新潟遠征#3 ~分水&長岡~
今年も遠征三日目は僕だよ。(文責:2G)
※諸事情による2日目より先に3日目を投稿しております。
9:30 新潟 発
前日味わった日本酒も抜け、清々しい朝を迎えた遠征3日目。
目的地は二箇所。「大河津分水」と「長岡」です!
三日目のスケジュールは非常にタイト。
仙台で借りたレンタカーは翌朝9時に返却しなければならないため、その日のうちに仙台へと帰る必要があります。一行は急ぎ足で最初の目的地、大河津分水へと車を走らせるのでした。
さて、大河津分水に向かう前に。この場所のことを今一度知っておきましょうか。
☆「越後平野の守護神」大河津分水
大河津分水は、越後平野を貫流する信濃川の水量調整を行う放水路の一つです。1909年に着工、当時の土木技術を結集して工事が進められ、1922年に通水を開始しました。
信濃川は日本最長かつ最大級の流量を誇る一大河川。その大きさゆえ、水害の規模も大きく、越後平野に点在する集落はこの信濃川の大氾濫によって幾度となく被害を受けていました。被害の内容もさまざま。住居が流され、農地は荒れ果て、衛生状態の悪化による感染症も流行する等々…
何より、たびたび起こる氾濫は水田を常時湿った湿田状態にしていたため、そこで育つ米は品質が悪いものとして認知されていました。鳥さえついばむことのない「鳥またぎ米」という異名もあったほど。
そんな信濃川の治水事業の一つとして、江戸時代中期ごろから寺泊方面に信濃川の放水路を建設する案が浮上。そこから紆余曲折あり、実に200年以上の歳月をかけて、この大河津分水の完成に至ったのです。
大河津分水の通水により、下流域の洪水被害は激減。排水設備の進歩もあって乾田化が進み、良質な米の栽培が可能になりました。
加えて、水害が足かせとなっていた都市機能の整備も進みだします。上越新幹線や国道8号、北陸自動車道が越後平野の中央を貫くように建設され、平野部の都市化が進行。燕、三条、巻、白根などの都市の発展に大きく寄与したほか、新潟市中心部においても流量の減った信濃川の埋立による再開発が進み、日本海側最大の都市としての基盤を生み出しました。
大河津分水は新潟の農業と都市の発展に大きく貢献した重要な水路であり、水害を防ぐ役割を今も全うし続けています。
「越後平野の守護神」と力強く名付けてみましたが、いかがでしょうか。
10:45 信濃川大河津資料館!
1時間強で到着。
途中、北陸道の「三条燕IC」を下りました。近くには「燕三条駅」が。
…「三条」と「燕」の順番には何か意図があるのか気になる気になる…
この信濃川大河津資料館は入館無料!
かつ、無料とは思えない充実の解説クオリティ↓↓
建物の1階と2階が資料館となっており、大河津分水計画の始まりから現在の改修工事に至るまでの過程を余すことなく展示してありました。
☆流量管理の仕組み
現在、信濃川本流と大河津分水の間の流量の調整は、本流側の「洗堰」と分水側の「可動堰」によって行われています。
可動堰、洗堰ともに間近で見ることができます。
(今回は時間の制約上見ることは叶わず…)
無料のガイドを付けることも可能なようです。訪れる際は、一度資料館のHPをチェックしてみると良いでしょう。↓
12:45 昼飯!
一行は分水を離れ、長岡に到着。
お昼時なので長岡名物を頂きましょう。
長岡名物といえば…
こちらっ!「フレンド」です!
「フレンド」とは、長岡発祥のローカルファストフード店です。
この店で有名なのは上に写真で出されている、「イタリアン」という料理。
イタリアンと聞くとパスタやピザを思い浮かべる方も多いでしょうが。
「イタリアン」という料理名なのです。
うん、見た目は焼きそば。
一体どんな味がするのか…
ふむふむ。ミートソースの乗った焼きそばに近い!
交わることが想像つかなかった二つが一つになったその味は革命的。ウマい。
そのうえ、なかなか安い。イタリアン・餃子ともに390円(税込)。
いやぁ、懐にも優しいなんて。
さて、腹を満たしたところで長岡の街に向かいましょうか。
13:30 長岡!
