アダムの祭壇とイブの祈り 第二部
第二部
Collapse(コラプス)
「ぐおぉーん、ぐおぉーん、ぐおぉーん」
誰も居ない室内で、非常事態を告げるサイレン音と、赤色の回転灯の光がクルクルと室内を照らしている。
「ぐおぉーん、ぐおぉーん、ぐおぉーん」
「ぐおぉーん、ぐおぉーん、ぐおぉーん」
「ザバーン」
続いて、奥の方から大きな容器から大量の液体が溢れる音が漏れ聞こえてくる。
やがて、サイレンは鳴り止み、あたりは静寂に包まれた。
Filippo(フィリッポ)
「みんなさーん、お静かに!。。。」「それでは、今日は授業を始める前に皆さんの仲間になる転校生をご紹介します。」
「さぁ、こっちに来て挨拶してちょうだい。」
「はい、福地栞と申します。宜しくお願いします。」
先生は、黒板に栞の名前をとてもチョークとは思えないほど達筆に書いていく。
振り返ると、窓際の空いている机を指差し、
「まだ、新しい机を用意できてないの。ちょうど今休んでる子の机が空いてるから、少しの間、その机を使ってちょうだい。」
栞は、ピンと来た。(もしかして、あの失踪した子の机かな⁉︎)
「それじゃぁ、授業を始めます。昨日の続きだから、、〇〇ページを開いて。」「あぁ、栞さんは、まだ教科書無いわね。隣の子に見せてもらって。」
右隣の子が、親切にも机を寄せて来てくれた。
「美保よ、よろしくね!」「栞です。ありがとう!」
最初のうちは、皆授業に集中して私語を言う者も居なかったが、授業の切れ目あたりから、ガヤガヤし出したので、栞も美保と話出した。
「あのぉ、さっき先生がこの机の子、学校来てないって言ってたけど、なにかあったの?」
「あぁ、紗理奈の事?もうすぐ、一年になるかなぁ、突然居なくなっちゃったんだよねぇ。失踪届みたいなのは出したらしいんだけど、結局、家出?って言う事らしいよ。」
栞は、美保の軽いノリの返答に対し、一気に激しい嫌悪感と吐き気に苛まれたが、この子が悪い訳でもなく、この不自然が時間の経過と共に自然と感じてしまう人間のサガを何より嫌っていた。
「そうなんだ。その紗理奈さんと親しかった子って知ってる?」
「うーん、優衣かなぁ。確か部活も同じだったよ、あそこの廊下側の前から3番目の子。」
・・・
アリスの転入先は、栞とは、また異なるクラスだった。
栞と同様、挨拶を済ませ、担任から指し示されたアリスの席は廊下側の一番後ろという、もっとも熟睡しやすいポジションの一つである事が幸いというか禍いした。初めの1時限目こそ真面目に受講していたが、2時限目以降は、記憶がなくなる程に深い眠りに落ちた。流石に3限目の教師はアリスの横に立ち、頭をチョンチョンすると、アリスはガバッと条件反射のように立ち上がり、まだ寝ぼけ眼ながらも、本能的にこれはマズイと感じ、
「先生!お腹痛いので、保健室に行ってきます!」
と言うと、先生の返事も待たずに、教室を出ていた。背後の教室からドッと笑い声が大きく廊下まで響いてきたが、当のアリスは気にするようでもなく、歩を進める。
保健室の扉の前まで来ると、ちょっと前屈みになり、お腹が痛いテイを装い、扉を開けた。
「すみません、お腹が痛くて、、って、誰もいない?」
あたりを見回しても担当医らしき姿は見当たらなかったが、寝心地の良さそうなベットを見初め、そのまま惰眠を貪ることにした。敷居のカーテンを閉じて、ベットに横になったが、先ほど爆睡したせいで、あまり寝付けず、寝返りを繰り返していた。やがて、扉が開き、誰かが会話しながら部屋へ入ってくる気配を感じ、グッと息を潜めた。
「わかってるって、上手くやるって。あのヘボAIと以外はな!」
「ああ、スクリーニングするための各教師との問診はスケジュール済み。だけど結構みんな忙しくって、1週間くらいかかる。カメラの方は、今日中になんとか仕留めとく。」
「おっと、次の教室行かなきゃだから、また後で。」
