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「デジタル地図」で世界を変える
こんにちは。マップボックス・ジャパンの高田です。
私事ですが、2021年6月末をもって、Zコーポーレーションの社長職を退任しました。今回のnoteでは、7月1日から、経営者としてはマップボックス・ジャパンに一本に絞ると決断した理由について、新たな決意と共にご報告したいと思います。
(Zコーポレーションは顧問として、投資先の会社については引き続き役員として、責任を持って携わっていきます。またソフトバンクの技術投資戦略本部の立場に変わりはありません)
これまで私は、自分自身のキャリアについて、「複数の草鞋」という表現を使ってきたように、2足どころか、3つ、4つ、5つの役職、案件を抱えて働いてきました。そして、これからも、Zコーポレーション、ソフトバンクなど、複数の草鞋を履き続けるという意味においては、そこまで大きな変化ではないのかもしれません。
ただ、「四十にして迷わず」ではありませんが、Zコーポレーションの社長退任が個人的に大きな節目になったのも事実です。
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せっかくの書く機会ですから、このnoteを通して、これまでのキャリアを振り返り、これから何をやろうとしているのかを整理しながら、お伝えしていきます。
私の履歴書──「広告」から「投資業務」へ
私のビジネスマンとしてのキャリアは、インターネットリサーチ会社「インタースコープ」(ヤフージャパンにより買収)でインターンとして働いたところからスタートしました。学生時代に専攻していた「統計」や「コンピュータサイエンス」を学問として学びながら座学と並行して、インタースコープ社での実践の場を提供いただいた形です。学生ながら社会人の方々と同じように扱っていただき、実業としてのクライアントへの提案や登壇、商品開発など、いち早く社会人としての経験を積ませていただくことで、私のスキルの基礎ができました。
その後「コンピュータ・アソシエイツ」(ブロードコムにより買収)という外資系のエンタープライズ・ソフトウェアの会社にシステムエンジニアとして入社。新入社員ながら新規事業開発とその収益責任者のポジションをいただき、社会人としての成功・失敗の経験やキャリアを積ませていただきました。同時に、外資系企業という競争環境、そして事業開発の厳しさを学びました。
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続けて、検索連動型広告の覇権をめぐってグーグルと火花を散らした「オーバーチュア」に移り、再びインターネットの世界に入りました。そしてオーバーチュアが2007年にヤフージャパンに買収される形で、私もヤフーグループに参加します。
「ヤフージャパン」での約10年間に及ぶキャリアでも、広告・データプロダクトの製品開発、メディア・広告領域のM&Aなどを中心に従事しました。広告プロダクトの責任者として、当時、急成長していたデジタル広告のマーケットでGAFAに代表される世界のテックジャイアントとの競争を経験したことにより、そのすごさを目の前で体感することができました。同時に、ローカルプレイヤーとして対抗策を講じる仕事は、自分自身にとっても貴重なキャリアとなりました。
そしてヤフージャパンでの仕事を通じて、初代社長の井上雅博さんや、2代目社長の宮坂学さん(現・東京都副知事)との接点が生まれます。それがきっかけとなり、ヤフーの社長室に異動となって初めて投資業務に携わることになりました。
2018年、宮坂さんが中心となり組織した投資会社「Zコーポレーション」が生まれ、私もその立ち上げに加わりました。2019年5月より、宮坂さんの後任として、2年間にわたりZコーポレーションの代表取締役社長を務めさせていただきました。「次世代に誇れる未来を創る」というミッションのもと、新しく5つの会社設立と投資に関わりました。
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Zコーポレーションはビジョンファンドの支援もしていたこともあり、2020年からは「ソフトバンク」の本部長職としても、技術領域の投資活動を担うようになりました。
(なお、ソフトバンクグループにいるので孫正義さんとの接点についてよく聞かれますが、会議の末席で「声をかけられないか」とビクビクしている程度の存在です(笑))
振り返ってみると、あらためて「私は恵まれた人間だな」と思います。キャリアごとに、身に余るほどのさまざまなチャレンジの機会をいただき、いろいろな人と出会いました。それらすべてが私の財産です。
駆け足になりましたが、以上が私のキャリアの振り返りです。
40歳のキャリアの節目──なぜ「デジタル地図」なのか?
