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中小企業こそDXを推進すべき

 前の記事で、デジタルトランス・フォーメーション(DX)は、経営戦略であると記載しました。
 経営トップが主導して、従来からの固定概念を捨て、新しい姿をつくり、競争優位性を確保することが、DXです。このように定義すると、多層の組織を持ち、ボトムアップでものごとを決めていく大企業のDX推進は、容易ではないと思います。組織が小さく、トップの意思を反映させやすい中小企業こそ、DXに取り組み競争優位性の確保を目指すべきです。

 以下に、DX取り組み状況と中小企業がDXを推進すべき理由を記載します。

日本のDX推進状況

 経済産業省発表の「DXレポート2」では、推進状況は順調ではないとの認識です。

「……我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない。(略)『DX=レガシーシステム刷新』、あるいは、現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である、等の本質ではない解釈が是となっていたとも言える。」
経済産業省「DXレポート2」3頁

 一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題2022」のDXに関する調査(31,32頁)を図にすると以下のような状況です。

図1 一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題2022」のDXに関する調査まとめ

 DXに取り組む企業は、年々増加しているが、中小企業で取り組みを行っている企業は少ないということです。一方、真の成果が出ているのは2割にも満たない。5割は、ある程度の成果しか出ていない。
 これからDXへの取り組みを開始しても、十分追いつけるということを示していると考えられます。

 また、不十分な点も、指摘されています。

……経営層による危機感・必要性の欠如に加えて、適切なガバナンス、DX人材の育成・確保に関する成熟度に課題がある……

……ビジネスモデルの抜本的な改革に取り組む必要性を感じている企業は少ない。

……DXの推進、あるいは、デジタル化への取組は既存ビジネスの範疇で行っているということであり、経営の変革という本質を捉え切れていない……
経済産業省「DXレポート2」8頁

 不十分な理由は、以下です。
①目的を理解していない。
②必要性を感じていない。
③経営者が率先して取り組んでいない。
④推進組織や仕組みを作っていない。

 これらは、取組内容や進め方の指摘ではなく、取り組み以前の話です。つまり、推進していると言っても、実施していないのと同じと思われます。

大企業でDXを進めにくい理由

 現在、8割の大企業が、DXに取り組んでいるが、成果は十分ではないということです。

 私が想像するDXを順調に進められない企業のイメージ図を作ってみました。関係者のDXに対する理解や想いが、バラバラの場合は成功しないと考えます。

図2 DXが順調に進まないイメージ

 大企業でDXが順調に進まない企業は、以下のような状況にあると考えています。
①ボトムアップで意思決定することが多い大企業の場合、DXを経営者のトップダウンで進めることは難しい。
②事業部・部・課など組織が多層化し、生い立ちも違うなかで、全社的に企業文化を変革することは難しい。
③経営企画部長や情報システム部長などが推進役を担うことが多く、経営者でない者が、業務、組織、プロセスなどを変革(「なくす」「大幅に変更する」など)することは難しい。

 成功させるためには、推進組織に対して、経営者の絶対的サポートや企業文化を変革する権限が必要であると考えるが、実際は中途半端な状況だろう。よって、関係部署からの抵抗が少ない従来業務の延長線上にある取り組み(IT化)をDXと称して取り組んでいるという状況になってしまっていると考えています。
 だから、ある程度の成果が出ているとなり、真の成果が期待できないのだと思います。

中小企業がDXに積極的に取り組むべき理由

 大企業が足踏みしている間に、中小企業は、真のDXに取り組み競争優位の確立を図るべきです。

 中小企業が、DXを推進し、成功に導くことができるイメージ図を作成してみました。

図3 中小企業のDX推進イメージ

 中小企業がDXを進めやすいと考える理由は以下の3点と考えています。

①経営者の意思を会社方針や経営計画に反映させやすい。
②組織が比較的小さく、経営者と従業員の距離が近いことから、経営者の考えを浸透させやすい。
③②により、従業員全員のDXに対する理解や想いを合わせやすい。

 また、デジタル活用のためには、情報システムや情報機器の導入を行わなければなりません。従来であれば、高額な導入費用が必要であったが、機器の低価格化やクラウド型システムによる利用料払いなど、安価で導入できるようになっていることも、中小企業のDX推進の追い風になっています。
 但し、中小企業が競争優位を確立できる可能性がある期間は限られていると考えられます。現状、大企業は、DX推進の危機感が、それ程高くないと考えられますが、本気で取り組みを進めた場合、人員も資金力も大幅に上回る大企業が一気に進める可能性が高い。そうなった後に中小企業が取り組んでも遅いと思います。

まとめ

●日本企業のDX推進は、順調に進んでいない。今から開始しても追い越せる。
●DXの取り組みが不十分な理由は、DXに対する理解不足によるもの。
●大企業は、経営者が主導して進めることは難しい。
●経営者の意思を経営戦略に反映させやすい中小企業の方が、DXに取り組みやすい。
●機器の低価格化、クラウドシステム活用により費用の低減が図れ、中小企業でもDXを進めやすくなっている。

 こう記載しても、中小企業の経営者からすれば、「そんな簡単な話ではない」「言うのは簡単だけど、現実は違う」というような声が聞こえてきそうです。
 そんな時に思うのは、デジタル活用により市場を席巻しているAmazonは、1998年の創業から25年程しか経過していない。インターネットを使った物販の将来性を創業者のジェフ・ベゾスが確信して、ゼロから創業し、今の姿を築いたことを考えると、中小企業が市場を席巻することは不可能ではないと考えています。

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