真希は、棚から何かゴソゴソと取り出すと、急いで出て行った。
アリスは、布団に潜りながら(うーん、これは何かあるなぁ?)と思いつつも、この部屋を再度独占できる安心感と、フカフカのベッドが、また眠りにつかせた。だが、4時限目が終わると、クラスの学級委員がアリスの様子を見に?と言うか、連行しに来たので、それ以上の盗み聞きはできなかった。もちろん、昼食で満腹になった後の授業でも睡魔と格闘しなければならなかったのは、ある意味、予定調和と言えた。
・・・
放課後、三人は、互いの情報を持ち寄り、対策を練るため、事務所に集結した。
神父は、早速、教員名簿から、名前と写真を切り出し、用意をしていた。アリスは、開口一番、数学の金子先生が怪しいと言い出した。
「あいつ、私の机の前に来ると、必ず立ち止まって、私の方を覗き込むの!帰り際に、私のところに来て、ジロジロ見ながら私のスカートの丈が短いって云うし、ホント、サイテー!!」
「それは私がアリスの可愛さに合わせて丈詰めしたからでしょう。もちろん、栞さんのも、私が夜鍋し、諸々調整しております。ただ、校則には抵触しないようには気をつけましたので、問題ないはずです。まぁ数学の先生なので、見た感じでおよその寸法がわかるんでしょうねぇ。」
(あぁ、なるほど、授業で線とかいっぱい引いてるから、職業病みたいなものなのでしょうか?)
「そうじゃない!アイツの目が、もう全てを物語っていたのよ!」
(うん、うん、これは女の子にしかわからない、独特のカン。ですよね!)
「アリス、私の見立てでは、先生があなたの前で立ち止まるのは、あなたが爆睡していたからですよ。」
「チッ!。。。相変わらず、どこから見てるのよ、アンタは! いいわ、アイツにはアタシが鉄槌を下してやるわよ。」
「あぁ、あと保健の先生の動きが怪しかった、何か探ってるみたいだった。。。」
「なるほど、もし、目的が同じなら何かしらの情報共有や共闘体制が築けるかもしれませんね。栞さんはどうでした?」
栞は、失踪者の紗理奈と同じクラスであったこと、その友人である優衣と仲良くなり、明日、部活を一緒に巡る事などを手早く説明した。
「栞さん、グッジョブです!」
「ありがとうございます。それと、失踪した紗理奈さん、恵子と同じ園芸部だったんです。」
「うーむ、確かこの高校の離れにある旧校舎を使用して、水耕栽培の実験場があると、今朝、用務の先輩から説明を受け、その周辺を丹念に草刈りしていたところです。今回の端緒は、あるいはそのあたりにあるかもしれませんねぇ。」
「それでは、こうしましょう! 明日の放課後、栞さんは、その優衣と一緒に園芸部へ、私はアリスの教室で落ち合って、その保健師と何とかコンタクトしてみましょう。その後は、皆で旧校舎へ。」
「それと、各自連絡を取る為にこれを用意しました。」
神父は机の上に無線式の小型イヤホンを3セット置いた。栞とアリスは、各々受け取ると、大きく頷き、その日は解散した。
・・・
「コン、コン、」
「はい、どうぞー。」
「用務員の吉野健三です、よろしくお願いします。」
小兵ではあるが、もうすぐ定年とは思えないほど、背筋から足腰までしっかりとした体躯を持っており、真希は、何かしらの武道経験者であると一目で察し、あるいは警察関係かとの考えに及んだ。
「お待ちしてました、そこへお座り下さい。」
「ピピッ、吉野さんは、この高校で失踪した子の最後の目撃者です。以前は交番勤務の巡査長でしたが、理由不明ですが1年半前に辞職、現高校に転職しています。」真希の聴覚デバイスを通してキサラギが補足情報を伝えてくる。警察関係であれば、何か有用な話が聞けるかもしれない、と真希は思いを巡らせながら、話を続ける。
「事前にご記入頂きました問診と過去の検診結果を拝見しましたが、56歳とは思えないほど、お元気なんですねぇ?」
