「金欠ボーイズ 笑いごとじゃない」4話
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【4話 12万の安眠枕を売りつけた女】
宇田川は気分良さげに笑いながら下手に去っていく。
平山と我孫子は困り果てる。相手を見るが、目が合うとすぐにそっぽを
向く。
平山 どうするつもりだ。
我孫子 関係ないだろ。お前はあのバカ女にでも頼ってろ。
平山 だから彼女は関係ない。
我孫子 大ありだ。あの女がライブに来ると調子が狂うんだよ。一人だけズレたところでぶひぶひ、ブタみたいに笑いやがって。
平山 彼女には彼女のセンスがあるんだ。
我孫子 お前に12万もする安眠枕を売りつけた女だろうが。新宿の路上で。
平山 それがおれたちの出会いだ。
我孫子 キャッチセールスっていうんだよ! しかも、12万もして全然効き目がない。
平山 ……どこにやったかと思ってたが、お前のところか。
我孫子 あんなものによく12万も払ったな。
平山 払ってない。
我孫子 むしろ寝心地……、払ってない?
平山 定価は12万だけど、お茶に付き合ってくれたら11万でいいって。
我孫子 お茶に付き合ったら?
平山 ご飯に付き合ってくれたら10万でいいって。デートしてくれたら8万。それから○○(もごもご)してくれたら4万って。
我孫子 何?
平山 ○○(むにゃむにゃ)してくれたら4万……。
我孫子 お前……。
平山 誤解するなよ。
我孫子 しようがないだろうが! まさか、そのままずるずる……。
平山 ……二万円の条件も聞くか?
我孫子 聞きたくない! お前、もう一度あの女をよく見た方がいいぞ。ありゃ人の皮をかぶったゾウアザラシだぞ……。
平山 見てない。
我孫子 昔、江ノ島水族館であの女とそっくりの……、見てない?
平山 おれ、想像の世界に住んでるから。
我孫子 住むな! 現実に住め! お前がどうなろうと知ったこっちゃないがな。とにかく、部屋を借り続けるなら壁の穴のことは考えなくてもいい。家賃のことはお互い自分で切り抜ける。いいな?
そこへ喜多見まい子が登場。
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