【データ法】UK E-Commerce Regulations 2002
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
本日は、英国の電子商取引に関する法令の一つである、Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002(通称「e-Commerce規則」)について紹介したいと思います。
なお、法律事務所のニューズレターとは異なり、分かりやすさを重視して、正確性を犠牲にしているところがありますので、ご了承ください。
Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002の概要
Retained EU Law
その名前から分かるとおり、e-Commerce規則は、英国がEU加盟国時代に、EUの指令(Directive)に基づき制定した法令であり、Retained EU Law(Assimilated Law)の一つです。
したがって、この記事は、英国の電子商取引規制の一つであるe-Commerce
規制を紹介するものですが、他のEU加盟国にも同様の実施法が制定されていると言えます。
EUにおける「指令」の意味やRetained EU Lawについては、こちらにまとめていますので、良ければどうぞ。
条文
こちらにリンクを貼っておきます。
趣旨・目的
e-Commerce規則のもととなったe-Commerce指令(*1)は、2000年に採択された法令です。当時の電子商取引の急速な拡大を受けて、このような取引形態を適切に規律しつつ、EU域内市場の調和と保つために、定立されました。
もっとも、20年前以上も前の法令であり、現在に至るまでに様々な関連法令が作られ、e-Commerce規則の一部の内容については、事実上、それらの関連法令に譲っているところもあります。
とはいえ、e-Commerce規則には基礎的な規定が置かれており、依然として、英国における電子商取引についての重要な法令であるといえます。
主要な定義
情報社会サービス
情報社会サービス(information society services)とは、「通常、有償で、遠隔地から、データの処理及び保存を行う電子装置を用いて、サービスの受領者の個別の要求に応じて提供されるサービス」と要約されます。
ソーシャルメディア、クラウドコンピューティング、ホスティングサービス、検索エンジン、オンラインマーケットプレイスなど、幅広いサービスが該当します。
e-Commerce規則が適用される事業者は、基本的に、情報社会サービスの提供者ですので、自らが情報社会サービスを提供しているか否かが、まず検討の出発点となります。
商業通信
商業通信(commercial communication)とは、次のように定義されます。
かなり長い定義ですが、趣旨としては、事業者の宣伝活動を幅広く捉えようとするものです。
WEBサイトへの表示事項(Reg. 6)
情報社会サービスの提供者は、次の情報を提供しなければなりません。
なお、⑤に類似する事項として、提供者が特定の専門職(弁護士など)に属しているときは、追加で提供が必要となります。
e-Commerce規則は、これらの表示方法について言及していませんが、英国政府は、WEBサイトに掲載することで、表示の要件を満たすと考えているようです。
商業通信の規律(Reg. 7)
情報社会サービスの提供者は、商業通信に関して、以下のことを確保しなければなりません。
①と②はビジネス上のコミュニケーションであれば自然に満たすことが通常かもしれませんが、ここで注意すべきは、③の販促オファーと④のコンペティションですね。
電子的手段によって契約が締結されるときに提供すべき情報(Reg. 9)
情報社会サービスの提供者は、電子的手段によって契約が締結される場合、相手方と異なる合意をしない限り、次の情報を提供する必要があります。
ただし、電子メール(またはこれに準ずる個別通信)の送受信のみによって締結された契約については、上記要求は適用されません。
このほかにも、自主規制・行動規範に関する情報の提示や、利用規約へのアクセスの提供も定められています。
注文の受付(Reg. 11)
情報社会サービスの提供者は、電子的手段を通じて注文を受ける場合、次の事項が確保されなければなりません。
ただし、電子メール(またはこれに準ずる個別通信)の送受信のみによって締結された契約については、上記要求は適用されません。
契約の解除(Reg. 15)
Reg. 16は、e-Commerce規則が適用される契約を締結し、かつ、提供者が注文前のエラー識別のための手段の提供(上記Reg. 11参照)をしていないときは、相手方(通常は、サービスの受領者)に契約解除権を付与しています。
仲介サービス提供者の免責(Reg. 17-22)
e-Commerce規則には、日本に言うプロバイダ責任制限法のような規定も置かれています。
具体的には、単なる導管(mere conduit)、キャッシュ、ホスティングのサービスを提供する仲介サービス提供者(intermediary service provider)が、ユーザーの通信に係る第三者への権利侵害等について、一定の要件を遵守しているかぎり、免責されるというものです。
ところで、単なる導管や仲介サービス提供者について、どこかで聞いた定義ではないでしょうか。実は、最近施行されたEU Degital Services Act(EU DSA)は、e-Commerce指令が規定していた仲介サービス提供者の免責に関する規定について、そっくりそのままEU「規則」として置き換えています。
EU DSAについては、こちらで解説しています。よければどうぞ!
まとめ
いかがだったでしょうか。
本日は、英国の電子商取引に関する法令の一つである、e-Commerce規則についてご紹介しました。
上記でも述べたとおり、EUでは、e-Commerce指令に加えてDSAが制定され、規制が強化されています。
英国は、既にEU法が適用される立場にはありませんが、以前ご紹介したOnline Safety Act 2023など含めて、デジタル市場への規制は英国でも活発です。引き続き、電子商取引の法改正にも注視していくべきかもしれません。
記事の終わり際に恐縮ですが、UK Online Safety Actの紹介はこちらです!
このエントリーが皆さまの参考となっていれば嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
【注釈】
*1 Directive 2000/31/EC of The European Parliament and of the Council of 8 June 2000
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