マルセイユ vs PSG
Coupe de France ラウンド11
Marseille vs PSG
何故PSGは宿敵マルセイユ相手に完敗したのか、その理由を探る。
両チームのスタメンは以下。
PSG 4-3-1-2
ドンナルンマ
ハキミ、マルキーニョス、ラモス、ヌーノ・メンデス
ヴェラッティ、ダニーロ・ペレイラ、ファビアン・ルイス
ヴィティーニャ
メッシ、ネイマール
マルセイユ 3-4-3
ロペス
エムベンバ、ロンジェ、ジゴ
クラウス、ゲンドゥージ、ヴェレトゥ、コラシナツ
ウンデル、アレキシス・サンチェス、マリノフスキ
マルセイユの狙いは2つあった。
まず、ハイプレスでPSGから時間とボールを取り上げること。前半序盤はチーム全体で、かなりの圧力をかけてきた。前線が追い回すことはもちろん、人に基準を置いた守備により、CB3枚が最終ラインから積極的に飛び出し、下がってボールを受けようとするメッシやネイマール、ヴィティーニャを容赦なく迎撃する。更には、一度付いたマークからすぐには離れない。最終ラインに穴が空こうとも、高さが乱れようとお構いなし。非常に能動的な守備だった。ボールを奪えば、ショートカウンターで素早くゴールに迫る。
次に、PSG最終ラインの背後を狙うこと。常にハイプレスでボールを奪ってショートカウンターを繰り出せるわけではない。PSGに押し込まれてからボールを奪った場合は、長い距離を走ってでも最終ラインの裏を狙うことが共有されていた。
PSGにも狙いはあった。まず、攻撃はメッシ、ネイマールから全てが始まるので、ビルドアップ時、この2人はボールを受けやすいよう列を降り、代わりにヴィティーニャが上がる。トップ下はメッシ、ネイマール、1トップはヴィティーニャ、とも言える形の時間が多かった。そこに両SBやMF陣が絡んでいき、メッシ、ネイマールの創造力を中心とした即興性のある攻撃を展開する。
次に、カウンターにも成功していた。前述の通り、マルセイユは人に基準を置いた守備なので、最終ラインからCBが飛び出し、ぽっかりと穴を空けていることがあった。そこへ走り込みボールを呼び込むことで、決定機を作る場面もあった。ヌーノ・メンデスがGKと1対1になった場面が良い例だろう。
しかし、内容で圧倒したのはマルセイユ。PSGは高いインテンシティのハイプレスに面食らい、ショートカウンターの嵐を受ける。ドンナルンマのファインセーブで事なきを得ていたが、前半28分、今度はロングカウンターでDFラインの背後を付かれ、ラモスがたまらずPK献上。アレキシス・サンチェスに決められ、先制点を与える。先制に成功したマルセイユは、守備の重心を下げる。90分間はハイプレスを続けられないため、どこかで作戦変更が必要だったはずだが、理想的な時間だったろう。
マルセイユのプレッシャーが弱まったことで、ボールを持てるようになったPSG。とはいえ、前半39分にはネイマールのシュートがポストを叩く場面もあったものの、歯がゆい時間が続く。
そんな中、前半アディショナルタイム、CKからラモスのヘディングで同点。時間帯および試合の流れからして、本当にラッキーだった。
得点直後にハーフタイム。1-1となり、勝負の行方は後半へ。
後半序盤、試合内容は前半とほぼ同じ。ハイプレスを行うマルセイユ、それをかいくぐろうとするPSG。
そして56分、マルセイユが勝ち越しに成功する。PSGは自陣深くでのスローインを危機感なくプレーし、ボールを失う。ハイプレスで前線に人数が揃っていたマルセイユは、その流れで強烈なミドルシュートをマリノフスキが突き刺した。
ここでもう一度、マルセイユの狙いを思い出してみよう。ハイプレスと背後へのカウンターだ。つまり2得点共、狙い通りに取れたのだ。こうなったチームは強い。監督やチームメイトへの信頼が増し、モチベーションも上がる。
その後PSGは、エキティケ、ザイール・エメリ、ソレールを投入するが、流れを大きく変えられない。怪我人続出による層の薄さが痛い。終盤はラモスを前線に上げたパワープレーでチャンスを作るが、同点にはできず試合終了。ベスト16で敗退となった。
総じて、マルセイユの方が所謂「良いサッカー」をしていた。インテンシティ高く能動的に守備を行い、保持時は人とボールを動かす。人をマークすることで最終ラインに穴が空くと前述したが、極力ゲンドゥージがカバーに入っていた。保持においても、CBがワンツーを受けようとサイドを駆け上がったら、これまたゲンドゥージがカバーに入ったり、CB3枚の並びが入れ替わったり、サイドでCB・CMF・WB・WGが三角形や菱形を作ったり、随所に工夫が見られた。
サッカーとは、数的優位を作りながら、ボール・時間・スペースを繋ぎ、相手ゴールに迫っていくチームスポーツである。ボール扱いがうまい=サッカーがうまい、と考えてしまう人が多いが、ボール扱いはサッカーがうまいと評価されるための一項目に過ぎない。評価項目は他にも多数あり、チーム戦術を高いレベルで遂行できる選手、そしてその選手たちに戦術を与えられる監督がいるチームが、主導権を握り勝率を高めることができる。
それが今回のPSGとマルセイユの差だったように思う。ガルティエ監督は批判されても仕方がないだろう。モナコ、バイエルン、リールと戦った後、月末に再度マルセイユとリーグ戦で相見える。その時の采配に要注目だ。
以上。
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