【連載】都議会は変わったか~都議選から1年とこれから【蔵出し】

※この記事は2018年7月6日号から4回にわたる連載を〝蔵出し〟したものです。特に表記のない限り、日付や時系列は2018年当時のものあることを念頭に置いてお読みください。

 昨年の都議選から2018年7月2日で1年が過ぎ、23日で第20期都議会が丸1年を迎える。都議選では小池知事率いる都民ファが49議席を獲得して歴史的勝利を収めた。その後、無所属で当選した6人を加え、55人で最大会派を形成したが、新人議員の大量当選が特徴の一つだった。その数は39人で、2009年に当時の民主党が大勝した時よりも17人多い。他方、自民党は第3会派に転落。この1年間で「反小池」の姿勢を強め、野党化を鮮明にしている。「東京大改革」を掲げた都民ファは、都政を改革できているのか。4回にわたって検証する。

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(1)都政運営への影響/都民ファは脱皮できるか《2018年7月6日号》

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 「行政職員との距離感をつかめた1年だった」「議会に入ってすぐは、都政の取り組みに付いていくのがやっとだった」─。都議選から1年が経つ中、都民ファーストの会の新人議員が回顧する偽らざる声だ。

 同会派は大量の初当選議員とともに、政治未経験者が多いという特徴がある。区議や市議出身者もいるが、都政の経験がないことに変わりはない。また、ある都民ファ幹部は「都議で期数を重ねた議員も第1会派としての振る舞いに慣れていなかった面がある」と漏らす。

 こうした第1会派が主導する都議会の影響は当然、都政運営にも及ぶ。

 各定例都議会で都職員の多くは異口同音に議会での質問水準の低さを感じたと話す。「質問が小粒」「会派の控室でやり取りするレベル」との声まで聞こえた。他方、他会派の都議からは「議会の質が落ちた」「『そんな聞き方するか』と思う時がある。事前の職員とのやり取りで負けているのでは」との声が漏れる。

 ただ、都民ファもこの状況は「想定内」だ。同会派は常任委員会ごとに部会を設置して政策論議を深めているが、同会派幹部の一人は「未経験のままやりたいことに取り掛かっても、まとまらない。まずこの1年間は部会に専念するよう求めた」と話し、公約達成に向けた土台作りに努めたと振り返る。また、法律や金融など前職の経験を生かし、都政に新たな視点を加える1期生がいるのも事実だ。

 だが一方、都民ファとの議会前の調整で戸惑いを見せる職員は少なくない。

 「議会質問の責任主体が不明瞭。調整してきた質問が反映されない上、最後の段階でいきなり質問が変わることもある」。ある中堅職員はこう明かす。他の職員は「会派役員とそれ以外の人が分断している。各議員が役員の動きを把握しておらず、各議員や部会、役員などに重複して説明しないと進まないことがある。職員が会派内の情報をつないでいる印象だ」とも話す。

 同会派の幹部は「何を上に報告すれば良いか判断がつかないことがあるのだろう。ケースを積み上げていくしかない」とおもんぱかるが、都政の生産性を削ぎ、質問の質に跳ね返る一因ともなる。更には都の狙いを聞くことなく、一足飛びに「○○条例を作りたい」などと話す1期生もおり、ある都職員はこう語る。「ドラえもんのレベル。タケコプターのように『こんなのあったらいいな』という話で、具体策がない」

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