「そんですかぁ、ありがとうございます。最近若いのが入ってきたもんで、そろそろ引退かなぁなんて思ってるところです。」
「いえいえ、まだまだご健勝なんですから、あと10年くらいは大丈夫ですよ!」
「ところで、吉野さん。吉野さんは、以前この高校で失踪事件があった際に女生徒を最後の見た方だと、小耳に挟んだんですが。。。その時の彼女の様子、例えば何か思い詰めているようだったとか?何か気が付かれたことはありますか?」
「確かぁ、その当時も刑事さんに話したんだけどね。後ろ姿を見ただけだもんで、何ともねぇ。。。ただ、あの子は、放課後によく花壇の世話をしててねぇ、まぁ力仕事が必要な時もあるもんで、そんときは、私の方で、手伝ったりもしてたんですが、気立ての良い、真面目な良い子でしたよ。私も経験上、今まで色々な子を見てきましたけどねぇ、少なくとも、自殺したり、黙って家を出るような感じの子ではなかったねぇ。」
「そうですか、ちなみに最後に彼女を見かけた時、彼女はどこへ向かってたんですかね?」
「猫車に空の肥料袋入れてたもんで、多分、旧校舎の方にある園芸部の倉庫に向かってたんだと思います。」
「猫?」
「ハハッ、よく建設現場で見かける一輪の台車のことさねぇ。」
諸説あるが、建築現場などで見かける「猫足場」。そういった狭い足場を通れる運搬車という意味で、「猫車」と呼ばれている。てこの原理を利用して、比較的重い荷物でも一人で軽快に搬送でき、一輪のため、小回りも効くことから、様々な作業現場で重宝されている道具である。
「ところで、あんたさんは、なんでそんな昔のことに興味を持ちなさる?」
「いやー、ほら、今度生徒達のメンタルケアとかも考えてて、何かの役に立てばと思いまして。。」
「あぁ、勉強熱心だねぇ、」
「コン、コン、」
「次の方が来たみたいですので、吉野さん、お忙しい中、ありがとうございました。」
「あー、はい、どうも、どうも。」
「生物の黒田です、よいしょっと。」
入れ替わりに、少々小太りの先生が入って来た。立っているのが億劫なのか、真希の前にある椅子目掛けてまるで尻餅をつくかのように生きよいよく座った。途端にブチッと、ウエスト付近の布が悲鳴を上げるのも聞こえたが、さも気付いていないかのように、問診票へと目を移す。
「ピピッ、黒田先生は、失踪した子が所属していた園芸部の顧問で、おそらく教師の中で最も彼女を知る存在です。我々がピックアップした犯人候補の一人です。」キサラギが補足情報を伝えてくる。真希の初見では、まずこのタイプで犯罪に手を染める人間を見たことがないのだが、果たして。。。と思いながら言葉を繋げる。
「黒田先生、それでは、よろしくお願いします。」
「早速ですが、事前にご記入頂きました問診と過去の検診結果を拝見しました。今まで何度も指摘されているとは思いますが、お腹周りのコレステロールと糖尿が気掛かりですね。」
「えぇ、自覚はしておるんですが、なにぶん脳の好物のブドウ糖を取らないと、どうも頭が働かなくてね。。」
「確かに職業病とも言えるかもしれませんが、野菜を多くとって自重なさってくださいね。。。あっ野菜と言えば、先生は、園芸部の顧問で、旧校舎で水耕栽培をされていると聞きましたが、育てた野菜の味見とか頻繁に食べてらっしゃるんじゃないですか?」
「いやぁ、私は野菜は苦手でね、顧問と言っても名ばかりで、味見の方はもっぱら、園芸部の子達に任せっぱなしです。」
「そうですかぁ、そう言えば、一年位前に失踪された子がいると伺いましたが。。?」
「あぁ、そうです。今も時折思い出しますが、彼女達はとても優秀でしてねぇ。。」
「えっ、彼女達って、失踪されたのは一人じゃなかったんですか?」
「んっ?、、、あぁ、確かに生徒は一人でしたが、そのさらに半年くらい前になりますか、私の前任で教え子の野村理央君が。・・・元々ここの生物学の教師をしておりましたが、ある日いきなり居なくなりましてね。それで、ちょうど退官間近の私が、彼女の穴を埋める形でこちらに赴任する流れとなった。と言うわけです。」
