【英国LLM留学】イギリスのロースクールはどれぐらい忙しいのか?
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
ぼくは、2023年にキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のロースクールを修了しました(LL.M.)。
今回のテーマは、「イギリスのロースクールは、実際どのくらい忙しいのか?」です。
あくまでもぼくの個人的な体験に基づく話なので、客観性は疑わしいですが、できるだけリアルな生活をお伝えします!
はじめに:ぼくのスタンス
学校の忙しさは、結局のところ、学業にどれだけのリソースを費やすのかに左右されると思います。
その意味で、ロースクールの忙しさについてのぼくの意見は、ぼくのロースクールに対するスタンス次第なところもありますので、まずはその前提についてお話します。
修士論文(dissertation)は全力で頑張る
イギリスのロースクールを選んだ理由の一つに、修士論文を書きたかったというのがあります。
ぼくは日本の大学の法学部を卒業したのですが、卒論は必須ではなかったので書きませんでした。加えて、日本のロースクールにも通えておらず、試験に受かるための予備校的勉強は経験したものの、学術的興味を深める営みをしたことがありません。こういった事情から、アカデミックな環境で論文を書いてみたかったのです。
詳しくはこちらをご覧ください。
というわけで、修士論文の作成については、時間と労力を惜しまず、悔いの残らないものを書き上げるつもりでロースクールを過ごしました。
それ以外の科目については、英国弁護士試験の勉強を優先させる
修士論文以外のモジュールについては、サボるつもりはなかったものの、留学中に英国弁護士(ソリシター)の資格を取るという目標がありました。
ぼくのキャパシティだと二兎を追う者になってしまう可能性が高いと思っていたので、ロースクールの勉強もやりつつ、実際のところは、英国弁護士の試験勉強を優先していたように思います。
とはいえ、優(distinction)で卒業出来たら嬉しい
イギリスの大学院は、次のように成績をランク付けしています。
成績が良いに越したことはないですよね。
修士論文については、Distinctionを取るつもりで臨みましたが、総合評価でもDistinctionが取れたら最高だなと思い、日々過ごしていました。
じゃあ、具体的に何をどう頑張ったかと訊かれると、何とも言えないのが実情ですが(笑)
1年間の大まかなスケジュール
KCLのロースクールでは、次のように定められていました。
修士論文については、いくつかのマイルストーンが設定されています。
確か、Term 1の終わり頃までに、指導教官を見つけて論文のテーマについて承認をもらいます。Term 2の中頃に、修士論文の計画書を提出し、Term 2の試験が終わったぐらいのときに、2000 word以内で1章分を書いて提出しなければなりませんでした。
そのあとは、長い期間、Dissertationの作成に時間を作ることができます。
1週間のスケジュール(例)
続いて、1週間のスケジュールを見ていきます。
これは、Term 1のある週のぼくの予定です。
ぼくは、合計5つのモジュールを取っていました。
オレンジがLectureと言って、大教室での講義です。毎週決まったスロットで、1コマ2時間あります。
グリーンがSeminar(モジュールによってはTutorialと呼ぶことも。)で、少人数でのディスカッション中心の授業です。毎週行われるモジュールもあれば、隔週であったり不定期であります。
どのモジュールも、LectureとSeminarがワンセットになっています。この週は、国際仲裁と銀行法のSeminarがない週で、少し余裕があったように記憶しています。
一日のスケジュール
さらに細かく、一日をどんな感じで過ごしていたのか、Term 2のある日の一例を見ていきます。
午前10時 起床
授業前の朝に中途半端な空き時間があっても有効活用できないので、いつもギリギリまで寝ていました。この日は11時から講義あったので、10時起きました感じです。
午前11時~午後1時 Economic and Financial Crime (Lecture)
このモジュールは、5000 wordsのエッセイで評価が決まるタイプだったので、のんびり授業を聞いていました。ある程度内容が掴めたと思った時点で、午後4時からのSeminar(後述)の課題の内職を始めて、授業時間内に完成させます。
午後1時~午後2時 昼食
いつも一緒に授業を受けている友達何人かでKCLのランチホールに行きます。ただ、ぼくも含めて授業(特にLecture)の欠席率は高く、誰も知り合いと合わない日は、一人でどこかに食べに行くことも結構ありました。
午後2時~午後4時 International Financial Law (Lecture)
このモジュールはTerm 1とTerm 2の通年のものです。Term 2のテスト一発勝負の科目で、かつ、教科書なし・PPT配布無しだったので、必死に板書していました。
