ドイツ5部リーグチームのゲームモデルに迫る!
今回は、題名の通り、ドイツ5部リーグで優勝した自分がコーチとして活動するチームのゲームモデルについて紹介したいと思います!(フットボリスタの特集号を読んで居ても立っても居られなくなり…)
・攻撃
・ネガティブトランジション
・守備
・ポジティブトランジション
の4局面について、ドイツに来てから自分の目で見て、コーチングを聞き、実際の試合での状況を踏まえて、分析したものを紹介していきたいと思います。少なくとも自分が見た数試合では、同じリーグの他のチームはウチのチーム以上にオーガナイズがなく、1試合を通して問題を野放しにしたまま、一方的なサンドバッグとなっていた所もありましたので、おそらくは7部リーグの中でもある程度しっかりとサッカーを自分達なりの枠組みの中でプレーしているチームが、ウチのチームなのかなと感じています。(全チーム見ていないのと、自分の目も大したものでは無いので、ご理解ください…)
攻守においての基本システム
攻撃時、4−3−3
守備時はWGが1列降りての4−1−4−1
が基本的なシステムになっています。
対戦相手は4−4−2や3−4−3、3−2−4−1等を使って来るチームもありましたが、
一貫して自チームは攻守でこのシステムを用いていました。
流れの中でのポジションチェンジはほぼ無く、監督の話ではバルセロナのようなボールを支配するサッカーを目指しているとの事でした。
結果、リーグ戦では24試合で163得点11失点という成績を記録する攻撃的なチームとなっています。
攻撃時 4−3−3
守備時 4−1−4−1
攻撃
主原則
WGを生かしたサイド攻撃
準原則
①斜めのボールでの前進
②落としのボールを挟んでのスペース攻略
③アンカー起点の展開
主な狙いとしては、WGを使ったピッチを広く利用する攻撃で、フィニッシュには逆サイドのWGが飛び込んでくる形を狙っています。練習でも11人でDFをつけずにこの形のトレーニングを結構行っていました。
それを実践するための準原則として、①斜めのボールでの前進を用います。角度のついたパスによって相手守備の目線を変え、前進するスペースを狙う時間を生み出す事と、プレッシングに嵌らない事を意識しています。ちなみにビルドアップ時に相手がCB2枚に対して2トップでプレスに来る際はアンカーが下りて数的優位をつくっています。
②落としのボールを挟んでのスペース攻略、①では斜めのボールで前進する原則について話しましたが、それと同様に監督が協調して伝えるワードは、「戻す」というワードです。
この2つを組み合わせて、落としのボールに対して前向きでボールを受けた中盤の選手がWGの前方のスペースに展開する形は、チームとして再現性を持って実行できるよう何度もトレーニングをしています。コーチングで一番聞くワードも、「斜め」「前進」「落とし」の3つです。③アンカー起点の展開、アンカーを務める選手に監督が絶大な信頼を置いているキャプテンを務める選手で、CBやSBからのボールを引き出し、前線へとつなぐプレー、IHやFWからの落としのボールをWGに展開するプレーを、アンカーを起点として狙っています。
実際の試合での再現性はというと、そんなに高くは無いです。個人能力もそんなに高くは無いですし、ポジショニングや駆け引きに関しても、特別秀でている訳ではないので、個人戦術の部分での向上がこのレベルで所謂ポジショナルプレーを実践しようとする上でのネックになる事を再認識しています。広く、深くというキーワードはコーチングにも出てきますが、居るだけになっているのが現状のレベルかなと言った所です。
そんな中でも、相手チームに比べると個の能力は高いので、突破が出来たり、相手のミスを突いてのゴールというものが生まれます。時折、ゲームモデルに沿ったプレーも勿論起きてはいます。自分だったらどんなトレーニングで改善するかを考えながら、日々のトレーニングに携わらせてもらっています。語学力を高めて、しっかりとコーチング出来る様にならなければと感じる毎日です。
ネガティブトランジション
主原則
特になし
準原則
特になし
以上です。笑
ここは完全に個人の裁量の様で、チームとして約束事も特に無く、戻れー!寄せろー!くらいの声が聞こえるだけで、組織としてのオーガナイズは見受けられません。
WGの選手は切り替えが遅いし、IHもアンカーも特にこのエリアに引くという約束事もなく、CBも結構簡単に剥がされてしまいます。
