インターネットについて(第2版) 1994年4月
(注)通商産業省 機械情報産業局 情報政策企画室長時代に作成した省内向けのレポートです(図表は省略しています)。
1. インターネットの概要(インターネットとは何か?)
(1) インターネットとは何か
インターネットはインターネットプロトコルを用いたネットワークのネットワーク(メタネットワーク)である(主な通信 プロトコルは TCP/IP であるが、数多くのプロトコルが共存している)。
その構造は、コンピュータ、そのコンピュータが接続されているLAN (Local Area Network) 、LAN間を接続するネットワーク(WAN (Wide Area Network) と呼ばれる)、さらにそれらのネットワークを接続するネットワーク、さらに---、という階層的構造になっている。
図1 WAN の構造
図 2 インターネットのイメージ
米国では上位のレベルから、National Backbone, Mid-level Networks/Regional Networks と呼ばれている。
米国政府が関与している主な National Backbone は、NSFNET (Interrim NREN と呼ばれることもある)、Milnet (DOD), ESNET (Energy Science Network, DOE), NSI (NASA Science Internet) がある。
図 3 米国内のインターネットのイメージ
インターネットは、米国DOD/ARPA が 1969年に研究開発基盤として構築したARPANet から発展したネットワークであるが、現在は地球規模のネットワークに発展している。
接続コンピュータホスト数:約 222万台('94年 1月現在)
電子メールが届く国の数: 137ヵ国('93年 8月現在)
IP接続されている国の数: 60ヵ国('93年 8月現在)
利用者の数:正確な数はわからないが、1000万人とも2000万人とも-----
現在も急速に成長中である(毎月 12% で成長していると言われている)。
当初は研究者のネットワークであったが、研究目的以外の利用が増えつつある。
今後、研究目的の利用は年率30〜40%、商用は年率300〜400%で増加するという予測もある。
1994年1月現在の国別接続コンピュータホスト数(直接インターネットに接続されているコンピュータの数)は以下の とおり(出典:<ftp.nisc.sri.com> /pub/zone )。
米国 1,475,657
スイス 38,277
イギリス 113,930
スウェーデン 38,109
ドイツ 103,324
フランス 33,205
オーストラリア 89,672
ノルウェー 31,746
カナダ 86,312
イタリア 17,084
日本 42,769
オーストリア 15,442
オランダ 41,877
スペイン 11,784
(2) インターネットの技術のポイント
a. パソコン通信との違い
通常、パソコン通信では、同じネットワークに加入しないと相互にメールのやり取り、情報の入手ができないが(パソコン ネット間の接続があるものについては、そのネット間で可能である)、インターネットでは、いわゆる「友達の友達は友達だ」の関係になっており、インター ネットに接続しているネットワーク・LAN に接続したネットワーク(LAN・コンピュータ)は、インターネットの一部になり、インターネットの世界中の利用者とメールの交換、情報のやり取りが可能 になる。
技術的に見れば、パソコン通信は本質的に大型計算機とパソコンのネットワークで、パソコン間で通信しているようにみえ るが、実際は大型機とパソコンの通信である。例えば、パソコン通信のメールは大型計算機の磁気ディスクないでメッセージが移動しており、必要に応じてそれ をパソコン側に転送できるにすぎない。
一方、インターネットではコンピュータ間を情報が実際に移動している。
また、インターネットに接続されている他のコンピュータを利用したり、そのコンピュータの磁気ディスク中のデータ (ファイル)を持ってくることも可能である。
つまり、パソコン通信では、基本的に一つのホストコンピュータに無数のパソコンが端末としてぶら下がる構造をとるのに 対して、インターネットでは直接接続されているコンピュータは基本的にすべて平等な構造をなしている。また、インターネットにおけるダイヤルアップと呼ば れる、電話回線を通じてパソコン等からインターネットに接続されているワークステーション等を通じてインターネットアクセスする方法を考えると、インター ネットに接続されているホストはすべて(潜在的な)パソコン通信のホストに該当し、インターネットはパソコン通信のホストが 200万台以上、水平分散的に相互接続されたような構造であるとも考えられる。
海外との通信についても大きな違いがある。パソコン通信では海外への、あるいは海外からのアクセスには国際電話料金等 の費用が必要であるが、インターネットでは国内で一カ所に接続すれば、国内も国外も同様に通信が可能である。
図 4 パソコン通信とインターネットの違い
b. ゲートウェイ(ルータ)の役割
ネットワークを事実上支配しているのが、ルーター(英語ではラウターと発音する人が多い)である。ルーターは、その接 続されているネットワークに関する経路情報を持っており、流れてくる情報をどのネットワークに流すのか(流さなくてよいのか)を判断している。インター ネット上ではいわゆる交換機の役割を果たしている。通常の通信網の交換機は通信事業者にあることを考えると、インターネットは交換機がユーザー側に設置さ れている希な通信網である。
なお、インターネットの発展に伴って、関係機器を製造する企業の業績も急速に伸びている。たとえば、1993年 8月 9日のFortune誌が取り上げた米国の成長企業の No.1 の Wellfleet 社とNo.5 のCisco 社は、ともにルータを専門とする企業である。)
図 5 ルーターのイメージ
c. IPアドレスとIPアドレスの割当
インターネットに接続されるコンピュータはすべてユニークなIPアドレス(電話でいえば電話番号)を持たなければなら ない。(つまり、インターネットにつながっているコンピュータはすべてユニークなアドレスを持っていることになる。)
IPアドレスの割当は、現在ボランタリな組織で行われており、全体の調整は米国に置かれている InterNIC (Network Information Center) が行なっている。
日本では JPNIC (1991年12月に設立されたJNIC が1993年 4月に改称)が行っている。
d. IPアドレスの仕組み
IPアドレスは 32bit 長である。通常 8bit ずつで区切って、192.200.31.1 というように記述する。また、アドレスはネットワーク部とホスト部に分けられ、その区切り方でクラスA, B, C, D, E の5クラスがある。このうちクラス D はマルチキャスト用に、クラス E は将来のために予約されており、一般のネットワークに割り当てられるのはクラス A, B, C のいずれかである。
クラスA は、約 1600万台分のIPアドレスを割り当てることができる (1.0.0.0〜126.255.255.255)。
クラスB は、約 65,000台分のIPアドレスを割り当てることができる (128.0.0.0〜191.255.255.255)。
クラスC は、 254台分のIPアドレスを割り当てることができる (192.0.0.0〜223.255.255.255)。
しかし、現在ではクラス A, B の割当はかなり制限されており(日本独自で割り当てることはできず、米国に割当を要求する必要がある)、通常はクラスCが割り当てられている。また、現在 はクラスC のネットワーク部とホスト部の境界を可変にして取り扱う CIDR (Classless Inter-Domain Routing) が利用され始めようとしている。(このCIDR を扱うためのルーティングプロトコルはBGP-4 (Border Gateway Protocol-4) と呼ばれ、既にこれを搭載したルーターのテストも行われている)
図 6 IPアドレスの種類
e. メール・アドレス
実際に電子メール等で使われるアドレスは、IPアドレスではなく、メールアドレスである。メールアドレスは、maegawa@trc.rwcp.or.jp のように階層的に表記される。このドメイン形式のメールアドレスは、DNS (Domain Name System) によってIPアドレスに変換される。
図 7 メールアドレスの仕組み
(3) インターネットで何ができるか
a. 電子メール
主として個人間の情報交換に用いられる。世界中のインターネットの利用者に電子メールを送ることができる。メイリン グ・リスト機能を用いると、関係者に一斉同報も可能であり、また世界中に散らばった任意のメンバーによる電子会議を開くことが可能である。
最近ではいくつかのパソコンネット(CompuServe(米), mcimail(米), NIFTY-Serve(日), PC-VAN(日)等)とも接続され、相互にメールのやり取りが可能である。
b. 電子ニュース(NetNews とも呼ばれる)
Store & Forward 型のアプリケーションで、投稿された記事 (News) は隣接したサーバに伝えられ、受け取ったサーバは自分のNews用のファイルに蓄積 (Store) すると同時に、次の隣接したサーバに情報を伝える (Forward) 形で、世界中に情報を伝えるもの。
例えば、日本で投稿した記事は、約 15分で欧米の主要なサイトに配送され、24時間程度でほぼ世界中(世界100ヵ国以上)に伝わると言われている。
この機能を利用して、インターネットを利用する研究者は論文、レポート、ソースプログラム等の交換を行っている。
c. 情報検索(ファイル転送)
