ビジネスマンに勧める資産形成(株式投資)⑯~キャリア戦略に資産形成が有効な理由~
前回に続き、自分の経験とファクトについてご紹介させて頂きます。
前回は、5,250万円を1,250万円(あと1年退職を我慢すれば支給されるはずであった終身年金)と4,000万円(50歳まで勤務すれば支給されるはずであった追加の退職金)の2つに分解し、それぞれの金額から割引現在価値を導出してみました(1,250万円の割引現在価値が①125万円、4,000万円の割引現在価値が②2,050万円)。
続けます。①と②の現在価値を合計すると125万円+2,050万円=2,175万円となり、一見すると5,250万円の機会損失と思われたものが、現在価値という本質的な価値で評価すると、その半分近くにまで減少することが分かります。
この2,175万円がどういう意味を持つか。この解釈が重要です。
■株式相場の調子が良い時であれば、1ヵ月もあれば自分の投資ポートフォリオ全体で十分に取り戻せる水準であること。
■2022年の退職時に現実に受領した1,000万円を投資に振り向けることで、50歳になった頃には対象資産が大きく増えているであろうこと(毎月のiDeCo投入分も含めてですが、相場がぺしゃんこでぺんぺん草も生えなかった2022年に退職金1,000万円を3回に分けてS&P500に分散投資したものが、これを執筆している24年5月5日現在で+48.99%のリターンを叩き出しています⇒画像参照)。
■保守的に見積もる為に、現在価値を導出するための割引率を10%に設定したが、15%に設定すると機会損失の割引現在価値合計は約1,700万円と算出され、機会損失のインパクトは更に軽減されること。そしてこれは、相場の調子が良ければ数週間あれば複利効果で十分に増やせるレベル。
少し説明が長くなりましたが、この様に考えていくと、終身年金や退職金というのは、退職の意思決定において殆ど考慮する必要がない、マイナー要素であることが分かります。
そしてこれこそが、ファイナンス理論や投資経験をベースにした、科学的かつ本質的な意思決定方法です。
ここではたまたま年金や退職金を引き合いに出していますが、事業投資などその他あらゆる投資活動においても、この様なスタンスで意思決定に臨むべきです。
そしてここまで読んで頂いてお分かりの通り、年金や退職金の機会損失がキャリア戦略上の本質的なリスクではありません。
そこではなく、退職金がPeakとなる50歳まで退職を我慢すること自体がリスクであり、この機会損失は甚大ではありません。
50歳まで大手企業一本足打法でやってきて、自ら環境を大きく変えた経験もないサラリーマンを、どこの企業が欲しがるでしょうか(年収を1/3ぐらいにまで落とせば拾ってくれる中小企業はあるかもしれませんが、そういうケースはここでは無視します)。
数カ月間にわたりお付き合い頂きました講演の内容は、次回で最後とさせて頂きます。
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