(2)取材対象

 船長の要求は、何でも良いよ。他人が読んでなるほどなぁと感ずるものを書いて来な。というものでした。何でも良いと言われても、どんな小冊子か誰が読んでいるのかもわからない。困っていると、

文化的なこと、そうだな、演劇なんかどうだ。評論は要らない。事実を書いてくれ。

今でも知識は浅い自分だが、地方から出てきて少ししか経っていない田舎者である私に、文化的なことなど書けそうにもなかった。まして評論する力などそもそもあるはずもない。しかし、金を稼がなければご飯が食べられない。恐る恐る切り出してみた。

「あのぉ、住んでいた学寮の寮食堂の半分を仕切って、そこが小劇場になっているんです。寮は学生の委員会が自主管理しているので、劇団への貸出も自分たちがやるんです。学生劇団を回って取材するというのはいかがでしょう」

ふーむ。それ良いじゃないか。必ず写真を添えるんだぞ。

こうしてライターの真似事は始まりました。

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