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俳句や短歌

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#歳時記

鑑賞*うなぎ屋のうの字だらりと灼けゐたり

鑑賞*うなぎ屋のうの字だらりと灼けゐたり

釈求真

2023年6月23日発行「句具ネプリVol.10 夏至」所収

うなぎ屋の暖簾や看板の「うなぎ」の文字。
崩し字で「う」の字がうなぎの絵になっている。
鮮度の良さを訴えるように、勢いよく長く描かれている。
さすがにこの日ばかりは、強い日差しでぐったりしてるようだ。

(岡田 耕)

歳時記を旅する33〔飾売〕後*青藁の香り積み上げ飾売

歳時記を旅する33〔飾売〕後*青藁の香り積み上げ飾売

磯村 光生

(平成八年作、『花扇』)

 東京の年の市は、十四・十五日の深川八幡から、二十五・二十六日の麹町平河天神までが六大市と称された。

「二十八日は薬研堀の年の市。夜になると両国の両側にはお飾りを売る店が軒を並べて、大根締め、輪飾り、締め飾り、橙子、本俵、譲葉、昆布、串柿まで並んでいる。刺子を着て向鉢巻をした若い衆が『市ちゃまけた』と呶鳴りながら、お客を呼んでいる。横町の角では伊勢海老ば

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鑑賞*着膨れて半熟卵のよう心

鑑賞*着膨れて半熟卵のよう心

さとうえいこ

ゆで卵にたとえるなら、コートが殻、セーター、シャツ、下着などが白身。
そして生身の体が黄身なのだろう。
何かに守られていたい体から、弱い心が溶けだしてしまいそう。
だけどそれはきっと温かい。

(岡田 耕)

鑑賞*ボロ市や双手に提げて嵩張る荷

鑑賞*ボロ市や双手に提げて嵩張る荷

山本御代

句集『ボロ市』所収。

ただでさえ多くの人でごった返す世田谷ボロ市。
狭い路地を通り抜けるだけでも一苦労。
そこを骨董品やら、古着やら、雑貨やら、植木やらの戦利品を携えて歩く。
双手いっぱいの満足感、いやまだ戦闘態勢であるのかも。

(岡田 耕)

選評*裘着て泣きにゆく映画館

選評*裘着て泣きにゆく映画館

【スキ御礼】「選評*待人の来ると神籤に帰り花」

☆「裘」とは、獣類の毛皮で作った衣服のこと。理子 さんが「裘」が使われている四字熟語を音声付きで説明されています。ご紹介します。

(岡田 耕)

歳時記を旅する33〔飾売〕前*銀行の鉄扉のまへの飾売

歳時記を旅する33〔飾売〕前*銀行の鉄扉のまへの飾売

土生 重次
(昭和五十四年作、『歴巡』)

 大森貝塚を発見したE・S・モースが記した滞在日記に、正月飾りなどを売る年の市の風景(明治十一年)がある。

「今月(十二月)は、各所の寺院の近くで、市がひらかれる。売買される品は、新年用の藁製家庭装飾品、家の中で祭る祠、子供の玩具等である。大きな市はすでに終り、今や小さい市が、東京中いたる所で開かれる。このような野外市につどい集る人の数には驚いてしまう

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鑑賞*目も鼻もまだ無きこけし辛夷咲く

鑑賞*目も鼻もまだ無きこけし辛夷咲く

磯村光生

こけしは東北地方の農閑期の副業として生まれた産業。

辛夷は、秋田県では田打ち桜と呼ばれて、田畑を耕す時期を知らせる農候。

長いと思っていた冬にこけし作りに励んでいたら、もう家の外に出よとの知らせが来た。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』平成二十八年九月号)