長岡の中心市街に到着。
目につくのは、歩道の上に架けられたアーケード。
これがあると街中にいるなぁと感じるのは、普通の歩行空間を一気に軒下の滞留・活動空間に仕立て上げるからなのでしょうかね。(個人の見解です)
大手通りをまっすぐ進み、一同は長岡駅へ。
上越新幹線、信越本線などが乗り入れる中越地域最大のターミナル駅です。
実は、ここに長岡のまちの成り立ちの一端が隠されています。
地上階から大手口(西口)のロータリーに向かってみると…
ほ、本丸跡⁉
…そうなんです。長岡駅のあるこの場所は、もともと一帯を治めていた長岡城があった場所なのです。戊辰戦争時に焼失した長岡城の跡地に鉄道駅が整備され、現在の市街地が形成されたというわけです。
それゆえ、駅からまっすぐ伸びる大通りの名称は、城の正門といえる「大手門」に由来する「大手通り」なのですね。
駅を離れ、大手通りを引き返すと何やら気になる建物が。
奥に向かって続く半屋外空間と、壁面にあしらわれた木目のデザインが目を引くファサードになっていますね。
こちらの施設は「アオーレ長岡」。
長岡市役所、市議会に加え、市民に開かれた交流スペース、アリーナを併設した複合施設です。2014年完成。
まちの中心部に市民交流の場と行政サービスを共存させ、強い拠点性を持った市民活動の核をつくることで、人々の流れを中心市街地に生み出そうという狙いがありました。
まさにその狙いは的中。
大手通りに開かれた「ナカドマ」と呼ばれる、建物に囲まれた全天候型オープンスペースは、民間・行政を問わず、年間500件を超えるイベントが開催され、年間の利用者は100万人を超えています。
近年では、プロバスケットボールのBリーグに所属する「新潟アルビレックスBB」が2016-2017シーズンより、アオーレ長岡をホームアリーナとしており、「バスケのまち」としての活動も進められています。
実はこの場所は長岡城の二の丸が建っていた場所。市民は「アオーレ長岡」という新たな「城」を拠点に、未来のまちづくりを進めていくのでしょう。人と人とのつながりが希薄になりがちな現代社会において、人々の交流が生み出す、新たな刺激・情熱は、決して侮ってはいけないと思いました。
☆補足:長岡のまちの成立
長岡のまちは信濃川を利用した舟運によって開かれたといわれています。
江戸時代には、信濃川やその支流である河川を利用した舟運が主な輸送手段として用いられていました。河渡(こうど)と呼ばれる船着場で荷物の積み替えなどを行う際に市が開かれ、やがてそこに商工業者が集うまちが開かれていきました。
(このように、寺社、城郭、宿場などの明確な拠点を持たずに、農村部の小さな市場から形成される都市形態は「在郷町」と呼ばれています。まあ、ある意味「かわみなと」なので港町という捉え方もできるかと。)
長岡では、信濃川に合流する柿川沿いに在郷町が形成されました。その後、江戸時代の初期に「長岡船道(ふなどう)」という信濃川の水運権を掌握する株仲間が結成され、柿川沿いで年貢や商品などの輸送・保管、船の積み替えなどを行い、その際に通船料を徴収することで莫大な利益を得るようになると、船頭や商工業者が集う舟運の拠点として、さらに発展が進みました。
これに加え、まちの発展と時期に建てられた長岡城を中心とした街区割りにより、在郷町と城下町という2つの都市形態が重なったまちになっているのだと考えられます。
城下町としての名残は、「大手通り」などの名前や、城下町由来の道割り(クランク、丁字路)といった形で存在しています。
在郷町としての名残は見つけるのが難しいですが、市内中心部を流れる柿川に多くの河渡があったことが知られています。現在は、柿川沿いに遊歩道が整備され市民の憩いの場として親しまれているほか、冬季には除雪した雪を捨てる場所としても機能しています。
15:20 長岡 発
さてさて。三日目の行程には「仙台に帰る」という重大なミッションが含まれているのでした。街歩きもそこそこに、一同は長岡を出発しました。
仙台に向けて夜通し車を走らせ続ける人、新潟の夜をおかわりする人、他の手段(飛行機、自転車)で仙台を目指す人等々…移動に個性が出るのも、としけんの遠征の魅力ですね!((くれぐれも無理のないように))
以上!としけん夏の新潟遠征でした!
【参考文献】
〇大河津分水
・信濃川分水路資料館HP
https://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/ohkouzu/ohkouzubunsui.html
・国土交通省 北陸地方整備局 信濃川河川事務所HP
https://www.hrr.mlit.go.jp/shinano/office/bunsuiro/index.html
〇長岡
・にいがた観光ナビ イタリアン(フレンド)
https://niigata-kankou.or.jp/spot/12380
・な!ナガオカ 時代を超えて愛される昭和の味とノスタルジー。長岡「フレンド」60年の歴史を探る(2019年1月28日)
https://na-nagaoka.jp/archives/11115
・長岡開府400年PR冊子「越後長岡ROOTS400」ブラウザ版
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/dpage/nagaoka400/pdf/kaifu400-02.pdf#page=6
・文部科学省 市民がつくるアオーレ長岡 ~市民協働のまちづくり~
https://www.mext.go.jp/sports/content/20200330-spt-sposeisy-000005909_2.pdf
・まちみなと情報館 4.日本海有数の賑わい交流拠点への発展
https://machiminato.jp/spot/4-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E6%9C%89%E6%95%B0%E3%81%AE%E8%B3%91%E3%82%8F%E3%81%84%E4%BA%A4%E6%B5%81%E6%8B%A0%E7%82%B9%E3%81%B8%E3%81%AE%E7%99%BA%E5%B1%95/
・ガイドブック柿川 -自然と歴史-
https://www.museum.city.nagaoka.niigata.jp/wp-content/themes/museum.city.nagaoka/pdf/guidebook_kakigawa.pdf