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第2期絵本ゼミ 第1回のふりかえり

9月11日PM13:00~ アーカイブ受講

 
 東洋大学准教授竹内美紀先生による絵本探求講座(ミッキー絵本ゼミ)の第2期が始まった。
 第2期のテーマは「選書ができるようになること!」

「いい絵本とは何か?」
「いい絵本とはこれです」と、選べるようになること。
 いい絵本とは1種類ではない、絵本の種類によって異なり、読者によっても違ってくるであろう。しかし、これだけは押さえておかなければいけない絵本についてを学んでいく。
 そして今回のアプローチの方法は「ジャンル別」

チーム4

 第2期は第1期からの継続メンバーと新たに参加された方々で、5つのグループが編成されている。課題の本をグループでシェアし絵本を語る。このグループディスカッションで自分の言葉で言語化するということが鍛えられていくのだが、私には、これがはなかなか難しい。
 第1回の課題本は継続メンバーは「昔話」新規メンバーは「好きな絵本で自己紹介」
*・・・所属グループ覚書・・・*
チーム4 FAちえこさん
継続メンバー・
ちえこさん『ねずみのすもう』樋口 淳/文 二俣英五郎/絵 ほるぷ出版 1968年  /神沢利子/文 赤羽末吉/絵 偕成社 1983年 
えりちゃん『スーホの白い馬』 大塚勇三/再話  赤羽末吉/画 福音館書店 1967年     
とし(自分)『三びきやぎのがらがらどん』マーシャー・ブラウン/絵 瀬田貞二/訳 福音館書店 1965年
新規メンバー・
ゆかみん『おへそのあな』 長谷川義史/作 BL出版 2006年
ゆいさん『のはらひめ』 なかがわちひろ/作 徳間書店 1995年
くみちゃん『は、にげる!』 東京ハイジ/作 2020年

「昔話」講義

昔話の定義

*伝統的な物語書式に添った語りの散文。
*口承により世代を超えて伝えられる。
*作者不明 (活字で印刷されるときは再話と称される)
*昔話の型(カタログ)AT型(アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス)
・発端句(発句) 例:むかしむかしあるところに・・・
・伝聞 例:トサ・ゲナ・ソウナ など
・結末句(結句) 例:どんとはらい、チョキンパチンストン
ー無意識に近い言葉をもって話の終わりをあきらかにしたものー

発端句と結末句によって不思議なことが起こるお話しの世界と今の世界を区切ることができる。

昔話絵本の定義

昔話の本質に入っているもの。
昔話のルール(発句・伝聞・結句)が省略されている現実の世界とお話しの中の世界との区切りがつかないため昔話絵本としては欠点となる。
昔話絵本とは絵本の一形態であり、絵と言葉が補いあって物語を展開していく。
昔話の言葉(テキスト)は伝承されてきた物語である。

昔話絵本研究における3つのアプローチ

・構造論:課題と出発→課題解決・終わり
    (昔話は外から課題を与えられる)
・昔話の型:アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス(AT型)
世界各地に伝わる昔話をその類型ごとに収集・分類したもの。
・様式論:マックス・リュテイ 
 *一次元性 
 *平面性 
 *抽象的様式 
 *孤立性と普遍性

「昔話」についてディスカッション

 講義を受けた後、まずはグループで持ち寄った絵本をもとに討論をする。
 アーカイブ受講の私は、チーム4の録画を観ることからはじめた。
 チーム4の昔話絵本は『ねずみのすもう』『スーホの白い馬』『三びきやぎのがらがどん』である。
・『ねずみのすもう』 

神沢利子/文 赤羽末吉/絵 偕成社 発行1983年


樋口淳/文 二俣英五郎/ ほるぷ出版 発行1986年

 同じタイトルではあるが、右開き(縦書き)、左開き(横書き)と視点と語りも違う2つの作品が紹介されたことで、この違いにはどういう意味があるのかと議論されていた。また、昔話(民話)特有の「でんがしょ」などの音を文字で表わした時のイントネーションはどう表現したらよいのかの疑問があがっていた。
 『ねずみのすもう』ではないが、ミッキー先生からは『ももたろう』を例に出し同じタイトルの本の違いについて語られた。
・小澤俊夫は昔話研究の第一人者である。伝承された物語を忠実に再話している。

 小澤俊夫/文 赤羽末吉/絵 福音館書店 発行1995年

・松居直の『ももたろう』は鬼から財宝を取り上げることはせず、お姫様だけを連れて帰るという結末で終えている。財宝を鬼から奪い返すということは人間から財宝を奪った鬼と同じ行為であり、正義ではない。昔話の基本よりも”子どもたちに何を伝えたいのか?”を重視しての編集である。
 自分が何を表現したいか、伝えたいかを大切にする作り手の意思により、昔話のルールから外れている昔話絵本が昔話として悪い絵本という評価にはあてはまらない。
 

