幻の鶏⁉“土佐ジロー”とはどんな鶏か。
1. 土佐ジローとは?
高知県は全国的にも「鶏王国」と呼ばれ、日本に生息する在来鶏34種のうち8種が高知県産です。
高知では鶏に対して日頃から強い思い入れを持ち、観賞用だけでなく畜産用としての鶏の開発も進めてきました。
高知県畜産試験場では「どこの地鶏にも負けない鶏を作ろう」という思いのもと、約14年をかけて土佐地鶏(雄)とロードアイランドレッド種(雌)を交配させ、1987年に全国初の卵肉兼用地鶏として土佐ジローが誕生しました。
土佐ジローの名称は、親鶏である土佐地鶏の「ジ」とロードアイランドレッドの「ロー」を組み合わせて名付けられました。
飼養管理は「土佐ジロー飼養マニュアル」に基づき、緑餌の給与や放し飼いが必須条件となっています。
また、土佐ジローと呼ばれるのは第一世代(F1)のみで、その子孫は土佐ジローとして認められません。
次世代には受け継がれないという点が、他の地鶏ブランドとは異なる最大の特徴です。
2. 土佐ジローの卵の特徴
Ⅰ.味の濃厚さ
土佐ジローの卵は、通常の鶏卵と比べて黄身の割合が大きく、コクと甘みが際立ちます。黄身の質感はなめらかで、舌に絡みつくような濃厚さが特徴です。
Ⅱ.栄養価の高さ
土佐ジローの卵は、通常の卵に比べて、血行促進作用のあるビタミンEが約2倍、美肌効果のあるレチノール当量が約1.7倍多く含まれています。
Ⅲ.香りの違い
生臭さが少なく、卵本来の自然な香りを感じます。卵かけご飯などで生食すると、その風味の良さがいっそう際立ちます。
3. 土佐地鶏(とさぢどり)とは?
土佐ジローのルーツをたどるには、その父親である土佐地鶏について理解する必要があります。
土佐地鶏は、鶏(ニワトリ)の祖先である“セキショクヤケイ”の原始的な特徴を持つニワトリです。
昭和16年に天然記念物に指定された日本在来の地鶏であり、成鶏でも体重が約1kg程度と小型の鶏です。
4. 高知と鶏の関係
高知県は温暖な気候が鶏の飼育に適した土地で、古くから鶏の飼育が盛んでした。
在来鶏の多様性が豊富で、尾長鶏(オナガドリ)などの鑑賞用の鶏も多く残されています。
また、歴史的に闘鶏文化があり、古くは戦国時代の武士たちが闘鶏を好み、それが庶民へも広がったと考えられています。
小ネタですが、闘鶏で有名な軍鶏(シャモ)。
坂本龍馬はシャモ鍋が好物だったことで有名です。
高知県では伝統的な品種を大切にする県民性が鶏の血統を守ってきました。土佐地鶏は、その中の一つとして長い年月をかけて受け継がれてきました。
5. セキショクヤケイとは?
では、土佐地鶏のさらに祖先にあたるセキショクヤケイ(赤色野鶏)とはどのような鳥なのでしょうか。
セキショクヤケイはニワトリの祖先とされる野生の鳥で、東南アジアから南アジアの森林地帯に広く分布しています。
家禽化の歴史は複雑で、食料源としてだけでなく、宗教的儀式や娯楽など、多様な目的で人間と関わってきました。
この家禽化は、約8,000~9,000年前に現在のタイ周辺で始まったと考えられており、そこから人間によって運ばれ、広範囲に広がっていったとされています。
日本へは平安時代に渡来したとする説や、弥生時代に伝来したとする説など諸説ありますが、当初は食用ではなく観賞用として扱われていた可能性が高いと考えられています。
たとえば、奈良県の弥生時代の集落遺跡である唐子・鍵(からこ・かぎ)遺跡などで発見されたニワトリの骨は、ほとんどがオスの骨でした。
これは肉や卵のためではなく、時告げや鑑賞鶏として珍重されていたと推測されています。
6. おわりに
土佐地鶏は、このセキショクヤケイの原始的・古代的形質を色濃く受け継ぎ、日本で最も野生種に近い在来鶏といわれています。
つまり、土佐地鶏の子、第一世代(F1)である土佐ジローは日本一原種に近い卵肉兼用鶏です。
高知の文化の中で育まれながら古代的形質を長期間保持し続けてきた、まさに「幻の鶏」です。
土佐ジローは単なる食材ではなく、高知の歴史と誇りを背負った特別な存在なのです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
とさやま養鶏場では、こだわりの土佐ジローの卵をオンラインショップで販売しています。
もしご興味がございましたら、ぜひ一度ご賞味ください。