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俳句や短歌

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2022年9月の記事一覧

歳時記を旅する 18 〔萩〕後*吾子眠れほろほろ萩のこぼるるよ

*「歳時記を旅する18〔萩〕前*初萩の…」「歳時記を旅する18〔萩〕中*道問へば屋号で示し萩の道」からの続きです。
*既投稿の記事を分割して再投稿しています。

磯村 光生
    (平成三年以前作、『花扇』)
 
五月七日(陽暦六月二十三日)、芭蕉と曽良は、画工の加右衛門の案内で、宮城野など、仙台周辺を遊覧する。

『おくのほそ道』にも「宮城野の萩茂りあひて、秋の気色思ひやらるゝ」と、花咲く時期

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鑑賞*戦争に人は憑かるる秋の蠅

鑑賞*戦争に人は憑かるる秋の蠅

高﨑 公久
句集『青』(令和四年)所収。作者は昭和五十三年に「蘭」に入会。野澤節子・きくちつねこに師事。平成二十八年「蘭」主宰継承。句は、平成二十二年~二十五年の作。

人は、自我を脅すものに攻撃を向ける。

集団でも、その理想や主義を脅かすものに攻撃を向ける。

攻撃で自我が拡大する興奮は止められなくなる。

無用な殺戮をする動物は人間だけ。

秋の蠅、叩くのは止めておこうと思う。

(岡田 耕

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鑑賞*腹ばひに西鶴を読む雨月かな

鑑賞*腹ばひに西鶴を読む雨月かな

加瀬 みづき

52歳で世を去った西鶴の辞世の句「浮世の月見過しにけり末二年」。

余りある人生五十年の満足と、さらに二年も月を見たという感謝。

名月が見えない寂しい夜。

今、こうして楽しく過ごせるのは、西鶴様の人生のお蔭。

(岡田   耕)

句集紹介 高﨑公久『青』 

句集紹介 高﨑公久『青』 

高﨑公久『青』
令和四年 文學の森

 俳誌「蘭」は昭和四十六年の創刊。
作者は、平成二十八年より「屠蘇酌みて今年これより一誌負ふ」と主宰継承。
師系は「林火忌や潮流青を深めつつ」という大野林火。
福島県いわき市の出身で、野澤節子・きくちつねこに師事し、「牡丹供養赤炎青炎は二人の師」と須賀川で有名な牡丹供養を詠む。
東日本大震災の年次の句も収録されているが、「想いの十分の一も表現できていない句を載

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歳時記を旅する 18 〔萩〕前*初萩に小声の雨の夜も降り

歳時記を旅する 18 〔萩〕前*初萩に小声の雨の夜も降り

  土生 重次
    (昭和五十三年作、『歴巡』)
 
元禄二年(一六八九)五月四日(陽暦六月二十日)、仙台に着いた芭蕉一行は繁華街の国分町に泊まる。一昨日からの雨は少し止んだ。

仙台は萩で知られる歌枕の宮城野の地。
 萩の花の風情について、芭蕉に入門した森川許六は、「萩はやさしき花也。さして手にとりて愛すべき姿は少なけれど、萩といえる名目にて、人の心を動かし侍る。」と評している(「百花譜」『

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鑑賞*猫じやらし踏んで工事の始まりぬ

渡辺 照子

草っ原に猫じゃらしが生えていると見る人がいれば、建築工事をする更地としか見ない人もいる。

人が違えば見え方も違うもの。

猫じゃらしの名は、子犬の尾の意味の狗尾草というが、欧米では狐の尾(foxtail)と見るという。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和三年十二月号)