強いていうのであれば、押し込んでいる時間帯が長いのと、相手のポジティブトランジションもオーガナイズがある訳ではないので、カウンター狙いの裏へのボールを出されなければ、ボールエリアで個人の判断で圧縮が起きて回収できる。と言った所です…。
トレーニングでも「切り替え!」のコーチングは耳にしますが、どのような切り替えで誰にどのような役割があるのかは見えてきませんでしたし、そこに対するコーチングもありませんでした。
守備
主原則
特になし(強いて挙げるなら前からのプレッシングで奪う)
準原則
特になし(強いて挙げるなら空いてSBに対してSH(WG)が縦方向のプレスを掛ける)
以上です。笑笑
4−1−4−1のゾーンですが、規則性も特に無く、各々の裁量でプレーしている感が半端じゃないです。
最初の5分は相手DFラインにも前からプレスを掛けようという試合前の話があったり、チームとしても、相手のSBにボールが入ったら、SHが縦からプレスを掛けていく形も時折見られますが、連動性等の観点から行くと、オーガナイズは無く、間延び気味であったり、長いボールで1発で裏を取られたりと、結構危うい守備をしていて、前節は相手の3−2−4−1での攻撃に、アンカー脇やSBのエリアで2対1の状況を度々作られて、危険なシーンがありました。
個人能力の差と、相手のミスに救われているシーンもあり、攻撃以上に守備は改善と整備の余地があると感じています。特に自分は守備から整備してチーム作りをしたいタイプなので、試合を見て悶々としています。とはいえ、シーズン序盤に守備のトレーニングはやっていた可能性もあるので、チームに落とし込んで入るけど実践できていないのか、そもそも守備のメカニズムを仕込んでいないのか、プレシーズンから帯同出来る新シーズンはしっかりと確認したいと思います。
ポジティブトランジション
主原則
特になし
準原則
特になし
御察しの通り、ここにも特にオーガナイズはありません。なので、試合を見ていても非常にもったいないと思うシーンが多々あります。相手にもオーガナイズがないことが多いので、かなり狙えるスペースは存在しているのですが、コーチングもなければ、ハーフタイムでの修正もなく、ピッチで選手が穴に気付いている訳でもないので、マイボールになってから、さぁどうしようか?のスタートなので、カウンターというシーン自体も多くありません。ボール支配率の影響もあり、カウンターするより、される側という印象です。ここに意図のある設計を持ち込めば、個の能力で優っているので、より多くの得点を目指せるのではないかと思います。
以上の様に、攻撃の部分では再現性を狙ったトレーニングもあり、ある程度原則等は見えるのですが、守備はトレーニングでもフォーカスされている事は自分が来てからは無く、攻撃のビルドアップの部分がほとんどを占めていました。シーズン終盤だったからなのか、元々年間を通してその様にチーム作りがなされていたのか、定かではないので、来シーズンを楽しみにしています。監督は30台前半でAライセンスを保持している方なので、自分レベルが感じている様なことや問題点に気付いていないはずもないでしょうし…(ライセンスがあるから良い悪いという話では無く。)
このリーグの選手にどの程度のレベルを求められるのか、どこまで込み入ってチームビルディングをするのか、選手のモチベーションや目標等はど子にあるのか等々で変わりますし、まだわからない部分も多々あるので、肌で感じて、学びたいと思います。
まとめ
攻撃では狙いを持ち、それを実践するためのトレーニングも行われている
守備や切り替えの局面では各々の判断が主となっているプレーが多い
トレーニングの文脈に相手というものはあまり出てこない
4局面全てにおいてのプランという明確なものは現時点では見えない
といった感じです!
最後に
ちなみに1部リーグでは同じ年代でも、かなりの戦術的応酬が繰り広げられていました。立ち上がりのプランから、相手のシステムや手段に応じた変化や、それに対する対応が起き…という具合に、変化が起きていて、選手交代でも明確な意図があったりと、非常に勉強になる試合が繰り広げられていました。7部リーグでは、自分の見た限りだと、前半と後半でシステムを変えるというくらいでした。その変更も、前半より結果的には流れを悪くしてしまうものだったのですが。
個人的に感じるのは、ゲームモデルという型があることで、そこからの変化や対応が生まれていき、選手の成長にとってもプラスになるのではないかなと感じています。
ということで、次回は自分なりのゲームモデルを作ってみたいと思います!
サポートして頂いた費用は、現地での練習・試合視察の費用に活用させていただきます!よろしくお願いします!