インターネット上には情報を提供するためのコンピュータが無数に存在しており、自由に検索し情報を手に入れることがで きる(商用データサービスは後述)。従来はファイル転送(ftp)によって必要な情報を入手していたが、最近では効率よく検索するシステム(ツール)が開 発されている。これらのツールを使うと、異なるネットワーク上にまたがる情報を高速で検索することができる(インターネットでは既に広域分散型のデータ ベースが実現されていることになる)。
主なものとしては次のようなものがある。
(a) archie
anonymous ftp として公開されているファイルをそのファイル名で検索するシステム
(b) wais (Wide Area Information System)
キーワード検索を中心とした検索型ツール(Unix のgrep のようにネットワーク上で登録されたファイル中の文字列を検索可能)。
(c) www (World Wide Web)
様々な画像を含めたドキュメントをハイパーテキストとして検索が可能
(d) gopher & (e) mosaic
ブラウズ型の検索ツール、あちこちのサーバーにある情報をハイパーテキストのようにナビゲーションしていくことによって 情報を発見していくことが可能。
d. リモート・ログイン
利用者として登録されていれば、インターネットに接続されているコンピュータ(例えばスーパーコンピュータ)を利用可 能である。
e. 商用データサービス
リモート・ログインによって、Dialog, STN, International, BRS, DELPHI 等の商用データサービスが利用可能である。ただし当然のことであるが、別途利用者識別番号(ID)を取得し、利用に応じた料金を支払う必要がある。
(4) インターネットのメリットは何か
(電子メールに関して)
- 通信が高速、世界中のユーザに数秒〜で文書が送れる
- 電話と違い、その場に相手が居合わせる必要がない、時差のある場所との通信に最適
(場所や時間の制約を受けず、遠く離れた人と一緒に仕事や研究ができる)
- アドレス表記が簡単
- 一斉同報が可能、
- 英語を話すのが苦手でも、読み書きができればコミュニケーションが可能
- 通信コストが安い(他の手段と比較して)
- 通信の日時、差出人、受取人が自動的に記録される
(全体として)
- 世界中から情報を集めることができる
- 計算機に格納してあるあらゆる情報が送受信できる
- 受け取った情報の再加工が可能
- 接続料金が通常固定制のため、海外等の遠距離通信が多いと極めて経済的
- 紙が不要で森林資源の保護に役立つ(?)
- ネットワークのなかにはバーチャルコミュニティがある
(5) インターネット関係の主な組織
インターネットは、その黎明期においては政府のサポートによって発展してきた。しかし、その発展期においては、ボラン タリーな活動がその発展を支えてきており、インターネットはまさに草の根 (grass roots) の成果である。その活動を舞台であるさまざまな組織もほとんどがボランタリな活動によって支えられている。
a. Internet Society
1991 年 6月にコペンハーゲンで行なわれた INET'91 で発足がアナウンスされ、1992年 1月に正式に発足した。同年 6月に神戸で行なわれた INET'92は Internet Society の第1回国際会議として開催された。(INET'93 は 1993年 8月にサンフランシスコで開催された)
国際会議の開催、インターネットに関する標準の策定、調査研究、IP アドレスの割当等を実施している。
図 8 Internet Society の主な組織
b. IAB (Internet Architecture Board, 旧称は Internet Activity Board)
1983年にDARPA によって設立され、インターネットの技術開発、標準の開発を担当している。現在はInternet Society の一部門として活動している。(1992年 6月に神戸で開催された INET'92 の時に Internet Society に統合されると同時に名称も変更した)下部組織として、標準化を担当する IETF と 研究開発・実験を行なう IRTF の2つの委員会を持っている。
c. IETF (Internet Engineering Task Force)
IAB の中で一番大きな委員会でインターネットに関する標準の策定を担当している。極めて数多くの小委員会を抱えている。
d. CCIRN (Coordination Committee for Intercontinantal Research Networks)
米国内のインターネット関係機関と海外の各関係機関との相互活動を調整するために1987 年に設立された機関。基本的にアカデミックネットワークの関係機関の代表で構成されている。各地域毎に対応する NACCIRN (North America CCIRN)、EuroCCIRN 、APCCIRN (Asia-Pasific CCIRN) 等の地域委員会がある。下部組織として、技術的問題を扱う IEPG を設立した(現在は独立した機関となっている)。CCIRN では主として政策的問題を取り扱っている。
日本代表は、浅野正一郎教授(学術情報センター)と石田晴久教授(東大大型計算機センター)。
e. APCCIRN (Asia Pasific CCIRN)
アジア・パシフィック地域の CCIRN。現在の議長は韓国の Kilnam Chon 氏である。
f. IEPG (Intercontinental Engineering Planning Groupe)
CCIRN の技術的調整の場として設立され、主にネットワーク技術の現実への適用問題(たとえば、ルーティング)を取り扱っている。日本の代表は、村井純慶応大学助 教授。
最近、CCIRN から分離独立し、現在、親組織のない存在となっている。
g. JEPG (Japan Engineering Planning Group)
IEPG に対応する日本国内組織、1992年に発足。親組織はJCRN。
h. JPNIC (Japan Network Information Center)
IP アドレスやネットワークの名前を割り当てる機関。
事務局は東大大型計算機センターに置かれている。
i. JCRN (Japan Committee for Research Networks)
日本の主な学会とアカデミックネットワークの代表者の集まり。
日本のアカデミックネットワークの在り方について議論している。
JEPG はこの下部機関である。
j. 日本インターネット協会
1993年12月 6日に発足した「業界団体」的な組織。現在は任意団体。以下のような活動を予定。
- インターネットの啓蒙普及
- インターネット技術の研究の促進
- インターネット技術者の育成
- インターネット関係組織(JPNIC等)の活動支援
- Internet Society との情報交換、交流
- アジア諸国への技術移転への協力
幹事には、石田晴久教授(東京大学)、村井純助教授(慶應義塾大学)等の日本のインターネット関係者の多くが名を連ねて いる。
入会費は 1社10万円、年会費は不明(未定のまま発足している)
(6) その他(トピック)
a. 米国大統領・副大統領の E-mail アドレスの取得
1993年 6月 1日、インターネット関係者に米国大統領および副大統領がメールアドレスを取得した旨の連絡が E-mail で行なわれた。クリントン大統領のアドレスは president@whitehouse.gov、ゴア副大統領のアドレスは vice.president@whitehouse.gov である。
b. 企業が広告代わりに利用
米国では一部の企業が、自社の情報のデータベースを収納したサーバーを解放し、一般に公開している。インターネットを 利用した一種の広告と考えられる。
c. 無料のFAXサービス
米国では、インターネットを利用した無料のFAXサービスを実施している企業がある。ユーザーは送付先と送付データを 送ると、無料でFAXを送ることができるが、FAXの表紙(カバーシート)の余白部分に広告が入る仕組である。
d. コンピュータ以外の機器の接続
インターネットに接続されている機器はコンピュータに限らない。米国では温度計までもが接続されている。ワインセラー に置かれた温度計らしいが、ここにアクセスすると温度が返答される。
2. インターネットの歴史
(1) ARPANETの時代
a. 出発点
インターネットの出発点は、ARPANET である。このネットワークは米国国防総省 (DOD : Department of Defence) の高等研究計画局 (ARPA : Advanced Projects Research Agency) が構築した広域コンピュータネットワークである。構築の計画は 1961年にまで遡ることができる。この年に J.C.R. Licklider (当時MITの数学のProfessor)がARPA/DODのcomputing office のdirector に任命された。ARPANETの基になった構想をたてたのは、 time-sharing と interactive computing を信じていた彼である。
b. パケット交換通信方式
インターネットは、通信方式として「パケット交換」を用いた世界で初めてのネットワークでもある。この方式はデータを 一定長以下のパケットに区切って送るため、一つの通信回線を複数のユーザが利用できる上に、一部の回線に支障が生じた場合( DOD では当然、有事の際を想定していたと推測される)、迂回できる回線があれば、通信可能であるというメリットも備えている。
このパケット交換通信方式の概念は、1964年にPaul Baran (Rand Corporation) と1965年にDonald Davies (National Physical Laboratory, U.K.) がそれぞれ独立して発表したもので、"Packet"という言葉を初めて使ったのは Davies の方である。
