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伝統楽器の価値を再定義(リブランディング)

6月24日(木) に第4回ブランディング事例共有会を開催しました。発表者を紹介します。発表者はイマジンポケット(有限会社アクセル)代表の齋藤秀峰さんです。※ブランド・マネージャー認定協会 認定トレーナーでもあります。

イマジンポケット(有限会社アクセル)代表・齋藤秀峰氏からは三味線という伝統楽器の価値を再定義し、ECサイト構築までを支援した事例について紹介が行われた。イマジンポケットは、企業の「戦略ストーリー」を軸に、「商品ラインナップ」、「ビジネスモデル」、「コミュニケーション」、「目標管理」という4つの要素をスクリューのように構築・運用する「DtoC(Direct to Consumer)ブランド構築メソッド」に則してネット通販のサポートを手がける企業。クライアントの支援サービスとは別に自社でウェディング小物販売なども手掛ける。

伝統楽器・三味線の価値を再定義すべくブランディングに着手

本件のクライアントはECサイト/モールにおける三味線販売や三味線教室、三味線・三線・胡弓などの販売、イベント事業、三味線修理などを手掛ける「しゃみせん楽家(らくや)」。
代表・濱谷拓也氏は長年、プレイヤーとして三味線と関わる中で、古いしきたりや流派といった伝統楽器ならではのしがらみに疑問を感じていた。そんな中で濱谷氏は2012年「ドリームプランプレゼンテーション」というイベントに登壇し、「三味線をもっと楽しく、もっと自由に」というテーマで講演。そこに居合わせたイマジンポケットの齋藤秀峰氏と出会い、「三味線の技術を競う世界大会、2032年シャミリンピック開催」といった大きな目標に掲げ、世界に三味線を広めるべくブランディングがスタートした。

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ブランディングに際して齋藤氏は、ブランドマネージャー認定協会のブランド構築の型を踏襲。参加メンバーは齋藤氏、濱谷氏に加えて前述のドリームプランプレゼンテーションに参加したサポーターにも参加を要請し、この座組で毎週1回、夕方~深夜におよぶブランディングの打ち合わせが繰り返された。
ブランディング序盤のプロセスにおいてブレークスルーとなったのが、「ペルソナの設定」。当初は「どうして一人にしぼらなければいけないのか?」となかなかクライアントに理解してもらえなかったが、「“こんなに人に三味線教室に通ってほしい”と考えてみては?」と問いかける中で、有名芸能人をペルソナに設定。そこからブランド全体のイメージが形成され、「みんなが輝く三味線コミュニティ」というブランド・アイデンティティが完成した。
このアイデンティティには「忙しい方でも時間の融通が利くレッスンシステム」「リラックスして学べる環境」「常設ステージのある教室設備」といったサービスを通してまったく新しい三味線教室を作ろうとする「しゃみせん楽家」の想いが込められている。また、ブランド・プロミスは、「三味線の演奏方法と楽しさをお伝えするのであって、流儀やしきたりを教えるものではありません。三味線を身近に感じていただくことであなたの暮らしをより一層わくわくしたものにします」とした。

家紋やキャラクターなどユニークなブランド要素が誕生

ブランド・アイデンティティが完成した後、ブランドネーム、カラー、ロゴマークなどのブランド要素に関しては予算に都合もあり、ブランド・アイデンティティとの乖離のないことを確かめた上でクライアントが用意していたものを使用。
その他のブランド要素としては、三味線を愛した幕末の志士・高杉晋作にあやかり高杉家の家紋をモチーフとした「しゃみせん楽家」オリジナル家紋を作成する一方、ブランド・キャラクターも創作した。

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その後、ブランド要素が形になってきたことを受けて、念願の三味線教室を開設。ショップも兼ねる教室ではレイアウトを変えることでミニライブも行えるような工夫が凝らされており、まさに「みんなが輝く三味線コミュニティ」という、しゃみせん楽家が掲げるブランド・アイデンティティを具現化したものとなった。
また、イベント関連の展開としては、学校での三味線教室などでの経験を踏まえて段ボールなどで作った安価な三味線「SHABO(シャボ)」を開発。通常10万円~100万円と高かった三味線のハードルを大きく下げたこの商品は「ネットショップでも販売したい」という要望もあり、しゃみせん楽家ECサイトのブランディングへ移行することとなった。

事業ブランディングからECショップのブランディングへ発展

ECショップのブランディングの事業戦略についてはもともとあった事業戦略をアレンジして使用。これにより事業戦略と一体となったECサイトのブランド戦略を描くことに成功した。なお、ブランディングの過程では事業とECを並行して行っていたこともあり、しばしば2つを混同してしまう事態も起こったがその都度齋藤氏が軌道修正。新たにECサイト担当として加わったスタッフを交えた打ち合わせを経て、「手軽で楽しい三味線がそろっていて思わずはじめたくなるショップ」というブランド・アイデンティティが完成した。
三味線に触れたことがない初心者をターゲットに設定したショップは、当初既製品の販売からスタートしたものの、濱谷さん自身の経験とアイデアから初心者でも楽しめるようなさまざまなオリジナルアイテムがラインナップ。また、ECサイトの海外対応やオンラインでのリモートレッスンといった新たな取り組みも進行している。
このように9年目を迎えるしゃみせん楽家は会員も順調に増加し、スタートアップとしては成功サイクルに乗っている。この成功のポイントは何か?と振り返ってみると、クライアントの事業に対する思いの強さと明確なゴール設定。スタート時に描いた戦略に基づいてクライアント自身がどんどんアイデアを出して、それを着実に実施したことが大きいのではないか。また、活動の軸や商品サービスも、世界中のファンを増やす、というところで一貫できているのも成功の大きな要因だったと考える。

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齋藤(シュウ)さん。発表ありがとうございました。伝統文化にありがちな派閥などのしがらみをもろともせず、最終ゴールに向けて、様々な取り組みを粘り強く伴走されている姿に刺激と、勇気をいただきました。シュウさんのビジョン「夢を追いかけ、夢を手伝い、成長し続けられる社会を目指して」そのものですね。

※この内容は、第4回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。

ブランディング事例共有会のアーカイブ映像は、会員制コンテンツサイト「Me:iku」にて公開しています。

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