30年目の始発駅ーFender Made in Japan Hybrid 60s Telecaster
私、生粋のギブソン使いだと思ってました。が、.近年はフェンダーのギターの方がしっくりくる。
少し語弊があるでしょうか。40も半ばを過ぎた今、シングルコイルの音の方が、あるいはローゲインの音の方がしっくりくることが多く感じられます。
ハムバッカーでがつん!というのも嫌いではないです。でも、シングルコイルの掠れるようなサステインが心地いいんです。
昔々、MoonやFender Mexicoのストラトを持っていたこともありましたが、その時はよくわかんなかったんですよね、シングルコイルの使い方。
昨年、Fenderの「Sixty-Six」というギターを手に入れてからシングルコイル観が変わりました。Sixty-Sixはダウンサイズしたジャズベースのボディにテレキャスターのピックアップが載っている、というなかなかの逸品です。フロントとミドルにシングルコイル(テレキャスターのフロント用のもの)が採用されているこのギターを練習用にずっと使い、シングルコイルの魅力にどっぷりとはまり込みました。
シングルコイルピックアップのよくも悪くもある点は、きちんと音を出さないときちんと拾ってくれないところ。強いアタックでは音はすぐに潰れ、弱すぎるタッチでは音にならない。シビアだけれど表現の幅がものすごく広いピックアップだと思っています。
そんな私が手に入れたくて、でもちょっと持つのが怖いギターがありました。
テレキャスターです。
「ギタリストたるもの、一度はテレキャスターを持つべきだ」。
そんな言い回しがあるとかないとか。
シンプルで、発売以来何十年も変わらないスタイル。名手がこぞって使うごまかしの効かないギター。そんなイメージが私のテレキャスター像です。
いつかは持ってみたいけれど、自分のアラが見えるのは嫌だなぁ…。そんな逡巡を楽器屋にぶら下がるテレキャスターの前で何度繰り返したでしょうか。
そんな思いを抱えた中、川崎の山野楽器でのこと。意を決してカスタムショップ製、61年仕様のテレキャスターを試奏しました。ぶっ飛びました。
ものすごく「いい音」が出るんです。何をやっても、どんな音でも音楽的にしてくれるというのでしょうか。ものすごく安心感のある音。クリーンでも、歪ませても、もう何でも来い。カッティングもリードもアルペジオも、びっくりするほど豊かな音楽になる。なんだよ、おっかなびっくり触ってみたけど、ものすごく使いやすいギターじゃないか。いやぁ、いいぞテレキャスター。
心底欲しいと思いましたが、いかんせん値段が高い(当時で40万円ほど。いまは定価があがっているのでどうなっていることやら)。
とりあえずこれを一つの指標にして、この方向性を持ったギターを探そうと決めました。
テレキャスター購入を決めた理由はもう一つあって、それはギターを弾いて30年が経ったこと。
プロを目指したこともありましたし、実際ギャラをいただく仕事もしたことがあります。けれど大成はしなかった。それでもギターを手放さなかった。
そんな自分へのちょっとしたご褒美でも、と思ったのです。
まず候補だったのはPlayer Telecaster。近隣の楽器店に行っては試してみましたが個体差が大きいのとコンディションの悪い楽器が多すぎたので候補からは外しました(山野楽器の調整はなかなか良かったですよ)。
予算は10万円くらい。そうなると、あとはFender Mexのvinteraや日本製のトラディショナル、ハイブリッドあたりが候補になります。
また、今後のメンテを考えてローズウッド指板は外せません(フレット交換がちょっと安くできる)。
そりゃー、メイプル指板のバタースコッチブロンドとかカッコイイのは知ってますよ。ええ。でも、ここはちょっと我慢。
で、出会いました。シャーウッドグリーンのアルダーボディにローズ指板。
ピックアップはUS製で、直列配線もできるから「なんちゃってハムバッカー」の音も出せる。それが今手元にあるMIJ Hybrid 60s Telecasterです。最初に試奏したとき、カスタムショップの61テレキャスターに一番ニュアンスが近い音が出たのを覚えています。しっかりした実音にかぶさるかすれ気味のオーバートーン。意外と伸びるサステイン。ピッキングに対してリニアに反応する感じ。どれもなかなかイイ感じです。
ただ、機種とカラーは決めたものの諸事情で時期を逃し、その間にHybrid IIが発表されたせいで市場からシャーウッドグリーンはいなくなりました。緑は不人気だからでしょうか…。
ちょっと本腰入れて探すこと数か月。
島村楽器にどうやら(ネット上では)最後の新品在庫があるのを発見。
横浜の島村楽器に行き、取り寄せが出来ないか相談しましたところ…やってきましたシャーウッドグリーン!
一応店の在庫にあったHybrid IIとも弾き比べてみましたが、やっぱり好みはグリーンのほう。Hybrid IIはピックアップが変わったせいか、パワーがありすぎる感じ。音の密度も高すぎて、なんだかテレキャスターっぽくない。トラスロッドのアクセスは断然Hybrid II(ヘッド側から調整できる)なんですけれど。
フレットの幅・高さやネックシェイプも両者は違うのですが、そこに関しては、個人的にはあまり気になりませんでした。「そういうもんなのね」で片づけられるレベルの差異。
決定的だったのはボディコンター。Hybrid IIはバックにストラトのようなコンターがあるのです。一本目のテレキャスターでここは妥協したくなかった。
…なんか書いていて自分で思いますが、ほんと、ギタリストってこまけーなぁ。
とまぁ、そんな感じで、このギターは手に入れてもうすぐ一年になります。
で、現在。
ほとんどストックのままですが、少しだけいじりました。
・ブリッジをGOTOH In-Tuneに。
・キャビティにノイズ処理。
・ボリュームについているハイパスコンデンサをシルバーマイカに。
下二つのモデファイは八王子のActivePGさんでお願いしました。
コンデンサは音を出しつつ付け替えをしながら選びました。
しっとり目なオイルコンデンサもよかったのですが、シルバーマイカのスッキリ感がテレキャスターにはあっていると思いまして。
ハイパスの乗っているギターをお持ちの方、コンデンサを変えると出音がちょっと変わるのでおススメですよ。
もう、ここまでやっておけば充分。
いずれトーンコンデンサも変えようと思っていますが、現状乗っているセラミックコンデンサでもなかなか悪くないです。
少しボリュームを絞って、トーンもほんの少し絞る。
サーキットを満遍なく使ったこの状態で、クランチ程度に歪ませたアンプで音を出すと、もう素晴らしい音です。
ずーっと3コードブルーズ弾いてられるくらい。
入手後半年くらいはネックが振動しすぎていいバランスではなかったのですが、最近はコンディションが安定してきました。これからはもっとボディが鳴るようになる感じがします。造りがしっかりしたギターは経年変化も楽しめるのがいいですよね。
どうでしょう、テレキャスター弾いてみたくなりましたか?
造りはシンプル、響きもストレートで、ギターのエッセンスが詰まったいい楽器ですよ。