c. ARPANET の構築
1968年 ARPA は ARPANET のための RFP (Request for Proposal) を作成した。1969年 秋 IMP (Interface Message Processor、パケット交換機) がUCLAに設置され、ARPANETの最初のノードになった。ノードは12月までに 4ノードまで拡張された。当時の通信速度は 56kbps であった。
ARPANET に接続されるホストコンピュータは、徐々に増えていった。
1971年 4月 ホストコンピュータの数は23
1974年 6月 ホストコンピュータの数は62
1977年 3月 ホストコンピュータの数は111
当時の主なアプリケーションは電子メールとリモートログインであった。
d. CSNET と BITNET
1980年代にARPANETを手本に2つのネットワークが構築された。全米科学財団(NSF : National Science Foundation)が構築したCSNET と IBM のサポートによるBITNET である。 前者は ARPANETと接続されていたが、後者はIBMのホストコンピュータを結ぶネットワークで、IBMユーザーである大学、研究機関をネットワークしてい た。
(2) TCP/IP の採用
インターネットで使われている主なプロトコルは、TCP/IP であるが、この TCP/IP は、インターネット上で開発され、実験され、改良されていった(現在も改良されている)通信プロトコルである。(開発の経緯から DODプロトコルとも、インターネットプロトコルとも呼ばれている。厳密に言えば、TCPはTransmission Control Protocol であり、IP は Internet Protocol であるが、通常TCP/IPはこれらのプロトコルを含むプロトコル群を指す。)
後に TCP/IP と呼ばれることになる通信プロトコルに関する論文が IEEE から公表されたのは、1974年 のことで、著者はVinton G. Cerf とRobert Kahn である。Vinton G. Cerf は、当時 Stanford Universityの教授であり、1976年にDARPAに入った。現在は Internet Society の President であり、 CNRI (Corporation for National Research Initiatives) の Vice-Presidentでもある。また、 Robert Kahn はMITの数学の教授であったが、1972年にDARPA の Director of the Information Processing Techniques Office になった。現在は CNRI (Corporation for National Research Initiatives) の Presidentである。
また、DARPA は 1980年に TCP/IP を UNIX (BSD 4.1 version) のカーネルに組み込むために資金を投入した。その結果、BSD 4.2 のバージョン以降、TCP/IP はUNIX の標準通信ソフトとして UNIX に組み込まれることになった。したがって、UNIX を OS とするコンピュータには通常 TCP/IP がバンドルされていることになる。
(参考)
1. UNIX は1969年にベル研究所の Ken Thompson と Dennis Richie が研究用の OS として開発し、そのソースプログラムを無償で公開したために、ワークステーションを中心に急速に普及した OS である。
2. ワークステーション (WS) は、32bit 以上のCPU (最近は RISC チップがよく用いられる)と高解像度のビットマップ・ディスプレイ、高度なネットワーク機能を備えた、極めてコストパフォーマンスの良い個人用のコン ピュータである。世界初のワークステーション "Apollo 100" は、1980年にアポロコンピュータ社によって商品化された(アポロコンピュータ社は1985年 5月にHP社に買収された)。現在の代表的なメーカーは、1982年 5月 米国サンタクララのサントーマス高速道路とウォルシュ道路が交差した「グランドゼロ」と呼ばれる場所に設立されたサンマイクロシステム社である。ワークス テーションの OS は、通常、UNIX が 用いられている。
1983年 1月、DARPAは TCP/IP を ARPANET の標準プロトコルとして採用した。その後も TCP/IP プロトコル群は、インターネットの中で、研究、実験され、使い勝手の良い、効率の良いものに改良されていくこととなった。ネットワークがネットワーク・ アーキテクチャの研究開発を促進し、さらにネットワークが普及していくというシナジー効果が顕著に現われた事例である。
なお、 国防総省は、1983年10月、ARPANET をセキュリティの観点から MILNET(約60ノード)とARPANET(約40ノード)に分割している。(MILNETは軍用のネットワークであるが、ゲートウェイで ARPANETで接続されていた)
(3) NSFNETの時代
NSF は独自に CSNET を運営していたが、1985〜86年、全米に 5つのスーパーコンピュータセンターを設立し、それらとユーザーである国立研究所、大学を結ぶ大規模なコンピュータネットワーク構築に乗り出した。これが NSFNET である
( 5つのスーパーコンピュータセンター)
Cornell University (the Cornell National Supercomputer Facility)
Princeton (the John Von Neumann Center) (注:現在はない)
Pittsburgh (the Pittsburgh Supercomputing Center)
the University of Illinois at Urbana/Champaign (the National Center for Supercomputing Applications)
University of California at San Diego (the San Diego Supercomputer Center)
この 5つのスパコンセンターの構想は、1970年代末にNSFが創設したCER (Computing for Education and Research Program) のなかで検討され、1980年の始めに 5つのスパコンセンターの設立について議会の承認を取付け、83-84年に場所の選定が行われた。
1986年、NSFはNSFNETに資金を拠出、通信速度は56kbps、主たる目的はスパコンセンターへのアクセス と研究者同士の情報交換にあった。また、同時にRegional Net (地域ネット)に対するサポートも開始した。しかし、この段階でも利用者はスパコンセンターを利用する研究者に限定されていた。また、当時はルーターの専 用機はなく、DECのPDP-11(ミニコン)を用いたFuzzball Router を利用していた。
なお、現在ルーターのトップメーカーである CISCO 社が設立されたのは NSFNETがスタートした年と同じで、1986年である。
1987年、NSFはNSFNET運営の5年間の契約をMerit社と締結(11月)(5カ月間の入札期間が設けられ ていた)。Merit社はパートナーである IBM社、MCI社とともに回線スピードをT1 (1.544Mbps)にする計画に着手した。 T1 へのグレードアップは1988年に完了した。当時、NSFNETに接続しているホスト数は約50,000 であった。この時初めて、学術研究用として一般の研究者にも解放され、利用者が爆発的に増加していくことになる。
(注)Merit社 : 正式には Merit Network, Inc. ミシガン州の 8 大学のコンソーシアムで 1966年に設立された non-profit-corporationである。1972 年からミシガン州内の Merit Research Network の運営を担当している
1989年 6月には NSFNET にその役割を譲ったARPANETが正式に消滅、NSFNETを中心としたネットワークはInternetと呼ばれるようになった。当時の接続ホスト数は 約 300,000である。
1990年 9月、Merit、IBM、MCI はANS社 (Advanced Network and Services) を設立し、NSFNET の運営は Merit と ANS の契約によって、ANS が行うこととなった。実際には MCI が回線を提供し、IBM がルーティング技術(ルーター)を提供し、Meritがネットワークの管理を行うという形で進められた。
1991年、ANSはバックボーン回線を T3 (45Mbps) 回線へのグレードアップを開始し、1992年 4月に完了させた。
この間、接続ネットワーク数、接続コンピュータ数、通信量は幾何級数的な増加をみせた。
図 9 インターネットに接続されているホストコンピュータ数の推移
【通信量(トラフィック)の推移】【接続コンピュータ数の推移】
1988年 8月 約 2億パケット/月 1988年 10月 56,000 台
1989年 5月 約 10億パケット/月 1989年 10月 159,000 台
1990年 5月 約 31.5億パケット/月 1990年 10月 313,000 台
1991年 5月 約 75.6億パケット/月 1991年 10月 617,000 台
1992年 3月 約 149億パケット/月 1992年 10月 1136,000 台
1993年 10月 2,056,000 台
なお、現在、米国政府が関係しているNational Backbone は、このNSFNET 以外に DOD のMilnet, DOE のESNET (Energy Science Network), NASA のNSI (NASA Science Internet) がある。
