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2024年のノーベル物理学賞・化学賞をきっかけにAIの将来を考えてみた

先週はびっくりしました。AIでよく知られている二人がそれぞれノーベル物理学賞・化学賞を受賞したからです。この2名をノーベル賞の候補に挙げていた方は私が知る限りいなかったと思います。きっと世界中が驚いたことでしょう。せっかくの機会ですので、それぞれ受賞された方についていろいろと考えて今後のAIを占ってみたいと思います。


1.ノーベル物理学賞

まず、受賞者のGeoffrey Hintonをご紹介しましょう。トロント大学の教授で、70年代からAIの研究をされていました。2018年には優れたコンピュータ研究者に贈られるチューリング賞を他2名とともに受賞しています。別名は"Godfather of AI"。現在76才ですが、まだ現役です。実は以前彼が提供してくれ大規模通信講座は私も2013年に受講しており、私をAIの世界へ導いてくれた貴重なレクチャーでした。10年以上前の話ですので、現在と違いほとんどNeural Networkを教えてくれる講義はなかったので、偶然このレクチャーを発見できたのは幸運でした。ロジスティク回帰モデルしか知らなかった私にはあまりに難しい話ばかりで「なんだか凄そうだけどすぐ役に立つことはなさそう」と感じたのを覚えてます。彼が10年後にノーベル物理学賞を授与されるとは夢にも思いませんでした。幸い当時の講義は以下のようにトロント大学のサイトからアクセスできるようです(1)。ぜひご覧になってください。(ノーベル物理学賞はJohn Hopfield氏との共同受賞)



2.ノーベル化学賞
そしてノーベル化学賞受賞者はずっと若くなり、現在48才のDemis Hassabisです。世界最強のAI企業のひとつGoogle DeepMind共同創業者の一人です。今回はAlphaFold2が具体的に挙げられています。タンパク質の3次元構造を予測する画期的なAIモデルで、創薬分野などに多大な貢献をしたと言われてます。彼は一人の優秀なAI研究者であると同時にGoogle DeepMindの企業経営者でもあります。彼が一般の聴衆に対してプレゼンをする際は彼個人の実績ではなく、Google DeepMindの成果を話すことがほとんどです。この会社を世界最強のAI企業の座に押し上げたきっかけは、AlphaFold2から遡ること約4年の1996年3月に出たAlphaGoであることは間違いないでしょう。このモデルで使われた強化学習は、現在も大規模言語モデルに本格的なロジック・推論能力を付与するために盛んに研究されている技術です。私もAlphaGoをきっかけとして強化学習を本格的に勉強することになりました。そのときの様子を2016年4月にブログに書いてます。懐かしい思い出です。(ノーベル化学賞はDavid Baker氏、John M. Jumper氏との共同受賞)

AlphaGo



3.科学技術の発展とAI
今回取り上げた2名がAIの新しいパラダイムを切り開いて来たことには全く異論は無いです。ただ彼らにノーベル物理学賞・化学賞が授与されたことは、AIがAIの枠組みではもはや収まらず、科学全般の発展に必須のツールになったことを示した画期的なことだと思います。今後はありとあらゆる人間の知的活動において、どうAIを活用するか、AIとどう融合させるかを議論していく必要があると感じました。さらに発展していくと以前ブログでご紹介した Leopold Aschenbrennerの「SITUATIONAL AWARENESS」の言う知能爆発が起こり、人類の知能を抜き去ってしまうこともありうるかなとも思いました。今回のノーベル賞が示唆することは大変重要だということかも知れません。


いかがでしたでしょうか?私はビジネスパーソンですが、全く同じことがビジネスにも言えると思います。AI技術の発展速度がとてつもなく加速している昨今ですが、しっかりとその動向を見据えた上で新たな示唆を提示できればいいなと考えてます。それでは今日はこの辺で。Stay tuned!




(1) X.post by Geoffrey Hinton,  Jan 16, 2019




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