松居直/文 赤羽末吉/画 福音館書店 発行1965年

・「でんがしょ」の読み方については昔話が声の文化であることから、決まった読み方はない。おじいさん、おばあさんが囲炉裏端で子どもたちに語っている様子を思い浮かべると確かに色々な声が聞こえてくるようだ。

*昔話絵本は再話であるがゆえに作りての表現方法で幾通りもの作品がうまれてくる。私が馴染みのある『ねずみのすもう』は偕成社より出版された絵本であるが、これを機会に読み比べてみたい。*

・『スーホの白い馬』
むかしモンゴルの草原にまずしい羊飼いの少年が・・と、場所の特定がある。
 昔話の「いつ・だれが・どこで」が、特定されない抽象的様式にあてはならいが、神話・伝説など広い意味での昔話と解釈される。

『スーホの白い馬』大塚勇三/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 発行1967年

昔話の惨酷性について

 保育士時代にも絵本について学ぶ場があった。
 子どもたちに昔話を伝えるのであれば、昔から伝承されてきたお話しを伝えていきたい。しかし、昔話は往々にして惨酷なものがある。
そのためか、『3びきのこぶた』のおおかみが反省をしたので、こぶたたちも許して仲良く暮らしました。
『さるかにがっせん』のさるは反省をしてあやまりました。など改変されている昔話も少なくはない。
 因果応報、勧善懲悪、悪いことをしたら罰せられなくてはいけないという先人たちの教えから、子どもたちへは伝承されてきたお話しを伝えていきたいと思っていた。
 が、今回Yさんが紹介してくれた、小澤俊夫/文 赤羽末吉/画 福音館書店発行1988年 の『かちかちやま』にはタヌキがおばあさんをたたき殺し、ばばあ汁を作り、おじいさんに食べさせる場面がある。ポプラ社から1967年に発行されている松谷みよ子/文 瀬川康夫/絵の『かちかちやま』はおばあさんをたたき殺し山に逃げてしまう展開である。
 松谷みよこは絵本のあとがき、「かちかちやま」によせてに「わた しは長い間、この話を好きになれませんでし た。なぜきらいかといえば、それはやはり、 たぬきがばばあ汁をつくっておじいさんにく わせ、「ながしの下の骨をみろ。」といって 逃げていくあたりの惨酷さが、幼い日の印象 となってのこっているからではないかと思い ます。(中略)わたしはあえてこのくだりをはぶき ました。民話のなかの惨酷性については、さ まざまの意見があり、わたしはむやみにその くだりを書きかえたり、あまくする必要はな い、むしろそのこと自体がまちがっていると 思うのですが、かちかち山では、おばあさん がたぬきによって打ちころされたということ だけでよいのではないかと思ったのです。」 と書いていて、共感した。
 
 ところが、ミッキー先生から昔話の残酷性についての解説を聞き小澤俊夫と赤羽末吉の『かちかちやま』のよさに目をむけることができた。
 おばあさんが死んだ場面は空っぽの着物が描かれていて、おばあさんがいないという事実のみを伝えている。たぬきに殴られて痛かった、血がでたなどおばあさんを肉体的には語っておらず平面性と中身を抜いて語るという昔話の特性が生かされている。
 松谷みよこ/瀬川康夫はおばさんが倒れている姿を描いてはいるが、血は流れていないことから生々しい死体のイメージではない。

 『うしかたとやまんば』小澤俊夫/再話 赤羽末吉/画 福音館書店 発行1988年 でも、やまんばにおいかけられたうしかたが、馬の足を1本ずつ切り取りやまんばに渡す場面では走る馬の姿から足が1本ずつなくなっていく絵が描かれている。足がなくなっているのに馬はまるで4本足で走っているかのように描かれているのが不思議だが、昔話では馬には肉体がなく血も流れない、立体として語ってはいない。切り紙で作った馬の足を1本ずつなくしていっても、走る姿が変わらない切り紙細工のように語っているから子どもの心に恐怖として残ることはない。
 小澤俊夫/再話 赤羽末吉/画 の『かちかちやま』をじっくり読み、昔話の平面性を堪能してみたい。

第2期受講の動機と目標

第1期を終えて、絵本の絵と文の巧みなバランスに相乗効果の偉大さに驚き、絵がことばを語り、文字が絵を描く面白さを味わい、昔話、科学絵本、オノマトペ絵本、仕掛け絵本など絵本の魅力が生かされる作り手の工夫や技法を知ることができた。
 第2期では絵本をジャンル別に探究するという。
絵本の中へまた一歩足をすすめ、深く知ることができる楽しみで継続を希望した。
 ミッキーゼミでは課題本を持ち寄るので、毎回たくさんの本に出会う。これがまた魅力のひとうである。こんなにたくさんの絵本があるのかと驚かされる。
第1期では、紹介された本を読むことが精一杯だった。
本を手渡すの仕事に携わる者として、今期は、子どもや周りの人たちに紹介し手渡すことを目標とする。
 








 












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