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【特集】未曽有のコロナ危機 翻弄された半年間【まとめ読み】

《2020年8月7日号掲載》

 新型コロナウイルス感染症で、都が本格的に対応を始めてから、半年が経過した。緊急事態宣言を経て、都は飲食店に対し、再度、時短営業を要請。経済的に厳しい局面が続く一方、感染拡大に歯止めがかかっていない。今後は第2波が警戒されるほか、秋冬のインフルエンザ流行にも備えが欠かせなくなってきている。新型コロナの対応に疲弊した半年間を振り返る。

検証 新型コロナ対応/未知のウイルスに試行錯誤/感染症対応に都庁が疲弊

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アラート運用で不信

 「その瞬間で(数字に)一喜一憂してどうするのか」。都知事選を前にした6月下旬、都庁内で「東京アラート」が議論になった。感染状況が一定の基準を超過した場合に都庁舎とレインボーブリッジを赤く染めて都民に警戒を促す仕組みで、都の新型コロナ対策の試行錯誤ぶりを象徴していた。

 都が独自に「東京アラート」を発令する方針を発表したのは、5月15日のこと。休業要請の緩和に向けたロードマップの骨格として「新規陽性者数が1日20人未満」など三つの指標を独自に定め、アラート発令の基準と併せて発表した。

 内容は専門家を交えながら議論を重ね、都民に警戒を呼び掛ける方向性まではよかったが、小池知事が都知事選の出馬表明に合わせるような形で6月11日、「東京アラート」を消灯してしまう。アラートを発令する一方で、休業要請緩和の「ステップ」を進めるなど、運用の仕方には疑問も多く、都の対応に不信感が強まった。

 折しも政府が緊急事態宣言を出して以降、特定の業種に休業要請を行っており、都としてもどのタイミングで経済活動を元に戻すかが問われた時期。ただ、「指標」となるものがなかった。当時は大阪府の吉村洋文知事が5月5日、独自の出口戦略を示すなど存在感を高めており、複数の幹部が「小池知事は間違いなく、吉村知事を意識していた」「無理をしてでもロードマップ作成の作業を急がせた」と証言する。

 やがて庁内でも「いつまでこんなゲームのようなことを続けるのか」という疑問の声が強まり、それが数値の撤廃につながる。都は7月1日、従来のモニタリング指標を修正し、感染状況と医療体制を4段階で評価する形に変更した。

フリップ芸

 都庁が最初に新型コロナ対策に直面したのは、1月末だった。

 感染源だった中国・武漢市から、在留邦人を乗せたチャーター機2便が同30日までに羽田空港に到着。発熱やせきなどの症状がみられた人たちを公社荏原病院(大田区)などが受け入れた。

 都幹部によると、小池知事はこの頃から既に「全力でやらないと駄目だ」という方針ははっきりと持っていたという。局長級幹部の一人は「こちらの方が静観していたくらいで、組織が後で追い付いた」と認める。もちろん、小池知事が7月の都知事選に照準を合わせていたというのは多数の幹部の共通認識だったが、動機はどうあれ、コロナの深刻さを敏感に察知していたのも、知事だったと言える。

 都庁の動きでターニングポイントになったのは3月25日だ。

 テレビカメラに向けられたフリップには、「感染爆発重大局面」とあった。「今週になり、オーバーシュートの懸念がさらに高まっている。感染爆発の重大局面と捉えていただきたい」。法的に不可能な「ロックダウン」という表現も持ち出して、警戒を呼び掛けた。安倍首相とIOCとの会談を通して五輪の延期が決まった直後というタイミングも憶測を呼んだが、確かに感染者数の増加が顕著に見え始めたのもこの頃で、政府は4月7日、7都府県に緊急事態宣言を発令。都庁内の危機意識も高まった。

 知事のアナウンスはその後も続く。「NO!!3密」「東京アラート」「ウィズコロナ」─。5月のゴールデンウィークを前に「いのちを守るSTAY HOME週間~STAY HOME、SAVE LIVES~」との標語もひねり出し、「フリップ芸」「言葉遊び」とも揶揄された。有名ユーチューバーや感染症の専門医を交えて動画を配信し、庁内では「知事は本業のキャスター業に忙しくしている」とささやかれた。

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