(4) コマーシャルネットの台頭
以上のように インターネットは、当初研究者のネットワークとして発展してきたが、その利用価値は一般のコンピュータ・ユーザにとっても大きいことから、非研究者のため のインターネットサービスを提供するコマーシャルネットが生まれた。
初めてのコマーシャルネットは、UUNETであり、1987年 5月に電子メール、電子ニュース利用を可能とするUUCPサービスを開始した。(IP接続が可能なInternet サービスの開始は 1990年 1月)
この他にも、1989年 春には CERFnet が事業を開始し、1990年 1月には PSI (Performance Systems International) が事業を開始した(会社の設立は 1989年)。
一方、1990年にNSFはAUP (Acceptable Use Policy) の中に"commercial use"を禁止する条項を追加し、NSF を商業利用することを禁止した。
翌1991年 5月、Merit、IBM、MCI はANSの子会社としてANS CO+RE社を設立、商用サービスを開始した(CO+RE とは Commercial と Research を意味する)。ちなみに、このANS CO+RE は、ネットワークとしてANS の運営するバックボーンネットワーク(つまり、NSFNET のバックボーン・ネットワークと同じもの)を利用しているため、他の商用ネットワーク事業者から不公正であるとの批判を浴びることとなった。なお、 1991年にNSFはMeritとの契約を 18カ月延長すると発表した。(これによって契約の終了は 1994年春となった)
1992年 4月には、米国の通信事業者である Sprint は子会社 SprintLink を設立し、商用インターネットサービスを開始(営利組織に対するサービスは 7月から)。また1992年 8月には、プリンストン大学がmid-level ネットワークとして設立した JvNCnet の所有権が営利企業 Global Enterprise Service, Inc. に譲渡され、商用サービスを開始した。
(「3. 米国の商用インターネットサービス」の章を参照のこと)
(5) ギガビット・ネットワークの時代へ
a. HPCC (High Performance Computing and Communications) 計画とは
1991年、HPC (High Performance Computing) 法が成立し、翌92年にHPCC (High Performance Computing and Communications) 計画がスタートした。この計画は、高性能コンピュータ/ネットワークの実現、利用を加速するための 5年間の研究開発プロジェクトであり、この中で、NREN (National Research and Education Network) の 5年以内の構築が認知された。この計画には、米国連邦政府の 8 省庁/機関(DOD, NSF, DOE, NASA 等)が参加しており、 最終的な狙いは、米国の生産性及び産業競争力の向上にあると言われている。ゴア副大統領が熱心な推進者の一人である。
現在はNII(National Information Infrastructure)構想の一部として考えられており、HPCC 計画は NII の技術的基盤を提供するものと位置付けられている。
b. HPCC 計画の目的
HPCC計画の目的は次の3つであり、これを見るかぎり完全なナショナルプロジェクトである。
(a) 高性能/高速計算とコンピュータネットワーク分野における米国の技術的リーダーシップの確立
(b) 上記分野の技術革新の促進を図り、米国の経済、安全、教育及び地球環境に寄与
(c) 上記分野の技術を産業に取り入れ、米国の生産性/競争力の向上に寄与
c. 技術的な達成目標
(a) テラフロップス(TFLOPS)以上の計算能力の実現
テラフロップス:1秒間に(不動点小数)演算を 1兆回
現在の超並列コンピュータはピーク性能で百ギガクラス(実効上はこの数分の一以下)
(b) その上で稼働するソフトウェア及び数値計算アルゴリズムの開発
(c) ギガビット/秒(Gbps)以上の通信能力を有するネットワークの実現
(d) 高度な専門知識を有する人材の育成
d. 計画の枠組み
次の5つのテーマに分けられている。(スタート時点では4テーマであった)
(a) 高性能、高速計算システム(HPCS : High-Performance Computing System)
- 次世代の計算機システムの開発
- システム設計ツールの開発
- 先進的プロトタイプシステムの開発と性能評価
(b) 教育研究ネットワーク(NREN : National Research and Education Network)
- 教育/研究機関間のネットワークの構築
- ギガビットテストベット
Aurora, Blanca, Casa, Nectar, Vistanet,Magic とよばれる実験ネットワークの構築
(c) 先進ソフトウェア技術とアルゴリズム(ASTA : Advanced Software Technology and Algorithms)
- 高性能計算機用のアプリケーションソフトウェアの開発
- 並列処理用のシステムソフトウェアとツール
- 並列処理用の数値計算アルゴリズム
(d) 情報基盤技術と応用 (IITA : Information Infrastructure Technology and Applications)
- HPCC で開発された技術を用いたプロトタイプシステムの開発
- 製造設計、医療、教育、環境、エネルギー等の分野への応用
(バーチャルリアリティ、画像認識、言語および会話理解等の技術を含む)
(注)この項目は 1994年度予算から追加された。
(e) 基礎研究と人材育成
- 基礎研究、教育、訓練、カリキュラム
e. 予算額
予算額は次の通りであるが、実際には、既存の情報技術、ネットワーク技術の研究開発費の看板の掛け換えも含んでいると 言われている。
1992年度: 655百万ドル(約 780億円)
1993年度: 784百万ドル(約 940億円)
1994年度:1,096百万ドル(約1206億円)
各テーマ別の割当は、HPCS: 22%, NREN: 16%, ASTA: 37%, IITA: 9%, BRHR: 16% (1994FY)
f. 利用分野
研究成果の利用分野として次のような例が挙げられている。
- 気象、天候に関する予測
- 地球環境変化(酸性雨、オゾン層の破壊、海洋汚染等)のシミュレーション
- 水循環の3次元モデル
- 汚染拡散のシミュレーション
- 乱流のシミュレーション
- 燃焼システムのシミュレーション
- 人間の染色体のマッピング
- 新素材の性質の把握
- 分子、原子構造の解明
- 有機物質合成等の新素材開発
(計算化学:分子軌道法、経験的分子軌道法、分子力学法、分子動力学、電子バンド理論)
- 磁気媒体の解析
- 高温超伝導現象の解明(シミュレーション)
- 核融合の解析(3次元モンテカルロ法、プラズマ乱流解析)
- 航空力学
g. 運営体制/実施組織
この計画は連邦科学工学技術調整委員会(FCCSET:Federal Coordinating Council for Science, Engineering and Technology) の下に設置されている物理/数学/エンジニアリング科学委員会(PMES : Committee on Physical, Mathematical, and Engineering Sciences)が担当している。
FCCSETは、連邦政府の科学技術の重要課題への総合的取組みのためのビジョン作成/予算調整を行う委員会であり、 メンバーは政府高官、議長は OSTP (大統領府科学技術政策局)局長である。
(6) 新しい秩序
a. NREN(1994年 5月からのNSFNET)の姿
18カ月の延長が認められた NSF と Merit との契約は、1994年4月末で終了する。NSF は、その後の新しい契約を後述する 5つの要素に分けて考えている。
重要な変更点は、スーパーコンピュータセンター(SCCs)の利用者以外は、政府の直接的なサポートを受けない NSPs (Network Service Providers)の運営するバックボーンを利用することになるという点である。つまり、アカデミックな利用であっても、商用インターネットのバック ボーンを利用することになる、従来のNSFNETは消滅するということである。これによって、PSI等の商用インターネット事業者が不公正であると指摘し てきた(実際に不公正であるかどうかは不明だが)NSFによる一般学術研究目的の利用者のためのバックボーンへのサポートがなくなるのである。もちろん、 DODやNASAの特定目的の(政府がサポートする)ネットワークは存在するが、一般の利用者のトラフィックは、ANS CO+RE, SPRINTLINK, UUNET等のネットワークを利用することになる。
したがって、NSFNETに無料で接続していたアカデミックに限定された地域ネットワークも、今後は接続料を払って商 用のNational Backbone を利用することになる。この接続料の負担が地域ネットの発展を阻害しないように、NSF は地域ネットに対する最長 4年間の援助を行うこととしている。
(a) NAPs (Network Access Points)