「そうだったんですね、失礼しました。心中お察しします。」
「今日は、もういいかな?」
「はい、でもお体のことですので、野菜はなるたけ取るようにしてください。ありがとうございました。」
黒田は、片膝を押さえながら億劫そうに立ち上がると、たるんだ下腹の慣性が働くのか、のそのそと、僅かに上下に揺れながら部屋を出ていった。
「優斗!聞いてたか?」
「ピッ、はい、確認中です。おそらく検索の過程で、年齢層を女子高生に絞り込んだ為、抜け落ちたようです。すみません。」
「まだまだケツが青いなぁ、少年!」
「はい、野村理央の詳細は真希さんのスマホに送信しておきました。確かに先程の黒田研究室の出身ですね。んっ、あと物理の後藤先生も理央先生の後輩になりますが、同じ黒田研究室の出です。もしかしたら事の発端は、この理央先生にあるのかもしれませんね?」
「なーに弱気になってんだ!今回の失踪対象は女子高生なんだろ?本スジを変えるにはまだ早いな、もう少し情報がないと。。。」
Hydroponics(ハイドロポニックス)
翌日、栞は授業が始まる前、昨日手渡されたイヤホンを片耳に取り付け、授業に臨んだ。やがて、栞の耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。
「スー、スー、ムニャ、ムニャ。んっ、あぁ大丈夫、大丈夫だから。。。お昼までそっとしておいて。」
「ふぇ、なぁーに、4大天使? あぁ大丈夫、大丈夫、アタシはウリエルの子、神の炎だから。。。お昼までそっとしておいてー。」
「へっ、なぁーに、廊下で立って寝てろ?、はいはい、行きますよ廊下に。スー、スー、」
(アリスちゃん大丈夫かなぉ。。しかし何と言う大それた寝言。しかも立ったまま寝てる?っぽいし。)
・・・
「カチャ、あぁ、ここは。なるほど、なるほど。パタン、おぉ、なんと!」
「カチャ、キャー痴漢!痴漢でーす。早く、誰か呼んできて!キャー!、キャー!。」
「あぁ、落ち着いてください皆さーん。誤解です。私は聖務として、この切れた電球の球を交換しに来た者でして。」
「キャー、無精して出来た球を晒しにきたモノですってー!」
「あ、いえ、そうではなくて、聖職者の用務員で・・・」
「キャー、あ、でもちょっとタイプかも。。」
「ダメよ、かずみ。いくらイケメンだって、痴漢は痴漢。鉄槌あるのみ!!」
「ヒィー、誰かー。」
「はいはい、まぁーたアンタか?全く、昨日の今日で、今度は何したんだ?」
(ハハハ、やっぱり昨日も何かやらかしてましたか。)
「あぁ、吉野先輩!助かりました。いえ、ただ僕はこの部屋の電球を交換しようとですねぇ。」
「いいから、とにかくアンタは外の草むしりね。昨日の旧校舎の方、まだ終わってないでしょ?さぁ、行った行った!」
「・・・はい。」
(参ったなぁ、このイヤホン、違法改造なのか電源スイッチとかマイクスイッチ無いから、全部筒抜けだし。このままだと放課後まで、授業に集中できないよぉ。。)
・・・
この後も様々な雑音に苛まれながらも、放課後までたどり着いた栞は優衣にお願いして、一緒に、紗理奈さんの失踪当時の様子などを聞きながら、園芸部の花壇を巡った。
「紗理奈は、あの頃は毎日花壇の手入れをしてたと思う。ちょうど追肥する時期で結構遅くまでやってたと思うわ。私は、水耕栽培のお手伝いで、旧校舎に入り浸ってたから、詳しくはわからないんだけど。。。」
「そうだ、せっかくだから、旧校舎も見ていって!」
一通り花壇を巡った後、二人は旧校舎へ向かった。旧校舎と言うだけあって、外観は旧来の古びたそれであったが、扉を開けた中は、温湿度の集中管理と、太陽と同じ発光スペクトルを持つというLEDによる日照制御の最新の建物といった感じであった。
