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明石ツーリング

 「うわっ!なんやこれ!」
バイク屋のオヤジがオイル交換しながらそんなセリフを吐いた。半年ぶりのオイル交換で、出てきたオイルはまるでコーヒー牛乳のような色をしていた。
 「これ、通勤だけやろ?そりゃあかんで。短い距離しか走らせてないと、エンジンが泣いてオイルが乳化するんや。」
オヤジが説教じみた口調で続ける。
「たまには遠出せんとな。エンジンだって『お、今日は飛ばしてくれんのか!』って喜ぶんちゃう?」
その一言が、なんか知らんけど、ずっとコタツでだらけていた俺の尻を蹴飛ばすことになった。
 そうか、たまには遠出せなあかんな。
で、行き先は明石。なんでかって?そりゃあ、たこ焼きのルーツとも言われる明石焼きが食べたかったのと、明石市天文科学館で宇宙をちょっと感じたかったから。なんか世間に笑われそうな理由やけど、それでも週末カブに跨って走り出した。

須磨浦公園付近

 冬のツーリングは、何より朝が寒い。寒すぎる。早朝に出る気力はないから、ちょっと遅めに出発することにした。大阪からヨンサン(国道43号線)を走り、2号線へ。新しくできた須磨シーワールドを横目で見ながら、「あ、イワシの群れにでも入りたいな」なんて考えながら通過。こんなアホなこと考えてる時点で、もう日常のしがらみから解放されてる感じがした。

 そのまま進むと、海が見えるポイントに差し掛かる。短いけれど、ほんまに気持ちええ区間やねん。
 そして、ついに見えてきた明石海峡大橋。「おお、デカい。ほんまにデカい」と思わず声が漏れる。何度見ても感動するんや。橋のたもとに公園もあるけど、そこはスルーして、目的地の天文科学館へ。
 明石市天文科学館は、高い時計台みたいな建物。近くで見ると圧倒される感じや。展示室は大きくないけれど、プラネタリウムや展望室もあって、意外に侮れん。特にこの日は、天体観測室で「昼間でも金星が見えるぞ」ってイベントをやっていた。望遠鏡を覗いて、「おお、これが金星か……」と感動。夜じゃなくても宇宙が見えるっていう、ちょっとした発見があった。
 ちなみに、この科学館は、子午線の真上に建っているから、正午には太陽が真南にくる。日時計広場で、「おお、これが本物の南か!」と確認して、なんとなく満足した感じ。

12時過ぎの日時計

プラネタリウムまで時間があったので、天文科学館を抜けて裏にある播磨三名水の一つ、かつて「長寿の水」とも言われる亀の水を汲みに行った。再び天文科学館に戻り、プラネタリウムを堪能。

 さて、お腹も空いてきた。明石焼きでも食べに行こう。明石駅近くの駐輪場に止め商店街を散策しながら明石焼きの店に入る。

魚の棚商店街

 たこ焼きのルーツと言われるだけあって姿形は似ているけど、ふわふわの生地にダシを浸して食べるスタイルが最高。「あぁ、これや、これが明石焼きや……」と口の中で味わいながら、しみじみと思う。

明石焼き(玉子焼き)

 帰り道、「そや、ここまで来たら海をゆっくり見たい。どこいこう?」行きにスルーした橋のたもとにある舞子公園を思いだした。日が沈むのが早いのでちょっと急いでいく。

舞子公園

 到着すると、日が傾き夕暮れまでいかないものの少し淋しい感じの風景。
海ぞいの階段状の堤防でひと休み。コーヒーセットを出し、亀の水で淹れて飲む。再び橋を眺めながら、「やっぱり、たまには遠出もええもんやな」と感じる。

コーヒーを淹れる

 オヤジの言う通り、たまにはカブにも息抜きさせてやらんとな。
 次は、どこへ行こうか。


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