夢中我有(1)

一、G

いつからこうしているのかは忘れている。
ただ、いい匂いのする方に向かい、食べられるものがあれば食べる。
そして、危険を察知したなら全力で身を隠す。
それだけである。

いまも、食べ物を食べているところだ。
何なのかは分かりもしないが、ご馳走であることは間違いない。
無我夢中で食べている。

急に、明るくなった。
暗いところは安全である。明るいところには、身の置き所がない。
そう本能で感じる。
だからいま、危険を察知している。

自分はいま、襲われているようである。
身が削られているような感覚がある。
苦しい。息ができない。なぜこんなことになっているのか。
散々逃げ回った。とても苦しい。
近くに身を隠すところはない。もう逃げ場はない。

飛んだ。生まれて初めて、自分の意思で宙を舞った。
絶叫のような、凄い音を、身体で感じた。身体にものすごい衝撃が走る。

そのあと、感覚が無くなった。
すべての記憶も、薄れていった。
そうか、ひとつの命が失われたのか。

いいなと思ったら応援しよう!