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DX推進における経営者の役割

 以前の記事で、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、中小企業こそ取り組むべきであると書いた。理由は、組織が小さく、トップの意思を反映させやすい中小企業こそ、進めやすいと考えるからです。だからと言って、中小企業であれば成果が得られると断言できる訳ではなく、経営トップがDX推進に強い想いを持ち、リーダーシップを持って取り組めば、達成できるということです。
 言うのは簡単であるが、実際に中小企業が、D Xに取り組む場合、どのように進めて行くかが課題になります。以下に経営者のDXへの向き合い方について、考えていることを記載します。

DXへの取り組み

 D Xに取り組む場合、デジタル活用が念頭にあるため特別な取り組みを行わなければならないと考える可能性があります。しかしながら、DXの本質は、競争優位確立のための商品・サービス・ビジネスモデルの変革であり、デジタル活用はあくまでも手段です。デジタルという言葉が誤解させていると思っています。
 よって、DXはデジタル知識を有するものが実施する特別な取り組みではなく、通常、実施している新規顧客開拓や原価低減などの業務改革プロジェクトなどと同じでものであると考えています。
 しかしながら、デジタルは手段だとしても避けて通れない。何故ならDXが推奨される背景は、デジタル技術を活用したゲームチェンジャーが登場してきたため。従来のやり方で対抗しても勝ち目がない。デジタルには、デジタルで対抗しなければ、いけないということだと思っています。
 例えば、Amazonに、FAXと電話で注文を受け、銀行振込みで決済する通販会社が、どう考えても太刀打ちできないということです。
 但し、デジタルに対する知識がないからD Xには取り組めないということはなく、目標とデジタルによって何を実現させるのか、どのように実現させるかのイメージが持てれば、デジタル技術の専門家であるITべンダーなどを活用すれば良い話です。

 図示すると以下のような流れになると考えられます。当内容は、まさに経営課題や部門の重点課題に対応するための活動と同じものです。

図1 DXの進め方

経営者の役割

 実際の活動では、DX推進の目標設定や取組内容決定の計画段階で、躓きが発生し、上記した流れで進めようとしても順調に進まないことが多いと思われます。理由は、DXが従来のデジタル活用であるIT化や業務改革のような現状業務の延長性上での改善ではなく、業務や組織そのものを変革しようとするものであるため、社内での抵抗や実現性の疑義が生じることです。よって、活動が頓挫したり、目指している姿とは異なるDXに取り組むということになる可能性があります。
 D Xによる取り組みにより成果を得るためには、経営者の会社の変革に対する強い決意と想い、推進のためのリーダーシップが必要になります。

 順調に進むか進まないかのイメージを図に示します。極端な図になっていますが、経営者が担当者任せ・当事者意識が低い場合は順調に進まず、経営者自らが先頭に立ち、DX推進担当者をサポートして進めていく場合は順調に進めることができるということです。

図2 DX推進が順調に進まない/進むイメージ図

経営者の実施すべきこと

 具体的に経営者がDX推進において、実践すべき事柄が、「ガバナンス・コード2.0」(経済産業省・2022年9月13日改訂)にて示されています。
「ガバナンス・コード2.0」から判断すると経営者がDX推進において実施しなければならないことは、以下の点です。

(1)DX推進によって目指す姿の決定
 ①経営ビジョンの策定
 ②ビジネスモデルの設計
 ③関係者への説明
(2)目指す姿実現のための体制構築・方策検討の実施
 ①デジタル活用戦略の策定
 ②DX推進体制の構築
 ③デジタル技術活用環境整備方針の策定
(3)DX推進状況の把握
 ①成果指標の定義
 ②成果指標に基づく進捗状況の把握
(4)DXを成功に導くためのアクション実施
 ①経営者のリーダーシップ
 ②経営者によるDX推進者への支援
 ③状況に応じた推進戦略・方針の変更

経済産業省「ガバナンス・コード2.0」より作成

 上記の内容は、ある意味、経営者が実施すべき当たり前のことであると考えられます。経営ビジョン・ビジネスモデル・デジタル技術活用戦略などの言葉が出てくると何か特別なことをやらないといけないと思ってしまうかもしれませんが、結局、自社を取り巻く環境の変化に対応するために 自社の対応方法を考えるということです。
 図1のDXの進め方に経営者の役割を重ねると下図のようになります。

図3 DXの進め方と経営者の役割

 大企業のようにDX推進を専従担当者で実施できれば好ましいと考えますが、中小企業の場合は専従体制を構築することは難しいと考えます。よって、経営者の役割は重要だと思います。
 中小企業の場合は、経営者自らが考えて行動する必要があり、以下が必要と考えます。
①デジタル技術を活用することで目指す姿を明確にする。
②目指す姿が達成できれば、会社にとって、従業員にとって、どんな「いいこと」があるのか考える。
③「目指す姿」と「いいこと」を経営者自らが従業員に説明し、理解してもらう
④従業員全員がDX推進に取り組むという雰囲気を作りあげる。
経営者が先頭に立ち、DX担当者をサポートしながら、DXを推進していく

まとめ

●DXの取り組みは、経営課題や部門の重点課題に対する活動と同じ。
●DXは、業務や組織そのものを変革しようとするもの。社内での抵抗が発生する恐れがある。
●経営者の会社変革に対する強い決意と想い、推進のためのリーダーシップが必要。
●経営者自らが先頭に立ち、DX担当者をサポートして進めれば、順調に進められる。
●特に中小企業は、DX推進における経営者の役割は重要。

 経営者が責任を持って取り組めと言われても、デジタルの知識もないし、難しいと思われるかもしれません。これまでの記事でも記載していますが、デジタルについての詳細な知識は必要ないと思います。
 次の記事では、デジタル知識と目指す姿をどのように考えるのかについて記載したいと思います。

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