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ものづくり職人の在り方(1)


ものづくり職人として


30年以上ものづくりに携わって来た元工場長として、職人の在り方について考えてみた。

1言で ものづくり と言っても内容は多岐に渡る。
一般的に ものづくり職人と言うと 経験と鍛錬によって手に入れた 技能、知識を活かして 何かを作る人と捉えられている様だ。

作る物の種類によって 実体のある物 WEB上の製品の様にデータとして存在する物 土木建築工事で創り出される橋や建物も ものづくり に含まれるのだろう。

私が携わって来たのは、金属板金加工の職人で 図面から加工データを起こして レーザー加工機で金属板を切断して 曲げ加工や溶接加工等の工程を経て製品にする仕事だった。

本来は各工程にそれぞれの作業者が居て、材料から製品までの加工工程を分担して行くのが普通だが、この世界の職人で 仕事が出来る と言われる人達は 最初から最後迄1人でこなす技能知識を持ち 図面を渡せばそこから完成品迄 他の人の手を借りずに仕上げ事が出来る人達が 出来る と言われる事が多い。

もちろん 各工程に専門の作業者が居て分担しながら工程を進めて行った方が効率的なのだが、最初から最後迄1人で出来る人が1人位は居ないと全工程の管理を一人の脳内で処理することが難しくなってしまうので 特に工場長なんてポジションだと全工程の深い理解と高い技能レベルが求められる事が多い。

決して「頑固職人」になってはいけない


ものづくり職人の世界で 結構な確率で存在するのが「頑固職人」と言われるベテラン勢だ。

◦ まともに教えない(仕事は見て覚えるもんだ!とか言う)
◦ 怒鳴り散らす
◦ 新しい工法には馴染まない

等々 パワハラ、モラハラなんて比べ物にならないめちゃくちゃなやり方で 井の中の蛙 お山の大将をやっている人達が幅を利かせていたのが 日本の伝統的な職人世界であったらしい。

今の時代にこんなやり方では問題になってしまうため、どんどん希少種になっていくのだが、まだ絶滅した訳ではなく あちこちに周囲から疎まれる存在の「頑固職人」として生存している。

更に問題なのが「頑固職人」に育てられた 若い職人が何も考えないタイプの人間だと素直に師匠の教えを受け継いで「頑固職人」が増殖してしまう事だ。

私も長年工場長だったので 当然全工程の知識技能は持ち合わせていたのだが、私の知る所の「頑固職人」達は全工程出来る人は存在しなかった。
ものづくりの世界で言うと「単能工」と言うヤツである。
1つの工程しか出来ない「単能工」に対して
色々な工程が出来る人は「多能工」と言われて重宝される傾向にある。

「単能工」であっても本当に1つの道を極めて他の追随を許さない位のレベルになっていれば それはそれで素晴らしいのだが、殆どの「頑固職人単能工」は自分で「俺は凄い!」と言ってるだけで、相対的には迷惑な存在になってしまっている事が多い。



ワガママ自己中な頑固職人



「単能工」はどちらかと言うと 余り出来ない人 のイメージが強いのだが
「頑固職人」達はそんな事は一切気にしない図太さを持っている。
1つの仕事しか出来なくても
「俺はこの仕事のプロだ!」
「これは俺が1番上手い!」(社内で比較しただけの中で)
「これはこのやり方でしか出来ない!」
「俺は〇〇年この仕事やってるんだ!」

とか言って開き直ってふんぞり返っていたりする。

「俺は〇〇年この仕事やってるんだ!」
なんて余程の物を持っていないと
○○年やってそんなレベルなのかい?
と言われてしまうのがオチなのだが
「頑固職人」達は 非常にその辺は鈍感なため 何を言われても全く動じないのだ。


頑固職人」で1番問題なのが
これはこのやり方でしか出来ない!
と言う考え方だ。
私はどちらかといえば
これでもいいんじゃネ?
のタイプなので、結果が出せるならば 
いかに速く楽に仕事を終えるか?ばかり追求するので
この方法しか無い!
と言って選択肢を減らしてしまうと窮屈なのだ。

更には仕事内容が 技術 と言う言葉が出て来ない程度の小手先の 技能 で事足りてしまうレベルなので 理論的に同等かそれ以上の結果が出るなら 工法の変更は問題無いのだ。

私の経験上から言わせてもらえば
この方法しか無い!
の人達は作業の理論もわからずに 何をするにも 試行錯誤から入って 成功すると どうして成功したのか?の どうして を考えないで 「この方法しか無い!」と言う結論を出してしまっている事が殆どであった。

そんな仕事の覚え方をして育ってしまうと
これをこうしたらこうなった
と言う 結果論から来る成功体験しか無いので
どうしてそうなったのか?
の どうして? を考える習慣が身に付かない。

要するに
この方法で出来るなら、こうしても同じ結果になるんじゃない?
と言う応用力が無くなるのだ。
結果
この方法しか無い!
の「頑固職人」が産まれてしまう事になる。
しかも 本人が理論的に理解していないので部下に対しての指導も論理的では無く 極端な話 教える事が出来ない為
仕事ってのは見て覚えるもんだ!
と言ってみたり 怒り出したりする 迷惑上司が誕生してしまったりする。

                           つづく




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