人的ネットワークを活かす7つの条件
事業戦略大学「イノベーティブな商品企画開発実践するためのトレーニング」
では人的ネットワークを使って、新たな顧客経験価値などと言った高度なコンセプトはどのように創造するのでしょうか。まずどのような人的ネットワークをセットすべきかを考えます。前にも述べた通り、濃い関係のネットワークは、固定概念に縛られ新しい発想が出にくい一方で決められた範囲では生産生、効率性が高いという良い面もあります。薄い関係のネットワークは、自分では知らない発想、考えが学べ、意見交換することで新しいものが生まれやすいのですが、アイデアが発散しすぎて形になりにくい側面もあります。かつて世界各地でアイデアソンが流行しましたが、いまはあまり聴かれません。その多くがアイデアの発散でとどまり、コンセプトの企画まで至らなかったのだと思います。
これまで私は多くの異業種連携事業や、新商品企画に関わって試行錯誤した結果、独自の顧客経験価値を創造するには以下の様な7つの条件が必要であることが解ってきました。
条件1:多様な価値観、属性を持っているが、何か共有するものがある人的ネットワークを形成すること
性別、年齢当然ですが、国籍、学歴、職業、趣味などでできるだけ多様な人材を集めるのがよいと思います。ただ検討テーマに関連性に何かしら関係のある属性を持った人であることが前提です。そしてそのネットワークは、問題意識や関心事など何か共有するものがあった方がディスカッションは進みやすいです。集まった際に共通するものがない場合は、テーマに関して問題、課題提起を行い、共有するものをつくり出します。
条件2:参加者が自立していて、自発的に意見を述べること。互いを尊重すること
参加者個人が自立していて、自分の考えや思いを自由に発言出来ることが必要です。組織や人によっては自由に発言することが制限されている組織風土であったり、それが習慣となってしまっている場合もあります。ネットワークの参加者がどのような文化の組織に属しているか、自発的に発言出来る人かどうかをあらかじめ見定めておかなければなりません。また自発的に発言するだけでなく、集まった人を尊重しその意見に耳を傾けることも大事です。
条件3:目指すべき理念、ビジョンが大まかに示されていること
集まったネットワーク、それは1つのプロジェクトとなりますが、そのプロジェクトの目指すべき理念、ビジョンなどの方向性を示すことが重要です。このこういったプロジェクトの方向性を示すのは、組織のトップであるスポンサーの仕事です。方向性は詳細過ぎず、かといって抽象的過ぎず、参加するメンバーの発想を刺激し、意欲を引き出すメッセージで無ければいけません。例えば「環境に良い住宅を考えて欲しい」よりも「環境を改善する住宅を考えて欲しい」の方が刺激されます。組織のトップの役割とは、自分で答えを出すのではなく、人の発想、行動を刺激し、創造性を引き出すことだと思います。
条件4:試行錯誤を繰り返して、段階的にアウトプットをつくること
顧客経験価値の様な決まった答えがないアイデアやコンセプトを創造するには、試行錯誤を積極的に行うのが大事です。その試行錯誤のプロセスさえ楽しみ、そこからコンテンツを生み出すぐらいでなければなりません。そのためには「失敗」という考えを変え、どんなことであっても常に進化、成長の課程であるこという認識が大事です。しかしクリエーションとよばれる様な企画のはどこまで行っても終わりなく達成感が味わいにくいことも事実ですので、いくつかのフェーズに段階を区切って、ここまでやったら一応OKという区切りを付け、段階的に進めることが必要です。
条件5:ファシリテーションがしっかりしていること
多様な属性のメンバーで議論する際に必須なのはファシリテーションです。会議やブレーンストーミングの際にはファシリテーター役を決めて、議論をする必要があります。ファシリテーターは、参加者に発言の機会を平等に与え、創造性を高めつつ、一定の結論へ向かうよう合意形成をします。コミュニケーション力、判断力など高度なスキルが必要で、様々な会議での経験が必要です。ファシリテーション力を鍛えるには、会社などの組織での会議のファシリテーションを積極的に引き受け、経験を積むことが効果的です。
条件6:議論するだけでなく行動し経験すること
独自の顧客経験価値を発見する上で、議論するだけでなくプロジェクトメンバーが行動し、経験することほど効果的なものはありません。経験価値を創造するためには、質の高い経験が必要なのです。例えば古民家住宅の企画開発を行うのであれば、古民家滞在経験は必須ですし、アウトドアマニア向けのクルマの開発であればクルマでのグランピングの経験は必須だと思います。しかし実際はそういった経験は個人の自助努力に任せられ、ネットの閲覧だけとか、他人の体験談を聞くだけというのが多いのではないでしょうか。それでは独自の顧客経験価値を創造するのはむずかしいと思います。会社や組織はメンバーが顧客経験価値を得るための体験に時間とお金の投資をするべきです。プロジェクトメンバーが現場で経験したことを互いに共有し、その場で新たな経験価値を議論し創造することが差別化につながるのです。
条件7:偶然をも積極的に取り込むこと
偶然と思われたことから思わぬ解決策が生まれることは誰しもが経験したことがあるのではないでしょうか。しかし偶然と思うのは自分自身であり、それが社会や市場の動向から見れば必然ということが多いのではないでしょうか。つまり自分は偶然と捉えたが、それは過去の発想、思考のバイアスが入った見方、捉え方であって、実際は世の中の必然であったのではないかということです。一見偶然と思われることを、実は必然ではないかと疑って考え、一度は取り込んでみることをお勧めします。そのためには偶然と思われることでも柔軟に受け入れるマインドセットが大事です。
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