ただ、実はKCLは全てのLectureはビデオで録画されており、後から見直せる形式になっていました。この日は直後に別のSeminarがあったので出席しましたが、そうでない日のLectureは、家で録画を見ることの方が多かったです。同じような考えの人が多いのか、Term 2の後半は教室に人が全然いませんでした。
午後4時~午後5時 Economic and Financial Crime (Seminar)
この日は、経済・金融犯罪について、Lectureのみならず、Seminarもある日でした。事前に課題が配布されており、講師の人が適宜生徒を指名して答えさせるスタイルでした。
上に書いたとおり、1時間もあれば終わる課題なので、午前中の授業のうちに内職をしながら完成させていました。
Seminarでは、一つのコマで最低一回は発言することを自分ルールにしていました。ただ、そのノルマをクリアしたあとは、当てられないように存在を消そうと頑張っていたタイプでした(笑)
午後6時~午後9時 帰宅、家族で夕食、その他自由時間
ネットワーキングのイベントがあるときは出来るだけ参加するようにしていましたが、それでも週1であるか無いかぐらいでした。なので、通常は家に帰って家族と一緒に夕飯を食べて、子供をお風呂に入れるいつものルーティンをこなします。
子供を寝かしつけた後は、ネットニュースを見たり、しばらくだらだら過ごします。
午後9時~午後10時 翌日の授業のLeadingと課題を片付ける
一通りゆっくりした後は机に向かいます。
ロースクールでは、ほぼ全てのLectureで、予習のReadingが結構な分量で課されます。最初の方は全てちゃんと読み込んでいましたが、しばらくすると予習をさぼる日が増えてきます。
また、Seminarの場合には、事前に回答を準備しておかなければいけない課題が配布されますので、それにも対応する必要があります。
おそらく、真面目に取り組めば、3時間以上かかると思うものの、前述のとおり、英国弁護士試験の勉強の方が優先順位が高かったので、どんなに出来ていなくても1時間程度で切り上げていました。
午後10時~翌午前4時 英国弁護士試験の勉強
ロースクールの予習を片付けた後は、寝るまで英国弁護士試験の勉強をしていました。何時まで続けるかは翌日の最初の授業の開始時間次第で、この日は翌日午前12時からの授業だったので、その8時間前にあたる午前4時まで勉強しました。
結局、ロースクールの成績はどうだったのか?
「こんな感じでロースクールを過ごせば、こんな感じの成績になるよ」と言えるのが一番参考になると思うので、最終成績も紹介します。
ぼくの総合成績は、Merit(64点)でした!
、、、並の成績ですね(と言って大丈夫ですよね(笑))。
あと1点高ければ、Meritの中でも上のランクのHigh Meritでした、と言えたのが心残りです。
ちなみに、修士論文については無事、Distinction(74点)の評価を得て、最終的には落選したものの優秀論文にもノミネートされました!
ぼくの意見:並の成績で良いならロースクールはあまり忙しくない
最終成績がMeritでもOKということであれば、正直言ってロースクールはあまり忙しくありません。ぼくの場合は、英国弁護士試験の勉強が生活を圧迫していましたが、それを差し引いても、日本で働いているときよりも数段ゆとりのある生活が送れると思います。
Lectureの予習として出されるLeading Listは多いですが、全部を精読しなくても授業にはついていけます。また、Seminarの課題についても、第1問目さえ回答を準備しておけば、第2問以降は、実際に教室でディスカッションしていく中で、その場で回答を見繕うことが可能です。
KCL以外のロースクールはどうなの?
うーん、これは分かりません。
もしかしたら、他のロースクールはもっとスパルタなのかもしれません。
けど、他のロースクールに留学している人から話を聞いた印象では、どの学校もKCLとさほど変わらない緩さなんじゃないかなと感じています。
英国ロースクール留学では+αを見つけるべき
ロースクール以外の大学院に留学された方の体験記を読むと、皆さん課題が山盛りでとても忙しそうにされて、充実した日々を送られています。
残念ながら、(KCLの)ロースクールはそういう感じではありません。
もちろんDistinctionを取りたいのであればハードワークが必要ですが、そうでないのであれば、暇を持て余してしまうのではないかなと感じます。
ぼくは、英国弁護士試験の勉強があったおかげで、そんな事態には陥りませんでした。皆さまも、ネットワーキングでもいいですし、更なる語学力の向上でも良いと思うので、何か+αの要素を加えてみると、ロースクールでの生活がより有意義になるのではないかなと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
イギリスのロースクールへの留学を検討しているどなたかの参考になれば、とても嬉しいです。
このほかにも、イギリスのロースクール留学に関するアレコレを書いています。良ければご覧ください!
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