種々のネットワークが相互に接続されるポイントである。ここに接続されるネットワークはvBNS Backbone Network(後述)、NSP (Network Service Provider, 後述) の運営するBackbone Network、Regional Network が想定されている。優先的に設置される場所としては、California, Chicago, New York City の3カ所であり、この他にAtlanta, Boston, Denver, Texas, Washington D.C. が候補として挙げられている。NAPs が最低限サポートしなければいけないプロトコルは、TCP/IP (Internet Protcol) とOSI のCLNP (Connectionless Networking Protocol) とされている。
このNAPs を運営するNAPs Manager は政府のサポートがある。
(b) RA (Routing Arbiter)
ネットワークを流れる情報のルーティングに必要なデータベースを提供する役割である。当然のことながら、TCP/IP に対応するBGP (Border Gateway Protocol) とISO IDRP (Interdomain Routing Protocol, ISO10747) に対応できるようにすることが条件になっている。
この部分についても政府のサポートがある。
(c) vBNS (Very High Speed Backbone Network Services Provider)
NSF がサポートしている 5つのスーパーコンピューティングセンター (SCCs : Supercomputing Centers)とそのユーザーを結ぶ超高速の Backbone Network である。vBNS は NAPs に接続されるが、利用はSCCs のユーザに限定される。ネットワークのスピードは、155Mbps以上である。
この部分についても政府のサポートがある。
(現在のスーパーコンピュータセンター)
Cornell Theory Center
National Center for Atmospheric Research
National Center for Supercomputing Applications
Pittsburgh Supercomputing Center
San Diego Supercomputing Center
(d) Regional Networks
Regional Network はインターネットのきわめて重要な部分であり、NSF も1986年以来、Regional Network の立ち上げを支援してきたが、これを続ける予定である。Regional Network は NSPs か NAPs に接続されることになるが、政府の支援はその NSPs か NAPs への接続料金を支援する形で行われる。ただし、支援は最長 4年間で、徐々に減額していく形で行われる予定である。
(e) NSPs (Network Service Providers)
通常のユーザ(つまり、SCCs : Supercomputing Centers を利用するものでないもの)が利用することになる National Backbone Network 業者である。各 NAPs 間を接続することになる。
政府はこの部分については一切ファンドを行わない。したがって、この部分は現在の商用インターネット事業者が担うこと になる。
b. 未来に向けての動き
(a) 電子出版
研究者は既にインターネットを通じて論文を配布・交換しているし、政府の公開可能なドキュメントもその多くがインター ネット上で公開されている。また、オライリ・アンド・アソシエイツのようにインターネット上でオンライン上で "Grobal Network Navigator (GNN)" という雑誌を提供しているところもある。(現在このGNNはインターネットユーザなら無料で手に入れることが可能である。その代わりにオライリ社はこの GNNに掲載されるコンピュータ等の製品情報の提供者から広告料を取っている。)
この傾向は、他の分野にも広がって行くだろう。それも文字情報(テキストデータ)だけではなく、ハイパーテキストが増 加して行くと考えられる。たとえば、HPCC 計画の概要を紹介するブルーブックの "Grand Challenges 199x" は、現在、美しいカラーの画像を含むハイパーテキストの形でインターネット上で公開されている。
(b) Cellular 技術の導入
現在、パソコンと通信ソフト、モデムを利用すれば、電話回線を通じてインターネットにアクセスすることが可能である。 次は当然、Cellular 技術を用いて、どこからでも無線でインターネットにアクセスできるようになるだろう。(無論、現在でも移動体電話を経由して利用可能であるが、さらに品質 の良い高速のサービスが提供されるようになるだろう)
(c) CATV との接続
米国の商用インターネット事業者は、インターネットとCATV の接続について研究、実験を始めている。例えば、PSI (Performance Systems International ) 社は、コンチネンタルケーブルビジョン社と共同で、ケーブルが接続されている家庭や企業から 10Mbps でインターネットへのアクセスを可能とするサービスをマサチューセッツ州東部で開始し(1994年初頭の予定 )、今後サービスエリアを拡大して行く予定である。費用は月額 75〜100ドル程度になる予定。他のCATV業者同様のサービスを開始すると見られている。なお、CATVのケーブルを利用すれば、将来は 100Mbps以上のデータ通信にも対応できると言われている。
(d) マルチメディア化
既にインターネットのマルチメディア化はかなり進んでおり、音声、静止画は実用化されており、現在、動画も実験が行わ れている。IPng (ng は next generation の略)と呼ばれる次世代のインターネットプロトコルは完全なマルチメディア対応になると考えられている。
現在開発が進んでいる動画情報の圧縮技術、上述のインターネットとCATVとの接続を考えると、数分のデータ転送で 1時間以上の動画を送ることが可能になると予想される。とすればビデオオンデマンドはインターネット上のサービスになる可能性もある。
3. 米国の商用インターネットサービス
(1) 概要
米国の商用インターネットサービスの市場規模は、1992 年で約 1,500万ドルと推定されている。この市場は急速に拡大しており、その伸率は年間 300〜500%と極めて高い。(一方、非営利利用の伸率は、 30〜50%と言われている)
なお、1993年 11月現在で米国内には 35の商用インターネット事業者がある。(この数には、ダイヤルアップサービス(電話回線によるインターネットへの接続サービス)のみを行っている事業者 は含まれていない)
(2) 各社の概要
米国における主な商用インターネットサービス企業の概要を以下に示す。
a. PSI (Performance Systems International)
- 1989年設立、1990年 1月事業開始
- 約 50% の市場シェア、
- NYSERnet (New York State Education and Research Network) から独立
- CIX (Commercial Internet Exchange) の設立メンバーの1社(1991年 3月に設立)
- 従業員:約50名、売上:770万ドル(FY1992)
- 本社はヴァージニア、サービスは全米
- 連絡先1180 Sunrise Valley Drive Suite 1100
Reston, VA 22091 U.S.A.
(TEL) 703-620-6651(FAX) 703-629-4586
E-mail:info@psi.com
b. UUNET
- 1987年 5月にUUCPサービスを開始、Internet サービスの開始は 1990年 1月
- 従業員:約55名、売上:500万ドル(うちInternet サービス分は200万ドル)(推定)
- AlterNet はUUNET が提供する商用 Internet サービス
- 連絡先Suite 570, 3110 Fairview Park Drive
Falls Church, VA 22042, U.S.A.
(TEL) 703-204-8000, 800-4UU-NET3
E-mail : info@uunet.uu.net
c. CERFnet (California Education and Research Federation Network)
- 1989年 春 事業開始
- San Diego supercomputer Center 内に設置
- カリフォルニア州の 300を超える組織を連結
- 従業員:約25名、売上:200万ドル(推定)
- 連絡先PO Box 85608
San Diego, CA 92186-9784, U.S.A.
(TEL) 800-876-2373, 619-455-3990
E-mail : help@cerf.net
(注)Regional Network に分類されることもある
d. JvNCnet
- 1986年プリンストン大学が Middle-NSF-net の一つとして構築
- 当初の目的は Princeton Supercomputer Center のサポート
- 1992年 8月 営利企業 Global Enterprise Service, Inc.が、JvNCnet の所有権を取得
- 1992年 10月に CIX に加盟
- 連絡先Sergio Heker
6 von Neuman Hall
Princeton University
Princeton, NJ 08544, U.S.A.
(TEL) 609-258-2400
E-mail : market@jvnc.net
(注)Regional Network に分類されることもある
e. ANS CO+RE
- 1991年 5月 Merit、IBM、MCIはANSの子会社としてANS CO+RE社を設立
- ANS の持つバックボーンネットワーク(NSFNET と同じもの)を利用
- 連絡先2901 Hubbard Road
Ann Arbor, MI 48105, U.S.A.