第17回恋の俳句大賞入選しました

第17回恋の俳句大賞入選しました

きごさいの恋の俳句大賞に投句した中の一句が長谷川櫂、村松二本両氏の入選を頂きました。

夏シヤツの濡れて意外な筋肉質 田中目八

ありがとうございました。次は大賞を獲ります。

https://kigosai.sub.jp/bs/?p=31912

同時に応募した他の句は以下。

ひとこへど恋愛はせず風爽か

吾に惚れぬひとが好きなり木の芽和

肩組んで汗の香りがひとつになる

鑑賞*戦争に人は憑かるる秋の蠅

鑑賞*戦争に人は憑かるる秋の蠅

高﨑 公久
句集『青』(令和四年)所収。作者は昭和五十三年に「蘭」に入会。野澤節子・きくちつねこに師事。平成二十八年「蘭」主宰継承。句は、平成二十二年~二十五年の作。

人は、自我を脅すものに攻撃を向ける。

集団でも、その理想や主義を脅かすものに攻撃を向ける。

攻撃で自我が拡大する興奮は止められなくなる。

無用な殺戮をする動物は人間だけ。

秋の蠅、叩くのは止めておこうと思う。

(岡田 耕

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歳時記を旅する 6 〔曼珠沙華〕後*曼珠沙華かつて一揆の果てし丘

歳時記を旅する 6 〔曼珠沙華〕後*曼珠沙華かつて一揆の果てし丘

磯村 光生
                      (平成十年作、『花扇』)

「彼岸花の花はどんなに咲こうがどれ一つとして実を結ぶものはない。球根の分球によってのみ増殖する。(略)畦道という畦道を埋め尽くすように咲くその花は、わざわざ人が植えたからであり、必ずしもねずみなどの害を防ぐ為ばかりではなかったであろう。」(『鎌倉 花の四季』磯村光生) 

句の丘は、たとえ人里離れていても、かつてそ

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鑑賞*秋澄むや波は地球の音を立て

鑑賞*秋澄むや波は地球の音を立て

 石塚 光子

地球そのものの音には何があるだろう。

火、電気、風、そして水だろう。

太古、生命は海の中の単細胞の生物から始まったという。

秋の浜辺に立てば、空と大地と海、そして自分がいる。

波音は、自分と地球とをつなぐ音。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年一月号)

鑑賞*腹ばひに西鶴を読む雨月かな

鑑賞*腹ばひに西鶴を読む雨月かな

加瀬 みづき

52歳で世を去った西鶴の辞世の句「浮世の月見過しにけり末二年」。

余りある人生五十年の満足と、さらに二年も月を見たという感謝。

名月が見えない寂しい夜。

今、こうして楽しく過ごせるのは、西鶴様の人生のお蔭。

(岡田   耕)

歳時記を旅する17〔蜩〕後*蜩やゆの一文字の露天風呂

歳時記を旅する17〔蜩〕後*蜩やゆの一文字の露天風呂

 磯村 光生
(平成八年作、『花扇』)

 江戸時代後期の文化八年(一八一一年)に記された『七湯の枝折』は、箱根七湯の風景や名所・旧跡を絵入りで紹介する。
その「底倉全圖」には、湯宿の番頭らしき男が、紺の暖簾を下げた玄関で、三人の旅人を迎える姿が描かれている。

蜩の声によく似た声にかじか蛙がある。
『七湯の枝折』にも、かじか蛙を「声面白くしてひぐらしの啼に似たり」と紹介する。

底倉温泉のつたや

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鑑賞*秋灯下大歳時記を二つ割り

鑑賞*秋灯下大歳時記を二つ割り

今瀬 剛一

句集『甚六』(令和二年)所収。作者は、昭和四十六年「沖」創刊と共に参加、能村登四郎に師事。昭和六十二年「対岸」創刊主宰。

秋の夜も更けて、いよいよ作句に身が入るところ。薪を割るような潔さがある。
「カラー図説 日本大歳時記 座右版」(昭和五十八年 講談社版)は、厚さ七センチほど。
百三十名に及ぶ執筆者の中に、作者の名もある。

(岡田 耕)