となり、パブリックコメントでも回答になっていない回答しか出せていません。
諸々の疑問に答えるべく、東京都は丁寧に説明することで、説明責任を果たたすことが強く求められます。


2.「避難場所・広域防災拠点」について
~避難場所確保の見通しを立てることのないままに民間の大規模な施設建設を認めた『覚書』は、避難場所の確保を義務付けた東京都震災対策条例をないがしろにするものではないか~

旧”としまえん”の敷地は、スタジオツアー施設の建設中の現在においても、東京都震災対策条例の第 四十七条により『避難場所』として指定されています。
大規模なスタジオツアー施設の工事が進みつつある今、仮に、大地震が発生し、多発的な大規模火災が発生したとして、その混乱の時に想定6万人を超える多くの人々が問題なく避難できるのか? 甚だ疑問です。
以下の表 1.1「土地利用別の利用可能率」より、「建築物」及び「工事中」の範囲の「利用可能率は0%」と 示されています。

出典:避難場所指定に関する『実務者手引き』より

建築面積だけで約 3ha を超えるという巨大なスタジオツアー施設が、これまでの”としまえん”が果たしてきた避難場所としての機能を大きく制約するものであることは明らかです。
「”としまえん”が果たしてきた避難場所」と言う意味合いでは、実際の有事の際には、”水と 緑の遊園地としまえん”と謳われてきていた様に、緑が遮熱や延焼防止の〝焼け止まり〟の役割を果 たしており、樹木による鎮火が期待されていたことも考えられます。(現在、としまえん営業時と比べ、かなりの樹林が伐採されてしまいました)

また、旧”としまえん”の避難有効面積について、都が開示した資料には、旧”としまえん”のどのエリア がどの程度避難に利用できるかを検討するための基礎となった台帳に下の図が含まれています。

上の図より、旧”としまえん”敷地内の各エリアで、避難に使えるのか、また使えるとしたらどのくらい使えるのかを検証している様子が伺えます。
この図によりますと濃い青色のエリアが「安全領域」となっており、石神井川の北側、すなわち、 スタジオツアー施設の範囲が避難に使える空間が大きく広がっていることが読み取れます。

【ポイント】
スタジオツアー施設により、広大な敷地が「建築物」及び「工事中」となり、避難場所としての「利用可能率は0%」となってしまった。
さらに、土地の形状から、避難場所として一番大切な安全領域、また、防災面でも重要な平坦で広い土地をスタジオツアー施設が覆い尽くすことになってしまった。
これで果たして、『広域防災拠点としての機能』が練馬城址公園に担えるのでしょうか?

次に、「飲料水」や「トイレで使用する水」、「消火用水」について見てみましょう。
「”としまえん”が果たしてきた避難場所」と言う意味合いに戻ると、”水と緑のとしまえん”と 謳われてきていたことのもう一つの「水」についてです。
”としまえん” は、プールやトイレに 『井戸水』が豊富に使用されており、遊園地・プールの特性上、トイレが園内各所に配置されていました。
「水」の観点からも、としまえんが「避難場所としての役割」を果たしていたことがわかります。

そして、としまえんには大きなプールがあります。
スタジオツアー施設に占領されてしまった避難場所や防災機能を確保する為にプールが解体されてしまうことになることは、本末転倒と考えます。 広域防災拠点の観点からは、「湧水槽」として、防火用水やトイレ排水用としての機能を担えるのではないかと考えます。

【ポイント】
としまえんは井戸水を豊富に使い、プール、トイレ等、防災機能を十分に果たしていました。

最後に、「広域防災拠点」として位置づけられた「練馬城址公園」についてはどうでしょうか。
『広域』とは、「市区町村を超えた」ということであり、練馬城址公園においては、「練馬区を超えた範囲の防災拠点」と言った位置付けと考えられます。
「広域防災拠点」として機能するために必要な『避難道路』においては、今計画されているスタ ジオツアー施設を除く公園の部分については、生活用の狭い道路にしか接道していないことも危惧されま す。公園開園後に「広域防災拠点」の為に生活用道路を利用して物資を輸送する計画なのかどうか? 「段階的に整備する」のであれば、としまえん通りに接しているところから防災公園にすることが本筋 ではないのかと考えます。 
なぜ、「広域防災拠点」に必要な道路が、スタジオツアー施設に接道しているのかの検証が必要です。


3.地域社会におけるとしまえん
(1)地域社会のコミュニティ

としまえんは開園から閉園までの 94 年間、一貫して地域住民の交流の場であったため、 その閉園は、練馬区民にとって地域社会のコミュニティの喪失をも意味します。 近年では、成人式や、区内最大の催しである練馬まつりの会場等としても利用されてお り、閉園が地域社会に与えるダメージは甚大です。

(2)豊かな自然との触れ合い
「水と緑の遊園地」として、園内には水や自然と触れ合える沢山の施設が存在していました。 春には約 500 本の桜が咲き乱れ、初夏には 150 品種 1 万株ものあじさいが開花、 夏には湧水(地下水)を利用した都内最大級の屋外プールがオープンする等、「都内のオアシ ス」のような存在でした。

(3)歴史・文化の継承
94 年という長い歴史のため、 何世代にも渡っての「としまえん育ち」の人も珍しくありません。 また、園内には「機械遺産」に認定された日本最古のメリーゴーランド「カルーセル・エ ルドラド」や、英国の古城を模した建物「古城の塔」も存在し、歴史的価値の高い遺産を 有していました。

100年近い歴史を刻んできたとしまえんは、単に一遊園地というにとどまらず、人々の憩いとスポーツの場として、また、市民の交流と豊かな自然を保全する公的な空間として、地域住民に深く愛されてきました。
こうした、としまえんの思い出と魅力をつないでいくために、公園整備に当たっては地域の声を丁寧に、幅広く受け止める努力を尽くす必要があります。
特に、要望が強いプールの存続については、石神井川北側の開発計画の見直しも含め、公園整備計画の全体的な検証の中でその可能性を探るべきです。


以上、陳情の説明資料の要約とポイントをご紹介させていただきました。

私たちがこの資料に沿って説明をさせて頂いた際、議員の皆さんは耳を傾け、熱心に聞いて下さいました。私たちの気持ちに寄り添って下さったことは大変ありがたく、感謝の気持ちで一杯です。
実際に面談できなかった議員さんの中にも、私たちがお送りしたこの資料を委員会の席にご持参頂き、審査の際に目を通して下さっていたことも、とても嬉しく思います。

反面、面談の申し出を断るでもなくスルーされてしまったり、さらには、委員会に真剣に取り組んでいないのではないかという姿勢を感じ取らせる態度の議員さんもおり、とても悲しい気持ちにもなりました。

陳情の結果は不採択とはなりましたが、私たちは引き続き、としまえんの思い出と魅力をつないでいくための活動を模索していきたいと考えております。
今後とも皆様方のご協力を賜りたく、引き続き宜しくお願い申し上げます。

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