脇役だった水産品が大変身したブランディング
昨年12月23日に、記念すべき第1回ブランディング事例共有会を開催しました。前回に続き、3人目の発表者を紹介します。株式会社ビスポーク代表の長田 敏希さんです。
長田さんは、広告代理店でデザイナーとして務めていた8年前に、ブランド・マネージャー認定協会の講座を受講されました。その後、デザイナーの枠を飛び越え、ブランディングの領域でメキメキ実践されているという噂を聞きつけ、後にお会いし、実践の共有をしていただきました。その後、4年前に独立され、ビジネスパートナーとして、いくつものクライアントの支援に協力していただきました。
成果を出されるのはもとより、コミュニケーション能力が高く、クリエイターとは思えない戦略的思考もあり、クライアントへの説得力もずば抜けています。
また、ブランド・マネージャー認定協会主催のブランディング事例コンテストでは常連の受賞者でもあります。
15分ほどの動画がありますので、ご覧ください。
【デザイン×ブランディングで企業をサポート】
https://www.brand-mgr.org/graduate/04
ということで、長田さんの事例発表の内容を簡単ではありますが、こちらでご紹介します。
脇役だった水産品が、自社の主力商品に大変身。水産加工会社のEC サイト× ブランディング
支援先の“門永水産(かどながすいさん)”は、鳥取県に本社がある水産加工品製造業である。主力であるカニの生産量低下による経営リスクを回避するため、他の水産品(魚・いか等の加工品)の活用と、カニの加工品をECサイトでの展開も視野に入れたブランド化を検討していた。だが、BtoBに9割頼っていただめ、BtoCの経験がほとんどなく、商品開発のスキームもないのが課題であった。
このように、カニの生産量が年々低下する中で、今までロスになっていたようなカニと同時に取れる魚に注目し、漬け魚に加工することも検討した。また、今までカニ味噌をあまり使っていなかったが、積極的にカニ味噌を使う商品を開発することにした。
3C分析
現状を把握するために、3C分析にもとづき整理した。
【特徴】
・世界の港へ出向き、その国の人々と、市場と、カニたちと、対話を重ねている
・カニや魚は全て天然
・代表がグルメでバイクで旅をしながら食べ歩きが趣味。食べながらこれをカニにしたら美味しいだろうかといつも考えている。 → カニへの愛と遊び心
・カニの「おいしいトコロ」を熟知しているから生み出せるメニュー
【顧客のマインド】
・特別な贈り物/大切な人に
・和食はカラダにいい
・カニは贈っても贈られても嬉しい
・高価なイメージがある
【直接競合】海産物のお取り寄せギフト
【間接競合】百貨店/スーパー/ふるさと納税
BtoCとしてカニと魚類の加工品ブランドを意識して進めた結果、焼いただけでも美味しい天然の海の幸を、もっと美味しくするということを主眼にした。
今までは「KADONAGA (門永)」というブランド名だったが、今後BtoCを展開していく際、地名のブランド力も活かしていく必要があるので、「TOTTORI」という名称を前につけ、ブランド名を「TOTTORI KADONAGA (鳥取門永)」にすることにした。
ペルソナは、40代で感度が高く、SNSを活用し自身で発信するような女性とした。
ブランド・アイデンティティは、「カニへの愛情と遊び心」として社長のパーソナリティを強く反映させた。
商品開発のメンバーも新たに結成し、行動指針も作った。
鳥取門永は、食への探究心と遊び心を推奨する。
美味しいと感動した瞬間を、その味をカニで実現できないか?
と考えること。
これをみんなで習慣にし、合言葉にしていった。
フレームとしての商品開発戦略シートを作成し、アイデアを出しやすくすることにも着手した。
ブランドストーリーは、顧客に共感を得られるようなメッセージを作成した。
カニはもくもく食べるといったイメージがあるが、「鳥取門永」の商品は違い、次のメッセージから始まるストーリーだ。
このブランドストーリーをセンテンスで読み解くと、
・商社だけから買い付けするのではなく、自ら海外に出向き契約することが強みである。
・“安くて、おいしくて、安全な”商品を届けるという理念を伝える。
・カニのプロフェショナルだからこそ、様々なカニの特性、部位を生かした商品作りが可能である。
・鳥取県の地産地消を優先的に選び、無添加でカラダ想いの商品であることを約束する。
といったメッセージが込められている。
このようななか「かにみそバーニャカウダ」がかなりヒットすることとなる。
鳥取のにんにくや牛乳を使った濃厚なカニみそが入っているパーニャカウダで、パスタなどに合わせて食べてもらうなど人気の商品だ。金額はかなり高額となるが、TVやグルメ雑誌にも取り上げられヒットすることに。
他にも「かにみそトマトジャン」「コンフィ」「漬魚」などの商品なども開発し、バリエーションも増えてきた。
パッケージデザインにも、ブランドコンセプトに合わせた遊びココロが表現されている。
パッケージデザインは、Pentawards といった海外のパッケージデザインコンペティションにて受賞し、他にも数々のコンテストで受賞した。このことがプレスリリースによって、各種メディアにも取り上げられ、販売に大きな影響を与えた。
ECサイトもブランドコンセプトにあるように遊びココロ満載にしている。
https://kadonaga.shop/
さて、今回の事例は、クリエイティブ中心の事例となりましたが、ブランド・アイデンティティである「カニへの愛情と遊び心」をコンセプトとした商品開発メンバーの行動指針が秀逸だと思いました。
鳥取門永は、食への探究心と遊び心を推奨する。
美味しいと感動した瞬間を、その味をカニで実現できないか?
と考えること。
この習慣によって、コンセプトに合った数々の優れた商品開発が可能となり、パッケージデザインやECサイトなどのクリエイティグにも良い影響を与えました。
長田さん。今回も素晴らしい事例発表をありがとうございました。
毎年のように事例発表をしていただいていますが、
今後のブランディング実践事例も楽しみにしています。
※この内容は、第1回ブランディング事例共有会の発表の一部をまとめたものです。ブランディング事例共有会では、チャレンジし、試行錯誤し、奮闘している実践事例の発表より、このプロセスから受け取る気づきやアイデアはもとより、元気と勇気をもらえます。
次回は、2月25日(木) 16時~ に開催ですので、お知り合いの方をお誘い合わせの上、ご参加ください。※参加費無料
■第2回 ブランディング事例共有会 ※参加費無料
https://form.k3r.jp/brand_manager/seminar02
本編終了後には、当日の発表事例を振り返り、発表者を囲み学びを深めるディスカッションとして、オンライン勉強会を1時間ほど予定しています。こちらも、ぜひ、ご参加ください。お目にかかれれば、うれしいです!