(TEL) 313-663-7610
E-mail : maloff@nis.ans.net
f. SprintLink
- 1992年 4月事業を開始(営利組織に対するサービスは 7月から)
- US Sprint 社の子会社
- 連絡先Sprint International
13221 Woodland Park Drive
Herndon, VA 22071, U.S.A.
(TEL) 703-904-2156
E-mail : mkiser@icm1.icp.net
(3) CIX (Commercial Internet Exchange)
1991年 3月、CERFnet, PSI, UUNET の3社によってCIX (Commercial Internet Exchange)の設立が発表された。CIX は、商用インターネットの利用者が、アカデミックネットワークを経由せずに相互に通信可能とするために設けられたネットワークの相互接続ポイントである。
93年 11月現在で 24 のネットワーク事業者が加盟している。この中には英国の 商用インターネット事業者(3 社)、北欧(1社)、香港(1社)が含まれている。
年会費は 10,000ドル。
(4) 地域ネット (Regional Network) の商用化
そのほとんどが研究・教育のためのネットワークとしてスタートした Mid-level/Regional Network の主なユーザーは大学であるが、K-12 にも広がりつつある。また、企業ユーザーが増加する中で、商用インターネット化するもの、運営組織は非営利であるが、営利目的の通信を認めるネットワーク が増加している。(例えばR&E(研究と教育)と商用で利用料金を分けているところが多い)
地域ネットの中には、CIX に加盟しているネットもある。(次項参照)
例:1992年10月、BARRNet (Bay Area Regional Research Network)
1992年10月、NEARNET (New England Academic & Research Network)
4. 米国の中間/地域ネットの状況
(1) 概要
1991年 11月現在、NSFNET に接続されている中間/地域ネットワークは 30程度であり、このうち、11のネットワークが営利組織の接続を認めており、6ネットワークが CIX に接続(加盟)している。1986年以来、NSF はこうした中間/地域ネットワークの多くの設立を補助してきたが、その援助は立ち上がりの期間のみであり、ほとんどの中間/地域ネットワークは、独立採算 制を採用している。
(2) 中間/地域ネットワークの一覧
a. BARRNet (Bay Area Regional Research Network)
- 北部・中央カリフォルニア、CIX加盟、組織は非営利であるが商用利用可
- 1986年にカリフォルニア大学の4校のコンソーシアムとスタンフォード大学、NASA/Ames研究所によって設立。1992年 10月にCIX に加盟
b. CICNet (Committee on Institutional Cooperation)
- 米国中西部(ミネソタ、ウィスコンシン、アイオワ、インディアナ、イリノイ、ミシガン、オハイオの各州)、組織は非営利であるが商用利用可
- 1988年に設立、1989年から運用、NSFから2年間にわたり 120万ドルの援助を受けた。
c. Colorado Supernet
- コロラド州
d. CONCERT (Communications for North Carolina Education Research and Technology)
- ノースカロライナ州、組織は非営利であるが商用利用可
- 州議会が設立した Microekectronics Center of North Carolina (非営利組織)の一機関である Center for Communications が運営している。
- ANS CO+RE に接続している。
e. CSUNet (California State University Network)
- カリフォルニア州、
f. Los Nettos (Los Angeles Area Regional Networks)
- カリファルニア州南部
g. Merit/MichNet
- ミシガン州、組織は非営利であるが商用利用可、Merit Network, Inc. が運営
- Merit は1966年に設立され、1972年には大学間パケット交換ネットワークを運営開始
h. MIDnet (Midwestern States Network)
- ネブラスカ、オクラホマ、アーカンソー、ミズーリ、アイオワ、カンザス、サウスダコタの各州
i. MRNet (Minnesota Regional Network)
- ミネソタ州、組織は非営利であるが商用利用可
j. MSEN
- ミシガン州
k. NCSAnet (National Center for Supercomputing Applications Network)
l. NEARnet (New England Academic & Research Network)
- 米国北東部のメーン、ニューハンプシャー、バーモント、コネチカット、ロードアイランド、マサチューセッツの各州、CIX に加盟(1992年 11月)、運営組織(BBN)も営利で商用利用可
- 地域は限られるが、事実上、商用ネットワークである。
m. NevadaNet (The Nevada Network)
- ネバダ州
n. North West Net (Northwestern States Network)
- 米国北西部のワシントン、オレゴン、アイダホ、モンタナ、ノースダコタ、ワイオミング、アラスカの各州、
o. NYSERNet (New York State Education and Research Network)
- ニューヨーク州、1985年に非営利企業として組織、
- 1990年にネットワークの運用技術者たちが、独立してPSI (Performance Systems International) を設立
- 現在のNYSERNet の運用は PSI に任されている。
p. OARnet (Ohio Academic Resources Network)
- オハイオ州、組織は非営利であるが商用利用可
- ネットワーク・オペレーティング・センターは Ohio Supercomputer Center にある
q. PREPnet (Pennsylvania Research and Economic Partnership Network)
- ペンシルベニア州、組織は非営利であるが商用利用可
- Commonwealth of Pennsylvania, Bell of Pennsylvania, PREPnet Consortium of University によって運営
r. PSCnet (Pittsburgh Supercomputing Center Academic Affilitates Group Network)
- 米国東部のペンシルバニア、オハイオ、ウエストバージニアの各州
s. SDSCnet (San Diego Supercomputer Center Network)
- サンディエゴ周辺
t. SESQUINET (Texas Sesquicentennial Network)
- テキサス州
u. SURAnet (Southeastern Unversities Research Association Network)
- 米国南東部のウエストバージニア、バージニア、サウスカロライナ、ノースカロライナ、テネシー、ケンタッキー、ルイジアナ、ミズーリ、アラバマ、ジョージ ア、フロリダの各州
v. THEnet (The Texas Higher Education Network)
- テキサス州
w. UIUC/net
- イリノイ州
x. USAN (University Satelite Network)
y. VERnet (Virginia Education and Research Network
- バージニア州
z. Westnet (Southweatern States Network)
- 米国西部のアリゾナ、コロラド、アイダホ、ニューメキシコ、ユタ、ワイオミングの各州
aa. WiscNet (The Wisconsin State Network)
- ウィスコンシン州
5. 欧州の現状
欧州域内のインターネットも、その多くが草の根的にスタートしている。たとえばアムステルダムを中心としてほぼ欧州全 域をカバーしているEUNETはその代表的なネットワークである。1992年にはEBONE協会が設立され、これらの草の根ネットワークを接続するバック ボーンネットワークが構築されたが、EU及び各国政府の支援を受けるEuropaNETの構築によって、このEBONEは存続の危機に立たされている。問 題はEBONEがAUP (Acceptable Use Policy) フリーの(利用目的を問わない)ネットワークであるのに対して、EuropaNETはAUPのある、つまり研究用途のネットワークであることにある。米国 を中心にインターネットが商用化(あるいはAUPフリー)に向かっている時期に、欧州が研究用途のネットワークを欧州のバックボーンとして育成しようとし ているのは、時代の流れに逆行しているのではないかという関係者の声もある。いずれにしても、欧州のインターネットも急速に普及しつつ、その姿を変えよう としている。
(1) EBONE
このEBONE が構築されるまで、欧州のIPネットワークはCERN等のいくつかの拠点を相互に接続した網の目状のネットワークであり、米国への海外回線も 20本近く存在していたが、1992年にEBONE協会が設立され、域内のネットワークを接続するための高速基幹ネットワークの運用が開始され、米国への 回線も数本に整理された(ネットワークの運用は 1991年 9月から)。
