【英国LLM留学】Distinction(優)を取るのは難しいのか?
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
ぼくは、2023年にキングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のロースクールを修了しました(LL.M.)。
今回のテーマは、ロースクールの成績です。
海外の大学院を目指す方の多くは、学ぶことに高いモチベーションを持っていると思います。なので、自己の学びに対する客観的な評価である「成績」には多くの人がこだわるはずです。
また、弁護士の話に限れば、海外のローファームのWEBサイトで、所属弁護士のプロフィールを見ると、学歴のところで、XXX University (LL.M., Distinction)とアピールしていることがあります。
このDistinctionというのは、日本の大学の成績評価でいう「優」「A(A+)」に相当するものです。つまり、優秀な成績で卒業したということですね。
今日は、イギリスの大学院において、Distinctionを取ることがどれほどの難易度なのかを、ぼくがKCLで学んでいた際の具体的なデータとともに、見ていきたいと思います。
イギリス大学院の成績システム
以前に書いたかもしれませんが、イギリスの大学院における評価システムを改めて紹介します。
日本の大学の成績評価が頭にあると、70点って悪くないけど、特にすごく良くもない程度の認識です。しかし、イギリスの大学院の成績基準だと、「優」になるわけですね。
Distinctionは取りやすいの?取りにくいの?
定性的なコメントは、いくらでも言えると思うのですが、やはりデータで確認したいところです。
ここでは、Distinctionを取れる学生は、全受験者のうち何%なのか?ということに着目したいと思います。Distinctionの希少性ですね。
アメリカの名門MBAなどとは違い、イギリスのロースクールの入学審査はかなりアバウトです。しかし、それでも一応、学部時代の成績でスクリーニングされた人間が集まっているのであり、ある程度似た学力の人間の間で競争が起こります。
そうだとすれば、Distinctionが希少であれば取りにくい、そうでなければ取るのは易しいと言えるはずです。
KCLのデータを見てみよう
なんと、KCLのロースクールでは、各学生に仮名化されたCandidate Numberが割り当てられ、モジュール(科目)ごとに、受験者のスコア一覧表がポータルサイトにアップされます。その表を見れば、自分のスコアの立ち位置が分かるという仕組みです。
本来は、自分が取ったモジュールの一覧表しか見えないのですが、WhatsAppのKCL Law 22-23のグループで、色々な科目のスコアが共有されていたので、手に入った合計22科目の一覧表のデータを集計してみました。
それがこちら!
Exam Typeの行の記号の説明をすると、「ES」はエッセイの提出、「OB」は、Open Bookで持ち込み可の試験、「CB」は、Closed Bookで、持ち込み不可の試験により評価を行う科目であることを意味しています。
また、モジュールの中には、10%だけミニプレゼンテーションが評価の対象になっていたりするものもありましたが、そこは捨象しています。
なお、受験生の中には、何か事情があるのか、受験を次のタームに延期する人がいたり、未提出ゆえに0点を付けられている人もいますが、それらのデータは組み入れていません。人数としては、各モジュールに1、2名といったところでしょうか。
いかがでしょうか?
以下では、ぼくが感じたことを書いていきたいを思います。
スコアの分布は科目によってバラつきがある
例えば、モジュールAは、なんと63%もの受験者がDistinctionを取っています。さらに、Failはおろか、Passすら0名です。
他方で、モジュールCは、Distinctionは11.7%に止まり、2名ほど落第させています。モジュールDは、Meritに約70%の受験生がギュッと固まっていますね。
採点は、担当の教授が行っており、かなり属人的な要素に左右されていると言えるのではないでしょうか。
エッセイの方がDistinctionが取りやすいかもしれない
Distinctionを得た受験生の割合が高いのは、順にA、L、M、J、H、Qと続いていきます。このうち、H以外は、全てエッセイで評価が決まるモジュールです。
オープンブックであっても、テストは時間制限との戦いなので、自分の英語力の無さが露骨に足を引っ張ります。他方で、エッセイであれば、英語力不足を準備の時間を多く取ることでカバーできます。
ぼくの経験から言っても、ロースクールの圧倒的マジョリティである非ネイティブの学生にとっては、エッセイの方が良い評価を得やすいのではないかと思います。
教授の態度から採点の甘さを見抜くことはできない
上記のデータに載せたモジュールの中には、ぼくが実際に取っていたものも含まれます。
例えば、モジュールBの担当教授は、マジックサークルのパートナーからアカデミックに転身した人で、ゼミで予習不足の生徒がいた場合には、ガン詰めしてくるような厳しい人した。でも、テストの内容はとてもベーシックで、ふたを開けてみれば、Distinctionの大盤振る舞いをしており、Failもゼロ人です。
逆に、モジュールIの担当教授は、バレンシア出身の陽気でフレンドリーなナイスガイでしたが、テストの内容は一切フレンドリーではなく(笑)、6.3%の生徒にFailをつけて落第させています。
このように、普段の授業の様子からは、テストや採点への態度を測ることは現実的ではありません。もし、例年の成績の状況(Failの人はいたか等)を知りたいのであれば、第1回のイントロダクションの講義のときに思い切って聞いてみても良いかもしれません。
75点以上を取るのは難しい
Distinctionの割合は、一番低いモジュールCでも11.7%であり、10%を割りません。しかし、75点以上となるとその数はガクっと減ります。
どのモジュールを見ても、基本的に最高スコアが75点辺りなところを見ると、70点台後半を取るのは至難の業であることがうかがえます。そうなると、全科目の平均が75点以上の人がもしいれば、神ですね。
Common Grading Scaleにより、異なる大学・専攻の間で成績の比較が可能
日本の大学を卒業した者からすれば、同じ「優」でも、その価値は大学や専攻によって異なることは当たり前ですよね。ぼくの理解だと、日本の大学(学部)は、学生の成績を相対評価で付けているため、X大学A学部のGPA 3.5とY大学B学部のGPA 3.0の一体どちらがすごいのか、簡単に判断が付きません。
しかし、イギリスの大学は、Common Grading Scaleと呼ばれるスキームの下で、大学や専攻によらず、成績を比較することができるよう、設計されています。アバディーン大学のサイトが詳しいので、貼っておきます(なお、この大学では、merit = commendationですね。)
つまり、Common Grading Scaleに従えば、ICLの工学修士やLSEの経済学修士のPassよりも、KCLのLLMのMeritの方が凄いと言えることになります、、、本当でしょうか(笑)
ぼくには確かめるすべがないので、分かりません。でも、もし、Common Grading Schemeが適正に運用されているのであれば、この記事で載せた成績分布のデータは、他の大学・専攻に通う大学院生の方にも参考になるのでは、と思ったりします。そして、適正に運用されている前提で、次のまとめに入ることをお許しください!
まとめ
ぼくとしては、意外と、イギリスの大学院でDistinctionをとるチャンスがあるのでは?と思います。
もっとも、ぼくは、Merit(64点)でした、、。
ぼくは残念な結果に終わってしまいましたが、これからイギリスの大学院に通われる方は、ぜひDistinctionを目指して頂きたいです!
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。
イギリスの大学院への留学を検討しているどなたかの参考になれば、とても嬉しいです。
弁護士のイギリス留学に関するいろいろなことを書いています。
よければ、ぜひご覧ください!