40歳の節目を迎えたこと、Zコーポレーションの経営に3年間にわたり従事させていただいたこと。キャリアの節目を迎え、これから私は何に集中すべきなのかを考えました。
たくさんの活動を行う中で、いただいた貴重なビジネスの機会がマップボックス・ジャパンでした。最初から「デジタル地図」はZコーポレーションのテーマでもあった「モビリティ」と「ブロックチェーン」と非常に相性がよいと感じていました。その中でもマップボックスが運命的だと感じた理由は3つです。
(1) 地図は終わりがない永遠のβ版(モビリティ)
Zコーポレーションでは「モビリティ」に携わり、移動を伴うサービスにおいて、地図情報がいかに重要かを痛感することになりました。
そしてソフトバンクは、配車系アプリの代表格であるUber、DiDi、Grabなどに出資しています。マップボックスに出資した背景にも、おそらく「デジタル地図のイノベーションは最重要課題かつ急務だ」という認識があると考えられます。
さらに、モビリティ分野だけでなく、近年の国内投資の成功例の一つである「PayPay」は、アプリ内の地図をマップボックスが提供しています。
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ソフトバンクが出資する、さまざまな分野の企業群にも応用できるのが「デジタル地図」の特徴です。
あらためて考えてみると、地図には「完成版」がありません。人間が社会・経済的な活動をする以上、モビリティで人は行き交い、地図は常に変わり続けます。このことを考えながら思い出したのは、中学、高校時代のことです。私は世界史や日本史よりも地理が好きで得意でしたが、そのいちばんの理由は「地理は変わり続けるから」でした。
「1年前の地図」と「1年後の地図」は、違っていたりします。永遠のβ版ともいえる「デジタル地図」のビジネス領域は魅力的であり、後述する(3)の「オープンソース」との相性も抜群です。
(2) 「デジタル地図」にはビジネスモデルの革新が必要(広告・マネタイズ)
私のキャリアを通じての共通項は、技術革新でもたらされる新たな情報環境での「サービスの収益化」です。
「デジタル広告」の領域では、PCからスマートフォンへのデバイスの移行、検索エンジンやソーシャルメディアの登場など、情報流通における大きな環境の変化がありました。すると、今までの広告テクノロジーでは思ったような収益化ができなくなり、サービスを提供する企業は新たなデバイスや情報環境への対応が急務となります。私の仕事は、そうした課題に対して広告マーケティングの技術を進化させることで、提供する企業の「サービスの収益化」を後押しすることでした。
かつてのデジタル広告と同じように「デジタル地図」のマーケットでは大きな技術革新が起こっています。しかし、「デジタル地図」に新たな技術があるにもかかわらず、実際には消費者がそのメリットを享受できていません。なぜなら、提供する企業側が「サービスを収益化できる」イメージを持っておらず、最新技術へ投資するにいたっていないからです。
こうした歴史は繰り返されています。たとえば、検索エンジン領域では、オーバーチュアが発明しGoogleが完成させた「検索連動型広告」という「サービスの収益化」が生まれました。検索連動型広告がなければ、検索エンジンがこれほどまでにインパクトある技術としてイノベーションを続けることはなかったと思います。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58691149/picture_pc_c55edb7127ee6a86cd9dea979773ad60.jpg)
インターネットの「ブラウザ」も同じです。ブラウザ内に検索ボックスが設置されることで、検索エンジンから利用料や広告収入を受け取ることができるようになり、初めてサービスとして収益化することができました。広告ビジネスとして成立したからこそ、ブラウザは進化を続けることができました。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58691297/picture_pc_98fdd9f5a254aa0663f3af172d6be01a.png?width=1200)
ソーシャルメディアも同様に、タイムラインやフィードという情報フォーマットが生まれ、「フィード広告」という広告テクノロジーが誕生することで、初めて進化を続けることができるようになりました。「フィード広告」がなければ、FacebookやTwitterはここまで巨大なネットワークにならなかったと思います。「フィード広告」があったから、Yahoo! JAPANもスムーズにスマートフォンへ移行することができました。