EBONE は、現在、6つのEBS (EBONE Boundaly System) と呼ばれるノードを中心に構成されており、各EBS は 256〜512Kbps の回線で接続されている。現在 EBS は、Amsterdam, Bonn, CERN (Geneve), London, Paris, Stockholm に置かれており、このうち CERN (Geneve), London, Stockholm は、米国への海外回線を保有している(接続先はいずれも米国東海岸にある GIX (Global Internet eXchange) である)。各国/各地域のネットワークは、このEBS に接続することによって、相互に接続されている。
AUPフリー(商用利用も可能)であり、経費は会員の寄付(会費?)によって賄われている。
しかし、次に述べるEuropaNET の構築によって、バックボーン接続をEBONEからEuropaNETに切り替る(あるいは切り替ると表明した)研究ネットワークが増加しており、 EBONEは現在、ネットワークの縮小を検討中である。現在、検討中の案は1994年 7月 1日以降ノードをParis と Vienna の二カ所とし、その間を512Kbpsで結び、米国にはParisから1.5Mbpsで接続するというものである。
(2) EuropaNET/EMPB (DANTE)
EuropaNET は、EUREKA計画の下で行なわれた COSINE プロジェクト (The Cooperation for OSI Networking in Europe project) で構築された実験的ネットワーク後継ネットワークとして位置づけられるものである。COSINE プロジェクトは、1992年末までに、ヨーロッパ域内の研究者のための OSI ネットワークを構築する目的で開始された。したがって、EuropaNET は、少なくとも OSI, TCP/IP を含むマルチプロトコルのネットワークとして構築されている。EuropaNET は全欧州の Backbone ネットワークとなるとともに、他の欧州域内のネットワークとのゲートウェイおよび米国への国際接続を提供することになっている。
なお、EuropeNET はアカデミックネットワークであり、商用利用は許されていない。
推進主体は RARE (Réseaux Associés pour Recherche Européene) であり、計画は RARE のタスクフォースの最終報告書 "Towards a Single European Infrastructure" ("the Green Book" と呼ばれている)に基づいて進められている。
計画をよりスムーズに進めるため、RARE は英国 (Cambridge) に企業を設立した。この企業が DANTE (Delivery of Advanced Network Technology to Europe Limited, 旧名は Operational Unit Limited) である。
DANTE は、1993年 7月 5日に正式にスタートし、1993年 9月15日現在で従業員数が 4人であるが、10月には 8人となり、94年 7月には 12人になる予定である。すでに COSINE から引き継いだサービス(X.25, X400のE-mail 等)が利用可能であり、1993年末には TCP/IPプロトコルも正式に利用可能となった。現在、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、英国が 2Mbps で EuropaNET に接続している他、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スロヴェニア、スイス等が接続を完了している。(EMPB (European Multi-Protocol Backbone) は、EuropaNETの中核となるネットワークでありこのX.25とTCP/IP の両方をサポートする 2Mbps のバックボーンネットワークを指す。)
国際接続は、1993年末まで EBONE との相互接続契約によって EBONE 経由で行なわれていたが、DANTE の計画では、1994年からは独自の大西洋回線 (E1 : 2Mbps) を確保し、Washington D.C. にあるGIX (Global Internet eXchange) に接続する予定である。
また、EBONE との接続は、1993年末までは Amsterdam と London で各々 512Kbps の回線で行われていたが、1994年からは Amsterdam において 1Mbps で接続されている。
(3) RARE (Réseaux Associés pour Recherche Européene)
RARE はヨーロッパのネットワーク組織とユーザの団体であり、その目的は調和の取れたコンピュータネットワークの構築と協力を推進することにある。会員は formal national member(19ヶ国), associate national member, CERN のような international member, CREN のような liaison member からなる。
(4) EuroCAIRN
EuroCAIRN は現在、Eureka計画の一環として検討中の高速通信ネットワーク、あるいはネットワークを構築しようとするプロジェクトである。現在想定されている回 線の速度は 34Mbps である。EC委員会のDG13は、このネットワークのサポートを検討している。
(5) その他(欧州各国/各地域のネットワーク)
a. EUNET
ヨーロッパにおける最大の会員制研究機関向けネットワークで、EBONE の会員でもある。1977 年に設立された EurOpen (European Forum for Open System、非営利組織) が1982年から運営しているネットワークで、アイスランド、ロシア共和国、チュニジアまで及ぶ広大な地域にサービスを提供している。現在の会員は 6000以上と言われている。ネットワークはアムステルダムを中心とした星型である。
b. JANET (Joint Academic Network)
イギリスのアカデミックネットワークで、1988年に構築された。主要なプロトコルはX.25で、回線スピードは 9.6Kbps〜 2Mbps である。1990年からは、この後継となる最高 2.5Gbps の高速コンピュータネットワーク(SuperJANET)の研究プロジェクトがスタートしている。
c. UKnet
UKnet は、英国のIPネットワークで、1984年、当初JANETのX.25のネットワークにニュースとメールサービスを提供するために設立された。1991年 からはIP接続のサービスを開始し、専用回線で約 800のユーザにインターネットサービスを提供している(このうち約300がJANET X.25のネットワークに接続されている)。商用ユーザも含まれており、料金は英国UNIX User Groupe の会員であるか、商用ユーザであるかによって異なる。
d. PIPEX
PIPEX は英国の1992年4月にサービスを開始した商用インターネットである。米国のCIXの最初の非米国会員でもある。IPネットワークを専門とする Unipalm Ltd. の一部門である。
e. Demon Internet
Demon Internet は英国の商用インターネットである。
f. DATANET
DATANET はフィンランドのTelecom Finland が運営するマルチプロトコルのネットワークであり、1990年からサービスを開始している。回線速度は最高 2Mbps であり、プロトコルは、TCP/IP, DECnet, ISO CLNP, Novell IPX, Apple Talk, X.25 などをサポートしている。
g. SWIPNET
SWIPNET はスウェーデンのIPネットワークで、サービスは1991年に開始された。Stockholm でEBONE に接続されている。
6. 日本の Internet の現状と今後の見通し
(1) 概況
日本におけるインターネットの普及は、米国に比べて 6〜7 年遅れていると言われている。平成 5年 10月現在で、インターネットに接続されている日本国内のコンピュータの数は、約 42,800台であり、米国の 1,475,700台の 30分の 1 以下である。バックボーンネットワークの回線の太さも、米国が 45Mbps であるのに対して、日本は 0.5 〜 0.8 Mbps と数十分の一である。
日本におけるインターネットの歴史は、JUNET に始まる。1984年 10月に東京大学、東京工業大学、慶応大学の三つのサイトを UUCP で接続してJUNETの実験は始まった。接続サイトは徐々に増加していったが、初期の JUNET はすべて公衆回線(電話回線)接続であった。
1987年にWIDEプロジェクトがスタートし、1988年にはJAINが、1989年にはTISN が立ち上がり、日本のインターネットはIPネットワーク時代へと移行する。JUNET もこうしたIPネットワークを幹線として利用することによってさらにユーザを増やしていった。
1992年には、文部省の予算で学術情報センターが運用を担当するSINETがサービスを開始した。SINETは政府 資金による最初の学術研究ネットワークである。
インターネット関係組織についても、1989年に研究ネットワーク連合委員会(JCRN)が、1991年12月には日 本ネットワーク・インフォーメーション・センター(JNIC, 後にJPNIC と改称)が、1992年にはIEPGに対応する組織としてJEPG (Japan Engineering Planning Group) が発足した。
現在、日本でも商用インターネットサービスが始まる一方で、地域ネットワーク作りが活発に行われている。また、国立研 究機関等を結ぶ「省際研究情報ネットワーク」構想が、科学技術庁を中心に進められている。
(2) 全国ネットワークの現状
主な全国ネットワークを以下に示す。
