猫と魚とセレッソ大阪
【阿倍野との出会い】
僕と妻はMad Cat Hostel Osaka & Bar(以降Mad Cat)を2019年夏に大阪市阿倍野区にオープンしました。大阪市内でホステル(ゲストハウス)を経営したいという思いがあって、妻が数多くの物件を調べてくれて阿倍野区の今の場所に居を構えたのですが、そこまでは紆余曲折がありました。
ホステルというものが一般的に認知されていないこともあって、民泊と同じ扱いを受け、「民泊=外国人が騒ぐところ」という悪いイメージが当時は色濃くありました。そのため、不動産屋で門前払いになることも多く、ホステルにしてもよいというオーナーが運営する物件はほとんどありませんでした。
そのため、数あるなかから選んだわけではなく、ほとんどここしかないという状況で今の阿倍野区松虫を選んだというのが本音です。僕自身はお隣の住吉区出身なので通学などでよく通る場所でしたし、セレッソ大阪の長居スタジアム(現ヤンマースタジアム)からも近いということで身近に感じてはいましたが、僕らと阿倍野の出会いはそんな単なる偶然によるものでした。
【大阪の地域性】
読者に方々で大阪に詳しくない方も多いと思われますので、一般的な大阪の地域イメージをまず説明したいと思います。あくまで一般論です。個人的な主観ではありません。
大阪は簡単にいうと北部と南部に別れます。北部はいわゆるキタと呼ばれる梅田を中心としたハイソなエリア。茨木や高槻や豊中といった北摂エリアはお金持ちが多く、単身赴任のサラリーマンや、会社勤めする比較的豊かなファミリーが多いイメージです。今やパナソニックや住友系ですら本社は東京の時代なので、転勤族が多く、北摂エリアの小学校では一年で半分が転校するなんてこともあるようです。
一方ミナミと呼ばれる難波心斎橋エリアを中心とする大阪南部エリアは一般的にガラが悪いと言われます。あの有名な西成はこちら側だし、もっと南へいけばだんじりで有名な岸和田など、いわゆる粗暴な大阪のイメージかもしれません。あまり独身サラリーマンや単身赴任の方が一人暮らしで住んでいるイメージはなく、どちらかというと昔からずっと住んでいる爺ちゃん婆ちゃんが多いでしょう。
大阪の人はあんまり意識していないけれど、大阪ってやっぱり他の地域の人たちからは怖いって思われがちで、自分が小学生(ここでいう南部エリア)のときは、実際に東京からの転校生が軽くいじめられていたし(いじめる側は大阪的なツッコミのつもりだろうけど)、そういう雰囲気もあって、会社勤めするファミリーは大抵北部に住んじゃいます。それは仕方ないことだと思います。
でも、でも、、、、本当の大阪らしさや面白さってこっち(南部)の地域の方が絶対にあると自信を持って僕は言いたい。
【ローカルだからこそのあったかさ】
かくいう自分も大阪に戻ってくることにビビってました。僕は大学に入学して以降大阪を離れていて、大阪での夜遊びの仕方も知らないし、仕事を大阪でしたこともない。それに大阪で商売をするってなると、ガラの悪いナニワの商売人と渡り合っていかなくてはならない。そんなこと出来るのだろうか。。。と思っていました。
ホステルをすることになった場所のお隣の店舗は何十年も続く焼肉屋。こわい店主がいてややこしいことにならないだろうか。なんてビビっていました。笑
しかしながら、怖いどころか、変なことに巻き込まれたら守ってくれそうなくらい色々と味方になってくれたり、改装中から「がんばりや!」などと声を掛けてもらったり、他にもボランティアで改装を手伝ってくれる人がいたりと地域のあったかさにむちゃくちゃ助けられて、、、、めちゃくちゃ感謝しています。ベタな発言ですが・・・
さっき言った大阪南北問題。阿倍野も南部エリアだからローカル感があり閉鎖的と思いきや、ローカル感を残したままフレンドリーでオープンな大阪らしさの良い部分だけを残したような街でした。そして上品さまである阿倍野。なんだかとてもいい街です。
それは上記のような僕の個人的な体感の話だけではなくて、実際に活動にも現れています。“バイローカル”という阿倍野で頑張っている個人店を応援し、難波や天王寺といった繁華街にはない魅力を再発見してローカルに買い物をしようという活動をしている方と出会いました。というか、Mad Catをオープンする際に改装工事をしてもらった建築士さんがその方でした。その方がかなり昔からのセレッソサポーターだったというご縁まであり、もうどっぷり阿倍野にはまってしまいました。
【異常な阿倍野愛】
そんな阿倍野でホステル&バーを経営しだして1年半。コロナでえらい目にあったけど、なんとか生き延びています。同業のホステル経営者でも辞めてしまった人も多い中、なんとか地元の人たちに支えられてやっていけています。
そんな阿倍野の皆さんに囲まれて1年半この街に住んでわかったこと。それは、「阿倍野の人は阿倍野を好きすぎる」ということ。
バーの常連のお客さんでも、阿倍野に生まれ、阿倍野で育ち、就職しても阿倍野に住み、結婚しても阿倍野から阿倍野に引越し、阿倍野に家を建てる、という人が何人もいます。
阿倍野から引っ越すのに阿倍野区の中のこのエリアじゃないと絶対に嫌だというこだわりが、間取りや家賃よりも優先するという方もつい最近いらっしゃいました。
