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【英国LLM留学】CIPP/E受験記

こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。

イギリスに留学中の弁護士です。2023年にキングス・カレッジ・ロンドンのロースクール(LLM)を修了し、現在は現地の法律事務所に出向中です。

突然ですが、ぼくは、CIPP/Eです。
と、言われても、、となると思いますので、説明します。

CIPP/Eとは、Certified Information Professional / Europeの略称で、GDPRを始めとするヨーロッパ圏のデータ法に関する認証資格です。

ぼくは、2023年11月に、CIPP/Eの試験をパスして認証を得ました。
そこで、本日は、ぼくがCIPP/Eになるまでの道のりを書こうと思います。


CIPP/Eとは?

もう少し詳しく紹介します。

CIPP/Eは、IAPP(International Assosication of Privacy Professionals)が運営する認証資格です。

ヨーロッパでデータプライバシーに関わるならば必須とまでは言いませんが、意外と持っている人がいる印象です。

IAPPは、CIPP/Eのほかに、CIPP/US(米国)、CIPP/A(アジア)、CIPP/C(カナダ)があります。なお、CIPP/Aは、シンガポール、香港、インドのデータ保護法に関する認証資格で、日本は含まれていません。

そんなこともあり、CIPPシリーズは、日本ではマイナーな存在で、この資格を持っている人はあまり聞きません。弁護士の保有者となると、そこから更に減ります。

受験のきっかけ

ぼくはイギリスに来てから、SQE(英国弁護士試験)の勉強をずっと続けていたのですが、2023年の10月を過ぎたころ、ようやく英国弁護士の登録の目途が立ち、時間に余裕が出てきました。

ちょうどその頃、今の出向先の事務所での勤務が始まり、いくつかUK GDPRの案件に触れたところ、これまでロースクールで学んだGDPRの知識に抜けがあることに気づきました。授業だとどうしても重要な論点を深掘りすることが多いので、カバーできていない箇所がいくつかあったんですよね。

ロースクールの友人経由でCIPP/Eのことを知り、調べてみると、試験勉強への学習を通じて、GDPRに関する知識をまんべんなく習得できそうな内容でした。また、難易度(後述します)も厳しすぎず、余裕時間を活用して勉強するにはちょうどよさそうです。

こうして、いくつかの要素が重なり、2023年10月9日、CIPP/Eの受験を決意しました。

試験内容

概要は、こんな感じです。

試験時間:2.5時間
問題:4択問題×90問
形式:CBT(computer based test)

出題範囲は、以下のとおり。

出題範囲:
① 欧州データ保護体制の概要 4~10問
② GDPR等のデータ保護法 42問~69問
③ データ保護法の遵守 9問~18問

①は、例えば、欧州データ保護の歴史、EUの機関の機能、各データ保護法のマッピングに対する理解などが問われます。②はタイトルそのまま、GDPRなどの法令に関する問題ですね。他には、ePrivacy指令、LEDなども出題範囲に含まれます。③は、いわば②の応用編で、雇用関係、モニタリング、ダイレクトマーケティング、AIといったトピックを通じて、データ保護に関する分野横断的な知識を問う問題です。

合格基準は、300点以上だそうです。ただ、何を以ってこの点数なのかは、よく分かりません。IAPPの説明によれば、試験の得点は、問題の正答数のみに基づいており、問題の重みづけは無いとのことです。

巷の噂では、だいたい正答率60%がボーダーラインとのことです。5問に2問間違っても合格できると考えると、精神的なプレッシャーは少ない試験と言えそうですね。

必要となる勉強時間

難易度と学習時間はどうなんでしょう。

まず難易度ですが、先にCIPP/Eに受かっていたロースクールの友人は、「ちゃんと勉強したら、落ちない」と言っていました。他方で、ネットでは、頑張って勉強したのに一発目で受からなかったという人も見かけます。

既に受かっているぼくが言うのも後出しじゃんけん的で恐縮ですが、ぼくもロースクールの友人と同意見で、腰を据えて勉強すれば落ちない試験だと思っています。

次に、合格までの勉強時間ですが、IAPPは、こう説明しています。

Preparation makes all the difference. In general, we recommend that you train and study for a minimum of 30 hours. We want you to succeed.

