NCニュースの読み方 #16 「統計調査にもっとインターネットを活用すべき」 (2005年12月14日)
日本ではあまり報道されていないが、韓国統計庁が2005年11月に実施した
人口住宅総調査で、インターネットを利用した調査方式が導入された。この
調査は日本の国勢調査に該当し、5年に一度実施される。これまでは日本と
同じ、調査員が直接家庭を訪問する方式で実施されてきた。今回も10万7000
人の調査員を投入した上で、インターネットによる調査を採用した。後者を
希望する人は統計庁のWebサイトでインターネット調査を選択し、本人認証をしてからパソコンの画面に表示された調査票に記入する。
インターネット調査方式を採用した理由は、調査員調査では難しい一人暮
しの独身世帯や共働き世帯の調査票回収率を向上させることにある。まだ回収率は発表されていないが、回収率向上以外でも、調査票の回収とデータ入力に要する経費の節減や集計期間の短縮という効果が期待できる。
全国民を対象とする統計調査でインターネット調査方式を導入したのは、この韓国の事例が世界初だと思われる。日本は調査員方式だし、米国の人口センサスは郵送調査方式である。ただ、企業を対象とする統計では、調査インターネットを利用することは、もはや珍しくない。米国では商務省センサス局が2002年末に実施した全企業を対象とした経済センサスで郵送調査方式と並行してインターネット調査方式を導入したし、日本でも旧郵政省が1998年に通信産業動態調査でインターネット調査方式を実験的に採用。さらに経済産業省は2000年1月から「新世代統計システム」によって生産動態統計などの調査にインターネットを活用している。
経済産業省によれば、2005年1月時点で調査票の約35%、件数にして毎月1万枚の調査票がインターネットによって回収されるまでになっている。
今年の7月に開催された各府省統計主管部局長等会議で配布された資料によれば、2005 年6月末時点で実施されている414統計中、オンライン(イン
ターネット)を利用して調査を実施しているものは87。指定統計に限定すれば57のうち27と、半数近くでオンライン利用が行われている。
にもかかわらず、この10月に実施した国勢調査は、約85万人の調査員を動員した調査員調査方式だった。約650億円と言われる経費の大半が、調査員と調査を指導する指導員への手当てである。税金の無駄遣いだという声が上がるのも無理はない。
これをインターネット調査方式と郵送調査方式に切り替えれば大幅なコストダウンが図れることは間違いない。各府省CIO連絡会議の幹事会決定であり、各府省統計主管課長等会議の了解でもある「統計調査等業務の業務・システムの見直し方針」においても、オンライン化を進めることになっている。次の2010年の国勢調査はもちろん、統計調査でインターネット調査方式の採用が増えることを期待したい。
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