謎な阿倍野愛だと最初は思っていましたが、繁華街にも近くてローカルな温かみもある阿倍野から出たくないと思う気持ちは今なら僕でもわかります。
ちょっとミナミへ遊びに出かけたとき、ちょっと西成に冒険しにいったとき、阿倍野に帰ってくると「ああ、阿倍野に帰ってきたな」と安堵の気持ちになる、そんな阿倍野区なのです。
【阪田鮮魚店との出会い】
そんな阿倍野には王子本通商店街といういわゆる寂れた商店街があります。そこでひときわ賑わっているお魚屋さんがあります。今やセレッソサポーター界隈のSNSで話題の『阪田鮮魚店』です。
Mad Catのバーの常連さんが阪田鮮魚店のセガレと同級生だったというところから仲良くなり、お弁当をお昼に売っているということを聞きつけた僕は、母親のお使い以来、たぶん30年ぶりにお魚屋さんに買い物にいったのでした。
ここのワンコインお弁当はトンデモない大きさで、まず蓋が閉まりません(笑)。それをお昼ご飯に食べる度にSNSに「#madcat近隣のお店紹介シリーズ」としてあげていたところ、僕の友人たちから「あれは一体なんだ!?」と聞かれることが増えてきました。
そしてコロナでお客さんが大幅に減ったうちのホステルとしても、何かインパクトのあるイベントを企画できないかと考えていたときに、このお弁当をセレッソサポーターの皆さんに長居周辺で売ることはできないかと思いつきました。
あまりのボリュームに魅了され、僕の知り合いのセレッソサポーターの方も何人かは阪田お弁当を既に買っていたりはしましたが、近くに住んでいない人や、もっと多くの人にこの味とこのボリューム、そしてこの手作り独特の温かみを感じて欲しいと思い阪田鮮魚店&Mad Cat Hostelコラボ企画としてデリバリーサービスを始めてみたのです。それがMad Cat Eatsでした。
想像以上に好評で40個ものお弁当が売れたことで、その後毎試合Mad Cat Eatsとしてデリバリーをし、今ではお弁当だけでなく、ちょい呑みセットや海鮮太巻き、うなぎ一本寿司など、長居周辺でSNSを賑わせています。笑
【サッカーって?セレッソって?】
上述の阪田鮮魚店はもちろんそのセガレも一緒に働いていますが、これまで長年お店を支えてきたのはもう70歳を越えたオッチャンとオバチャン。実は阿倍野で80年くらい続く阪田鮮魚店。今の場所に移転してきてもう30年も経つそうです。とんでもなく長い歴史。セレッソ(ヤンマー時代を含めても)の歴史よりももっともっと長い歴史をそこで紡いできたわけです。そんなオッチャンオバチャンからすると「サッカー?セレッソ?何それ?」ってなもんです。たぶんサッカーのルールもよく分かってないでしょう。オフサイドなんて絶対知りません。
でもそんなオッチャンとオバチャンが今ではセレッソ大阪に興味を持ち始めているのです。セレッソ大阪のサポーターも阿倍野の人々に負けず劣らず温かいので、阪田鮮魚店がセレッソ大阪を応援しているとわかった途端、今度はセレッソサポーターが阪田鮮魚店を応援し始めます。セガレがやっている阪田鮮魚店ツイッターアカウントはそれまでフォロワー200程度だったのがたった数ヶ月で今や500を超え、セレッソサポーターが毎日のようにお弁当やお魚、お惣菜を買いに行き、オッチャンにヤンマーのロゴの付いたキャップをプレゼントしたり、セレッソネックストラップをプレゼントしたり。。。
そしてそれを嬉しそうに毎日つけている姿がSNSにあげられると、そのラリーはますます続いていきます。あるときオッチャンが大事にしていたセレッソネックストラップが壊れました。すると別のセレサポが現れ新しいのをプレゼント。オッチャン笑顔になる。みんなハッピーになる。セレサポ増える。なんと素晴らしい。笑
チームを応援する地元の店と、その店を応援するサポーターという幸せな関係性がここに生まれました。近くにあるけど、遠い存在だったお魚屋さんとセレッソ大阪。ちょっとしたきっかけでこんな幸せな関係が築けるのですね。
【これから】
こうして新たなセレッソサポーターが生まれ(サッカーのルールも知らないけど笑)、幸せな関係性ができた今、僕は阪田一家を一度長居スタジアム(ヤンマースタジアム)に連れて行きたいと思っています。いつもお弁当を美味しい美味しいと言って食べてくれている皆にも会わせたいし、オッチャンオバチャンにもセレッソ大阪がどんなチームでどんな温かいサポーターがいるのか触れてほしい。そんな風に思っています。
前職のサラリーマン時代に嫌になるほど聞かされた言葉「現地、現物、現実」。オッチャンオバチャンにセレッソを、現地で現物を見てもらいたい。そしたらまた面白い化学反応が生まれると思っています。
そして、これは本当に妄想で出来ることなのかわからないけど、2022年シーズンには阪田鮮魚店としてセレッソ大阪のフードコート(セレッソバル)に出店するというのを目標にやっていきたい!と考えています。
猫と魚が出会い、こんな面白いワクワクできる化学反応が起き、新たな目標も出来るなんて、セレッソ大阪はやっぱり最高だし、阿倍野も最高にいい街だなって改めて実感する2021年です。
これからも、皆さんよろしくお願いいたします!
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