NCニュースの読み方 #4 「情報通信白書は日米韓比較が面白い」 (2005年7月4日)
総務省は6月28日、情報通信分野の動向を取りまとめた平成17年版の情報通信白書を発表した。特集は、「u-Japanの胎動」。同省は、「2005年までに世界最先端のIT国家となる」ことを目標としたe-Japan戦略の後継として「『いつでも、どこでも、何でも、誰でも』ネットワークにつながり、情報の自在なやりとりを行うことができるユビキタスネット社会を2010年までに実現する」ことを目指し、u-Japan政策として取りまとめているからだ。
u-Japanに向けた現状報告も興味深いが、あちこちに盛り込まれた日米韓比較のデータを見ると、それぞれの国の特徴が表れていて面白い。例えばパソコン・ユーザーの電子メールとネットショッピングの利用率は、日米韓とも9割前後で大差ない。しかし携帯電話となると全く違う。米国の携帯電話ユーザーは、メール、ネットショッピングともに、十数%しか使っていない。日本は、メール利用率は87.7%と高いが、ネットショッピングは18.1%にとどまる。一方で韓国の携帯電話ユーザーは、メールは43.1%と日本の半分以下ながら、ネットショッピングは31.4%と、日本の1.5倍だ。
日本より韓国のほうが携帯電話によるネットショッピングの率が高いのは、その支払方法に理由があるかもしれない。日本は代金引換や銀行振込がよく使われているが、韓国はオンライン振込と通信会社等の決済の比率が高い。少額決済(マイクロペイメント)の仕組みが発達していることが、携帯ショッピングを容易にしていると思われる。
周知のとおり、日本は、世界で最も低廉かつ高速なブロードバンド環境を実現しており、通信インフラ的にはe-Japanの目標は達成できた。しかし、u-Japanで「情報の自在なやり取り」を目標にしているように、インフラの活用という点では課題が多い。
白書にある「インターネットの利用用途」も、それを示している。情報収集のためのネット利用率は、日米韓とも高いが、サービスでは米韓に比べて日本はかなり低い。注目すべきは「政府・自治体へのオンライン申請・届出」だ。米韓の23%台に対して、日本はわずか5.0%しかない(図)。
韓国では、2000年から始めた電子政府構築プロジェクトの一環として、さまざまなシステムを構築してきた。現在では住民登録や土地台帳などに関する証明書をインターネットで申請できる。ソウル市の江南区のような先進自治体では、インターネット経由で税金、各種手数料などを納付できるし、携帯電話で電子申請しコンビニに設置された指定プリンタで証明書を印刷することも可能だ。こうした取り組みが、23.9%という高い数字になって現れているのだろう。
日本でも電子申請や電子届出のシステムが開発している。しかし、各府省の汎用的な電子申請システムのオンライン利用件数の割合は2003年度で0.7%と、極めて低い。それは、とにかく電子化することが目的になっていて、利用者の立場に立ったシステムになっていないからではないだろうか。