「わぁ、すごーい! あれ、奥にあるのはりんごの木?ですよね。水耕栽培ってカイワレとか葉物野菜だけだと思ってました。」
「正解! 私も詳しいことは分からないんだけど、最新の研究で、根菜はまだらしいんだけど、茎が木質化して枝になる果物系はできるようになってきたみたい。ここにあるのは、第一号の研究段階のモノらしいわ。普通のりんごは、苗木から実がなり始めるまで4~5年かかるらしいんだけど、この木は、半年たらずで、ここまで大きくなって、もう収穫も何度か行っているのよ。すごいでしょ!?」
「うん!なんと言うか、アダムとイブのりんごみたいですね。」
「そう、禁断の果実! だから、この実もまだ食べちゃダメなんだって。」
「へぇ、なんか、神秘的で、素敵です。」
「うふふ、今日はこのくらいで、いいかな?」
「ありがとうございました、あのぉ、紗理奈さんが最後に立ち寄っていそうな所って、どこかわかりますか?」
「それなら、この旧校舎の裏にある園芸部の倉庫かなぁ、肥料の片付けとかもあそこでやるし。鍵は私が持ってるから、よかったら明日まで貸すわ。もし何かわかったら、私にも教えてね。ずうーっとこの辺がモヤモヤしたままで気になってたんだ。」
「もちろんです、ありがとうございます。」
栞は、その場で優衣と別れ、一人、倉庫へと向かった。
「アリスちゃーん、神父様、聞こえてますか?園芸部の倉庫を物色してみましたが特に何もなかったです。」
「栞? こっちは聞こえてるわよ。私たちもこれからそっちに向かうから、ちょっと待ってて。」
「はい、あっ、あれ? なんか、倉庫の脇に地下室へ通ずる扉を発見しました。ちょっと行ってみますね。」
「あ、栞さん!一人じゃ危ないですから、私達が行くのを待っててください。ザザ、ザー!」
「はい? あれ、聞こえませーん。おーい!もう、大事な時に!奥の方が明るいから、ちょっと行ってみましょう。」
「あれ、聞こえない。。。まずいですね、早く我々も行きましょう。」
「ちょっと待った、誰か来た! アンタは早くどっかに隠れなさいよぉ。」
「えー、ちょっと待ってください。あぁ、あそこへ。」
「コン、コン、」
「はい、どうぞー。」
「よろしくお願いします。」
「えーっと、数学の金子先生でしたね。そこにお座り下さい。」
「は、はい。金子敏夫、28歳、独身です。」
(何だぁコイツ、随分圧が強いなぁ。。)
「ピピッ、この教師は生徒からのセクハラ被害で何度か訴えられています。ただいずれも、証拠不十分で、訴えを取り下げられています。我々がピックアップした犯人候補の一人です。」真希の聴覚デバイスを通してキサラギが補足情報を伝えてくる。確かに何か落ち着かず、そわそわしているように見受けられた。
「事前に問診票に記入していただいた内容ですと、時折、胸部に圧迫感があると?」
「はい、締め付けられるような痛みが。」
「ふーむ、では、そこのベッドに横になってもらえますか?」
真希は、解らないながらも、胸の辺りを押さえたり、聴診器を当てたりしてみた。
「うーん、特には異常なさそうですねぇ、、、はい、起き上がってください。」
金子は、起き上がりざま、真希の肩をとり、ベットへ押し倒した。
「はぁ、はぁ、先生、僕は、アナタを一目見て。。 ウッ!」
真希の膝蹴りが金子の股間にクリーンヒットし、そのまま卒倒した。
「ふぅー、次があるので、そのままそこで休んでなさい。」
「ピピッ、大丈夫ですか?」
「あぁん?、問題ない。ただ、コイツのスマホ、指紋認証で開けてみたが、録画済のエグい映像がかなりある。後で、送信するので、別件で逮捕するよう、手配しといて! 一応、猿ぐつわを噛ませて、手足の指はインシュロックで固定しておいた。この教師は問題あり。でも今回の件に関しては、シロっぽいな?」
「ピピッ、了解しました。」
第三部:https://note.com/toshi_57/n/ncce3745a2004