【データ法】ePrivacy指令 ーGDPRの陰に隠れがちなもう一つのデータ保護法ー
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
気分転換にこちらの記事を書いたのですが、人様に見せる文章としてアウトプットすると、自分の知識の確認に役立つことに気づきました(笑)
味を占めたので、今回は、ePrivacy指令という、GDPRの陰に隠れてあまり知られていない、けれど、とても重要なデータ法について紹介します。
なお、法律事務所のニューズレターとは異なり、分かりやすさを重視して、正確性を犠牲にしているところがありますので、ご了承ください。
ePrivacy指令とは何か?
EUの「指令」です。EUの法令なので、正式名称はめっちゃ長いです。
「指令」とは、EUの立法府が、各加盟国に対して、一定の目的を達成するために法律の定立を求めるものです。つまり、ドイツ、フランスを始めとするEU加盟国は、ePrivacy指令に従って、各々法令を制定しているわけです。
イギリスでは、"PECR"。
イギリスも、EU加盟国であった時代にePrivacy指令に基づき法令を制定しており、それが、The Privacy and Electronic Communications Regulations、通称PECR(ペッカー)です。
そして、PECRは、現在もイギリス国内で有効な法令です。(詳しくは、上にリンクを貼っている「Retained EU Law」の記事をご覧ください!)
ePrivacy指令がカバーするエリアは?
さて、ePrivacy指令(*1)は何を規律するためのものなのでしょうか。
イギリスのデータ保護当局であるICOは、PECRのカバー領域について、次のように説明しています。
既によくまとまっていますが、あえて更にまとめると、ePrivacy指令は、①電子的なマーケティング、②Cookieの使用、③公共の通信、④位置情報などのプライバシーについて、規律をするものと言えそうです。
どういう時にePrivacy指令を意識すべきか?
上記のように、ePrivacy指令の守備範囲は、GDPRと重なりつつも微妙に異なります。法務担当の方が事業部の人から相談を受けた際に、EU(又はUK)が関与しており、かつ、データが絡んでいれば、GDPRはパッと頭に浮かぶと思います。しかし、ePrivacy指令の方は、忘れられがちです。
ePrivacy指令の適用に気を付けるべき場面として、以下の二つを挙げたいと思います。
① ダイレクトマーケティングを行うとき
顧客リストに基づく電子メールの送信は「個人データ」の「取扱い」に当たるため、GDPRが適用されます。そのため、第6条に基づき、顧客の同意を得たり、正当な利益(legitimate interest)に基づいたりしなければ、プロモーションは行えません。
もっとも、この点に関して、GDPRのリサイタル47の第7文は、次のように述べてます(太字はぼく)。
GDPRもこう言ってくれてるのだから、顧客の同意を得ずに、正当な利益に基づいてプロモーションを実施しようと考える人も多いはず。
しかし、これは罠です!!
ICOは、電子メールでのダイレクトマーケティングに関して、PECRが次のように適用されると述べています。
つまり、GDPR上は、顧客の同意が不要でも、ePrivacy指令上、顧客の同意が要求されることになります。したがって、GDPRのみを確認してプロモーションにGOサインを出してしまった場合、法令違反となってしまいます。
ただし、ePrivacy指令は、電子メールでのダイレクトマーケティングに限り、例外を定めています(太字はぼく)。
ここまで来ると細かい話なので、「ダイレクトマーケティングの話が出てきたら、ePrivacy指令にも気を付ける」とだけ頭に入れておけばOKかなと思っています。
② Cookieを使用する
ウェブサイトは、Cookieを使用することで、アクセスしたユーザーのデバイスを認識し、その嗜好や過去の行動に関する情報を保存することができます。ウェブサイトを運営する場合、ほぼ確実に使用しているのではないでしょうか。
GDPRでは、Cookieは個人データに当たると考えられていますので、その取扱いに際しては、第6条に基づき、ユーザーの同意を得たり、正当な利益に依拠したりしないといけません。
勘の鋭い方は、ここで気づくと思います.
GDPR上、ユーザーの同意が不要となり得るからといって、正当な利益に依拠するのは罠です!!
ePrivacy指令は、Cookieの使用に関して、ユーザーの同意を得なければならないと定めています。ユーザーの同意を得ずにCookieを使用してしまうと、ダイレクトマーケティングの事例と同様に、法令違反となる恐れがあるということです。
ePrivacy指令は、同意が必要とされない例外的な場面を定めているものの、「Cookieを使用するときはユーザーの同意が要る」と覚えておいた方がいいかもしれません。
まとめ
長くなってしまいました。まとめると、今回、ぼくがお伝えしたかったのは、次の二点です。
最後までお読み頂きありがとうございました。
【注釈】
*1 正確には、ePrivacy指令に基づくEU加盟国各国の法令、及び、英国のPECRということになりますが、読みやすさのため、これ以降は、単にePrivacy指令と呼んでいます。
免責事項:
このnoteは、ぼくの個人的な意見を述べるものであり、ぼくの所属先の意見を代表するものではありません。また、法律上その他のアドバイスを目的としたものでもありません。noteの作成・管理には配慮をしていますが、その内容に関する正確性および完全性については、保証いたしかねます。あらかじめご了承ください。
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