How to Prepare (iapp.org)

うーん、30時間はちょっと短いような気が、、。

ぼくは、CIPP/Eの学習を始める時点で、既にロースクールでデータ法を勉強していたため、初学者の人より知識はあったはずですが、それでも30時間で受かったかと言われると、ちょっと自信がありません。

ぼくは、結局、毎日2時間の勉強を約1か月続けました。
だいたい60時間ぐらいを費やしたことになりますね。

受験方法・受験料

まずは、IAPPのウェブサイトで自分のアカウントを作ります。このサイト上で受験の申込みを行うと、Pearsonという試験センター業者の案内画面に飛ばされて、自分で予約を取って受けに行く仕組みです。

そのため、日本の資格試験みたいに日程が決まっているわけではなく、受験者が好きな日時を選べます。ぼくは、学習期間を1か月に設定したので、その希望時期に空いていたロンドン東部の試験センターを予約しました。

そして、受験料は$550です!
高いですね。FIeld FisherやCovingtonのデータ法弁護士たちが試験を監修しているということで、そこにお金が吸い込まれているのかもしれません。

なお、受験料とは別に、合格後、CIPP/Eを名乗るためには、登録料$250(2年分)が必要です。

勉強法とスケジュール

2023年10月9日:勉強開始

CIPP/Eの受験を決意し、IAPPのアカウントを取得し、受験料を支払うとともに、IAPPが出しているテキスト『European Data Protection 3rd Edn』の電子書籍バージョンを$75で買いました。

IAPPは、公式問題集を出しているのですが、90問しか収録されていないのに$55もするので、購入しませんでした。CIPP/Eの勉強で困ったのが、問題集の無さです。司法試験の時は、過去問を回しながら短答の知識を定着させていったのですが、その戦法が使えなかったため、最後まで不合格の不安が拭えないまま、本番に突入した記憶があります。

2023年10月10日~10月21日:テキストの読み込み

試験日から逆算して2週間前には、IAPPのテキストを1回読み終えようと思い、テキストの頁数を日数で割ったページだけ、毎日読み進めることにしました。

ロースクールでのGDPRの勉強は、授業のレジュメとC. Kuner教授のコンメンタールを使っており、教科書を読んだことはありませんでした。IAPPのテキストはあんまり評判良くないみたいですが、それでも、テキストを通読することで、GDPRを含むヨーロッパのデータ法を俯瞰できて理解が深まったと思っています。

2023年10月21日~11月3日:GDPRの読み込み&まとめノートの作成

ぼくは紙に書かないと覚えられないので、GDPRを読みながら、重要な箇所をノートにまとめていく作業をしました。

読んでいて理解が曖昧だと感じた場合には、IAPPのテキストやコンメンタールに立ち戻って、内容を確認したりもしました。

なお、CIPP/Eを受ける・受けないにかかわらず、GDPRに携わる方で、当時のぼくのように、まだ条文を素読したことが無い人がいれば、一度目を通しておかれると良いかなと思います。

テスト当日

ぼくは、2023年11月4日に、CIPP/Eの試験を受けました。

上でも書いたとおり、ロンドン東部の試験センターで、Stratfordの二つ前ぐらいの駅が最寄りでした。

写真を取っておけば良かったのですが、めっちゃボロくてビビりました。うまく伝わるか分かりませんが、東南アジアの振込詐欺のアジトみたいな雰囲気でした。

受付を済ませて、指定された席に座って、パソコンにIDと必要情報を入力、テストを始めます。特にひねった問題はなく、割とテキストに書いてあるところから問題が出されている印象でした。また、事例問題が何個かあって、一つの事例に対して、5問程度が問われるという形式になっていました。

折り返し地点の1時間25分ぐらいで、一度休憩タイムが入りますが、その時点で80/90問終わっていたので、休憩を取らずに一気に解きました。軽く見直しをして、「終了ボタン」を押します。

終わった直後の印象は、こんな感じです。

正答の自信あり:全問題の40~50%
正答だと思う:全問題の30~40%
正答の自信なし:全問題の10~20%

テスト結果

CIPP/Eの試験結果は、終了ボタンを押した後、すぐに出ます。
あまり覚えていませんが、「Pass」と小さい文字で表示されたように記憶しています。

帰りしなに、試験センターのお姉さんから、リザルトレポートの紙を貰いました。なお、このレポートは、あとからPDFでダウンロードすることも可能です。

ぼくの結果です!!

③の応用問題の点数が低くくて悲しかったです。①~③の問題数配分を考えると、全体の正答率としては、85~87%だと思います。

ぼくの知識の15%は誤りだと考えると、もっと研鑽を積まないといけないと思っています。

CIPP/Eの認証

テストに合格すると、CIPP/Eの認証を申請できます。次の日に申請して、翌日の2023年11月6日に、CertificateがPDFで届きました。

Certificateによれば、ぼくは2025年11月30日までは、CIPP/Eと名乗ることができます。これまで自分の資格のことを話す機会もなかったので、こうしてみなさんに、CIPP/Eを名乗ることが出来て嬉しいです(笑)

おわりに

いかがだったでしょうか。
今回は、ただ単にぼくがCIPP/Eに合格するまでを綴っただけなので、また機会があれば、実際CIPP/Eを取る価値はあるのか、というメリット・デメリットの話も書きたいと思います。

このエントリーがどなたかのお役に立てば、嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。


弁護士のイギリス留学に関するいろいろなことを書いています。
よければ、ぜひご覧ください!


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