第3期ミッキー絵本ゼミ 第4回ふりかえり
絵本の賞(海外・日本の絵本)について気になる作品を研究する
絵本探求ゼミ第3期は絵本の賞について学んできた。「コールデコット賞」「ケイト・グリーナウェイ賞」のついて学び、これらの賞は「国際アンデルセン賞」を加えて世界三大絵本賞と呼ばれている。
国際アンデルセン賞は11953年に国際児童図書評議会(通称IBBY)により創設された。国際児童評議会が決める児童文学の国際的な賞であり2年に1度選考されている。作家賞と画家賞の2部門があり、世界中の現存する作家及び画家の全業績に対してそれぞれ1名ずつおくられている。
選考水準の高さから「小さなノーベル賞」とも呼ばれており、これまでに5人の日本の作家も受賞している。
【画家賞】
・1980年、赤羽末吉
・1984年、安野光雅
【作家賞】
・1994年、まど・みちお
・2014年、上橋菜穂子
・2018年、角野栄子
国際的な賞
国際アンデルセン賞のように国際的な賞で日本人が受賞しているものは
他にもあるのだろうか?興味をもち調べてみることにした。
・リンドグレーン賞
スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンを記念して、スウェーデン政府が2002年に創設した賞である。子どもの本の作家、画家、読書活動のプロモーターなど、子どもの本に関わる広い範囲を対象に毎年授与される。
2005年受賞・荒井良二
・ナミ・コンクール パープルアイランド賞
ナミコンクールは、ナミアイランド(韓国)の主催で、2年に1度開かれている、世界的な絵本イラストレーションのコンクールである。世界最大のボローニャ国際絵本原画展より参加国数で上まわり、応募数ではボローニャに次ぐ規模の大きな賞となる。
◯グランプリ(1名)
◯ゴールデンアイランド賞(2名)
◯グリーンアイランド賞(5名)
◯パープルアイランド賞(10名)
2019年 田中絹代『くろいの』パープルアイランド賞受賞
・ボローニャ国際絵本原画展
イタリアの古都ボローニャで春に開催される児童書専門の見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」が主催する、児童書のイラストレーションを対象にした国際コンクールです。国籍の異なる5 人の審査員は毎年入れ替わり、応募作品は有名作家の作品も新人の作品も同じテーブルに並べられて審査されます。出版・未出版に関わらず審査の対象とされるため、新人作家の登竜門としても知られており、多くの作家が入選している。
・ブラスティヴァ世界絵本原画展
1967年に始まった絵本原画のコンクールです。スロバキアの首都ブラチスラバで、隔年に開催されています。ひとつの国から最大15人の画家しかエントリーできないため、JBBYが国内選考会を実施して出展画家と作品を選んでいる。国際審査では、グランプリ1名、金のりんご5名、金牌5名が選ばれる。
1967年 瀬川康男『ふしぎなたけのこ』グランプリ受賞
1999年 中辻悦子『よるのようちえん』グランプリ受賞
2003年 出久根育『あめふらし』グランプリ受賞
金のりんご賞・金牌賞にも多くの日本人作家が選ばれていた。
2019年 プラティスラヴァ世界絵本原画展 金牌受賞 きくちちき
賞を受賞した絵本の中で紹介したい絵本として、きくちちきの『もみじのてがみ』を選んだ。
きくちちきは2013年のプラティスラヴァ世界絵本原画展でも『しろねこくろねこ』で金のりんご賞を受賞している。
同じチームのかこさんが『しろねこくろねこ』を紹介してくれた。
この絵本を選んだ理由は、「きくちちき絵本展 しろとくろ」の中で『もみじのてがみ』会場一面を赤色に染めた原画をみたからである。もみじの谷に入り込んだようだった。もみじの葉っぱが風に舞いだしそうで、落ちている葉っぱを手に取りたい衝動にかられるほどの世界だった。
この感動を多くの人にも味わってもらいたいと感じているからである。
この作品は絵本原画の部門で第7回JBBY賞(絵本原画部門)を受賞している。JBBY賞授賞式では「秋のもみじの美しさを小さな動物たちとみつける物語ですが、物語や絵だけではなく装丁にもとてもこだわってもみじを表現した作品になります。ぜひ手に取って肌触りやにおいも含め絵本全体で物語りを体感してもらえればと思います。以下略」とメッセージが送られていた。
きくち本人がこだわって表現したという『もみじのてがみ』の装丁は、カバー表紙はオレンジ色のざらっとした手触りの紙で作られている。カバー表紙を外すともみじの葉っぱを散りばめた表紙、裏表紙が現れるという全く違うもみじを表現した二重表紙の構成である。
きくちちきの作品は『もみじのてがみ』だけでなくカバー表紙と表紙の絵柄が異なる二重表紙の構成を用いた物が多い。
表紙をコーティングする図書館では、カバー表紙、表紙とふたつの絵柄をあ楽しんでもらうことはできず、図書館泣かせの作家さんだと感じている。
きくちちきと絵本の出会いは骨董市で運命の出合いであった。それは、100年前の絵本。フランスの画家、M.ブーテ・ド・モンヴェルが描いた処女作『Vieilles chansons et rondes』(邦題:むかしのシャンソンとロイド)であった。経年を感じさせないほど状態もよく、こだわり抜かれた美しい表紙を目にし「衝撃が走った」ときくちさんは話している。
また、自身の絵本を“100年越しの手紙”であって欲しいと願っている。今、絵本を手に取ってくれている人、そして100年後の誰かの心にも寄り添えるようにと願いを込めて作品を描き続けている。
第4回ゼミで紹介された賞
第4回のゼミでは国際的な賞だけでなく日本国内での賞の受賞作品も多く紹介されていた。
国際的な賞・・ニューベリー賞
日本国内の賞・・講談社絵本大賞・小学館児童出版文化賞・日本子どもの本研究会作品賞・など
・日本絵本大賞のように審査員によってえらばれる賞以外にも
剣淵絵本の里大賞・JPIC読書アドバイザー親子で読んでほしい絵本大賞・MOE絵本屋さん大賞のように読者がアンケートや投票などで選ぶことができる賞もあり、誰もが本を選ぶことができる楽しさから選ばれた本が身近に感じ、手にとってみたくなる賞だと感じた。
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