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Google Pixel展 2023.4.25-30

別所さんから連絡をいただいたのは2022年の12月だったと思う。
グループ展に参加しませんか?というお話で、記憶にあるのは「壁」というテーマ、Google Pixel 7 Proを用いるという条件でした。

この辺りはどうにも曖昧な記憶しかないのだけれど、とにかく出展させて頂きたいと返信をしました。GO BEYONDというWebで展開された写真展に感銘を覚え、Google Pixel 6 Proを購入していたこともあったのだけれど、「壁」というテーマがとても魅力的に思えたのです。

別所さん、と書いてしまったけれど別所隆弘氏は優れたフォトグラファーであると同時に本職の文学研究者。僕にとってこれほど憧憬の念を抱く人物は多くない。
氏に作品を預けるということは、この上ない僥倖でありと同時に主題の解釈から作品のディテールまで僅かな綻びも即座に見抜かれるという緊張感を伴うものでもあったのです。おかしな例えではあるのだけれど、先生に春休みの課題を提出するのはこんな気持ちなのかなとも思いました。何より僕にNFTを教え、機会を下さったのが他でもない別所隆弘氏であったことから、NFT作品で出展することを決めました。※これがNFTをプリントしないという方針を今回限り例外とした理由です。

"Torus" †Bone by Pixel 、 "Torus" †Market by Pixel と題した二つの作品は、このとき取り組んでいた"Torus"シリーズの主題、ブロックチェーンに対する視覚的解釈の実験、価値と意味の連鎖、交換可能な非対称性についての考察に「壁」を加えることで生まれました。作品の体裁はGoogle Pixel 7 Pro のデフォルトのアスペクト比3:4に設定、薄い(3mm厚)アクリルマウントにすることでスマートフォンの画面を想起させることを決めました。作品については以下の作品解説を記します。

Torus 01
"Torus" †ship #1

この作品は全てGoogle Pixel 7 Proで撮影した写真で構成されています。
現代では写真はテキスト同様に誰もが用いる記号表現になりました。
それはスマートフォンというツールによって今後ますます進化していくでしょう。
つまりこの“Pixel”コレクションのテーマは「写真によって書かれたテキスト」です。
  
私は様々な機器を用いて作品制作を行います。
その多くは、それぞれに異なる特性を持った撮影機材によるものですが、
数週間の試用によりGoogle Pixel 7 Proはこれらの専用の機材と遜色のないポテンシャルを持っていることが明らかでした。
その為"Torus"と名付けた作品群(ブロックチェーンに対する視覚的解釈、価値と意味の連鎖、交換可能な非対称性についてのシリーズ)の一つとして位置付け、クオリティにおいて一切の妥協のない作品を実現することができたと考えております。
  
本作では主題となる「壁」を伝達という機能を有した構造壁として解釈を試みました。
「壁」は隔て、遮るものとして語られる。
しかし同時に、おそらくは本来の機能とは別にメディウムとして「言葉」「図画」などを伝え、ときには象徴にもなった。
これらの例はベルリンの壁、ロスコーの壁画、嘆きの壁など枚挙に遑がない。
そしてコロナという疫病に翻弄された期間、様々な壁ができた。
行動が制限される中、あらゆる工夫とツールを用い対面することなくコミュニュケーションを維持する術が検討された。
世界中がコミュニュケーションについて考え直したと言ってもいいだろう。
壁によって守られたものは確実に存在するであろうし、失われたものも然りだ。
2023年の今、壁は消えてなくなったのではなく、役割を変えたとは考えられないだろうか。
伝達すべきものの精査が世界中のあらゆる階層でなされた結果、壁はもはや内装壁ではなく構造壁になり、不要と判断された内装壁は壊されコロナ禍によってつくられた壁のいくつかは構造壁として社会を形づくっていくように思う。
  
資本主義の進化と、民主主義の成熟によって新たな社会が生まれる。
大袈裟に思われるかもしれない。
それを承知で書いているのだけれど「ベルリンの壁」が崩れた時、人々が自由な往来を取り戻し、熱狂と共に自分自身を発信した1989年を思い起こしているのです。
今では誰もがスマートフォンを介して、ネットの壁に各々の想いを記す。
未知を恐れずに行動し、望むものを実現する契機として、2023年の壁について考える機会を頂いたことに感謝いたします。

"Torus" †Bone by Pixel
"Torus" †Market by Pixel

Google Pixel シリーズを用いた作品はNFTコレクション「Pixel」として今後も制作を続けていこうと思います。

多くの方々に助けて頂き展示を終えることができました。
ありがとうございました!!


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