デジタル地図のマーケットも「サービスの収益化」という課題を解決すれば、きっと大きな技術革新が花開き、よりたくさんの地図関連サービスを世の中に送り出すことができるはずです。これがマップボックス・ジャパンを設立した理由であり、私がマップボックスジャパンをやるべきだと思っている理由です。
(3) 「デジタル地図」は分散型との相性がいい(ブロックチェーン)
地図には、地図会社だけではなく、「オープンストリートマップ」(OSM)という形で一般の人々の手によって作成されるものがあり、オープンソース的な発想で進化してきました。そして、実は大学時代の私の卒論テーマは「オープンソース」です。
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一般的には、「オープンソース」は無償のイメージが強く、「ビジネス」とは相性が悪いと思われています。しかし、オープンソースが世の中に普及し、役立つにはビジネスの力が必要です。
たとえば、リーナス・トーバルズの「Linuxカーネル」も、そのままではインプリメント(実装)できませんでした。アカデミックな理論が理論のままでビジネスに展開するのは容易ではなく、レッドハット社が展開することで初めて、Linuxはコアインターフェースとしてスタンダードになったのです。
逆もまた真なりで、オープンソースの世界が技術の芽を作らなければ、ビジネスは発展のしようがない。つまり、オープンソースはイノベーションを起こすために必要な要素であり、ビジネス展開されることで、より磨かれていきます。
NGO支援からスタートしたマップボックも例外ではなく、ライブラリの「GL JS」をオープンソースにして、誰もが使えるようにしました。その結果、さまざまな技術開発に成功しています。
オープンソース的な発想とビジネスの発想、この2つを効果的に組み合わせることでパフォーマンスを最大化できる技術が「ブロックチェーン」だと思います。ビットコインのマイニング(採掘)は、フェアな報酬があることで永続的なエコステムが構築されています。詳細は別の機会に書きたいと思いますが、「デジタル地図」は分散型のテクノロジーが有効です。
以上のとおり、(1) 地図は終わりがない永遠のβ版(モビリティ)、(2)「デジタル地図」にはビジネスモデルの革新が必要(広告・マネタイズ)、 (3) 「デジタル地図」は分散型との相性がいい(ブロックチェーン)、という3つが、私がマップボックス・ジャパンの経営に専念しようと決意した理由です。
最後に
SoftBank World 2020のブレイクアウトセッション「デジタルナビゲーションが世界を変える」に、当時、私はマップボックス ・ジャパンCSOとして、マップボックスインクのエリック・ガンダーセンCEOとともに出演しました。そこで「誰もが自分の地図を作成できる」プラットフォームとして、データ資産および魅力的なUXを提供し続けることを約束しました。
熱海市ほか、7月の大雨で甚大な被害を受けられた方々へお見舞い申し上げます。その中で、たまたまマップボックスのサービスを使っているユーザー様のTwitterの投稿を見ました。
熱海で土石流が発生した地点。MapboxGLJS(v2)で3D地形と3D建物と土砂災害警戒区域(土石流)を重ねて表示してみた。土砂災害警戒区域の出典は国土数値情報。3Dにすると急峻地であることがよくわかる📝#Mapbox pic.twitter.com/9u7RE9fhP4
— shi_works⛅ (@syanseto) July 4, 2021
期せずして「誰もが自分の地図を作成できる」ということの意義をあらためて感じました。そしてマップボックスの魅力をもっと正しく伝えたいという気持ちを新たにしました。
最後になりますが、私は投資業務に従事する中で、企業の価値を決めるのは、「その企業にしかできないことがあるか否か」だと感じるようになりました。その観点でいえば、マップボックスにしかできないことがあると私は確信しています。
そして、マップボックスが成し遂げようとしていることに共感する仲間が一人でも多く参画してくれることを願っています。「デジタル地図」で世界を変えることにチャレンジしたい方は、こちらの採用ページをぜひご覧ください。お話できることを楽しみしております。
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