a. SINET (Science Information Network)
文部省予算で学術情報センターが運用、1992年サービス開始、研究目的に限定(研究&研究支援)
米国 FIX-West との海外回線を所有(512Kbps)、国内も主として512Kbps
平成 5年度の補正予算でATM交換機を導入し、X.25 のパケット網との統合を予定
平成 6年度に国内主要回線を 6Mbitクラスにアップグレードする計画がある(予算要求中)
同様に海外回線も T1 (1.5Mbps) にアップグレードするとともに、米国を横断し欧州への回線 (E1:2Mbps) をサポートする予定である。
参加機関 約120、(接続大学数は30〜40という情報もあるが未確認)
代表者は浅野正一郎教授(学術情報センター)
b. WIDE Internet
WIDEプロジェクトのメンバー(企業:47、大学:29、その他:15)によってサポート、WIDEプロジェクトの研究に限る、1987年研究プロジェクト開始
回線速度:9.6 - 768Kbps、ハワイ大学との間に 192Kbps の海外回線を保有
主催者は村井純氏(現・慶応義塾大学環境情報学部助教授)
c. TISN (Todai International Science Network)
TISNのメンバー(大学:13、政府:30、その他:5)によってサポート、
科学研究目的、1989年開始、TCP/IP と DECnet をサポート
回線速度:64 - 512Kbps、NASA/Ames研究所との間に 512Kbps の海外回線を保有
DECnet もサポート
d. JOIN (Japan Organezed InterNetwork) /Bitnet
Japan Bitnet Association がサポート、東京理科大がオペレート
1993年スタート、利用組織は 13、ドメイン数は6(BITNETは約 100の大学が利用)
海外:米国 56Kbps、韓国 9.6Kbps、台湾 9.6Kbps (韓国、台湾の回線スピードアップの計画あり)
e. JUNET (Japan Univercity Network)
歴史的に日本で一番古いネットワーク(1984年スタート)
(村井純氏(現・慶応義塾大学環境情報学部助教授)が指導者)
UUCP (UNIX TO UNIX COPY) による電子メールネットワーク、
JUNET協会が運用、加入機関は約 550、大学、民間企業の研究開発部門
平成 6年10月、解散予定
f. InetCLUB
会員制、海外とのメールを実費で転送する「同好会」、ホストはKDD研究所
g. JAIN (Japan Academic Inter-unvercity Network)
文部省科学研究費の総合研究プロジェクトとして 1988年にスタート
代表者は野口正一氏(当時、東北大学教授)
学術情報センターの保有するX.25 の上で IP 接続を行ない30以上の組織を接続
現在はバックボーンとしてSINET を利用しており、研究グループ的な組織として存在
この他に、国際的な研究プロジェクト遂行のための専門分野のネットワークとして、高エネルギー物理学研究所を中心とす る HEPNET-J、人遺伝子の解明を進めているゲノム計画のための Genomenet(科学技術庁)、21世紀の情報処理技術の基盤となる技術の研究を進める Real World Computing Program (RWC 計画)のためのRWCnet がある。
(3) 地域ネットワークの現状
(この項については現在、最新情報を収集中)
以下に主な地域ネットワークを紹介する。
a. HINET(北海道学術インターネット協議会)
参加者は道内の8大学、3高専
事務局は北海道大型計算機センター
SINET, NORTH に接続
b. NORTH (Network Organization for Research and Technology in Hokkaido)
参加ドメイン数:22
運営主体は NORTH協議会、
商業利用は禁止されていないが、現在は研究目的に限定されている模様
協議会の会費はUUCP接続で 25,000円/月、IP接続で 40,000円/月 + 入会費 30,000円
道内の大学関係のインターネットであるHINETと接続、WIDEとも接続
外国は大学はSINET経由、民間企業はWIDE経由らしい
c. TOHOKU-INET
運営主体は TiA(東北インターネット協議会)
TiAはネットワークに関する研究、情報交換、啓蒙普及活動を行っている 事務局は、仙台応用情報学研究振興財団
TOPIC と接続
d. TOPIC (Tohoku Open Internet Community)
事務局は東北大学大型計算機センター(東北学術研究インターネット協議会)
参加者は東北地域内の14大学、1短大、3高専、2公的機関
SINET, WIDE, TIA と接続
e. RIC-Tsukuba (Regional Internet Connection-Tsukuba Committee)
事務局は筑波大学学術情報処理センター(つくば相互情報処理センター)
参加組織数は6
f. TRAIN (Tokyo Regional Academic Inter-Network)
事務局は東京大学大型計算機センター
参加者は関東地域の27大学、2高専
SINET, WIDE, TISN と接続
g. NICE(名古屋大学キャンパス情報ネットワーク)
事務局は名古屋大学大型計算機センター
参加者は東海地域の11大学、2短大、1高専、1研究所
SINET, JAR-net(東大地震研)、HEPNET と接続
h. TRENDY (Tokai REgional Network DYnamics)
参加者:10大学、1高専、34民間企業、7公益法人
運営主体は 東海インターネットワーク協議会(会長は中京大学の福村晃夫教授)、
学術研究目的に限定
会費はUUCP接続で 3000円/月、IP接続で 20,000円/月
SINETとの接続を93年度中に実施予定
NICEとの協調を図っているところ
i. NCA5(Network Community Area 5)
事務局は京都大学大型計算機センター
SINET, WIDE, TISN と接続
j. ORIONS(Osaka Regional Information & Open Network System : 大阪地域大学間ネットワーク)
参加ドメイン数:約 50(10大学、1公的機関という調査もある)
運営主体は 任意団体、事務局は大阪大学大型計算機センター
接続できるのは大学、政府のみ、当然研究用
今年度はなし、将来は未定
WIDEと接続
k. WINC
参加組織数:約 70組織
会費は80,000円/月(無制限)と50,000円/月( 300分/日)
現在はWIDEと接続、IIJが関西に拠点を持てばIIJと接続予定
l. CSI
参加ドメイン数:約 18
運営主体は 任意団体、中国・四国インターネット協議会
接続組織に制限はないが、非営利目的の利用に限る
入会費は1万円で、年会費は2万円
WIDEと接続、SINETとも接続予定
m. KARRN (Kyushu Area Regional Research Network)
参加ドメイン数:約 40
運営主体は 任意団体、KARRN協会
大学、企業、官公庁が接続可能、営利活動は認めていない
年会費は1口10万円(賛助会員は5口以上)
WIDE、SINET、TISN/Genomeと接続
(4) 日本の商用ネットワークの現状
以下に日本の商用インターネットを紹介する。
a. Spin (AT&T Jens)
AT&T Jens は米国 AT&T(60%出資)と日本企業22社の出資による特別第2種の通信事業者
日本の主な出資企業はKDD、富士通、日立製作所、日本興業銀行
コマーシャルインターネットサービスは、Spin とInterSpin の2種類
Spin はUUCPによる電子メールを中心としたサービスで、92年11月サービス開始
InterSpin は 93年10月にサービスを開始したIP接続サービス
現在のアクセスポイントは東京と大阪、今後、札幌、仙台、名古屋、広島、福島を追加予定
米国へは独自の回線で PSInet と接続
利用料金の例:InterSpin 専用回線接続で 64Kbps 1端末当たり ¥385,000/月
Spin アナログ公衆回線接続で、加入料 ¥30,000、¥115,000/月
b.IIJ (Internet Initiative Japan Inc. : 株式会社インターネットイニシアティブ企画)
一般第2種の通信事業者として1993年 7月にサービスを開始
1994年 2月末に、特別第2種の登録を完了予定(国際間もIP接続が可能になる)
個人ユーザ向けにパソコン等からのダイアルアップサービスもある
1993年末現在のアクセスポイントは、東京、大阪、横浜、つくばで、
今後、札幌、仙台、金沢、名古屋、京都、広島、福岡、静岡等を追加予定
利用料金の例: 64Kbpsの専用回線接続で 50万円/月、初期費用 6万円
(ユーザー側のルータ、DSUの料金及びルータまでの監視費用を含むが、専用回線の施設、利用料金は含まれない)
ダイヤルアップのUUCPサービスで、加入料 3万円、基本料金 2000円/月
通信料金 30円/分(電話料金は別に必要)
また、ダイヤルアップIPサービスも1994年 4月に開始する予定
1994年 1月17日現在、顧客数(企業、個人等)は 240
c. IIKK (InterCON International KK)
米国 InterCON 社の日本子会社としてスタート、その後米国PSI社が買収、社名変更か?
日本、北米、南米、欧州のどこからでもインターネットサービスの利用が可能
サービスの種類は 3つ(Bronze, Silver, Gold )を予定
(5) 新社会資本整備の一環としてのインターネット関係政策
a. 統合的研究ネットワークの構築
平成5年度補正予算で各省庁にスパコン、LAN が整備
平成5年6月に関係省庁(科技、文部、通産、郵政)合同で米国に調査団を派遣
平成6年度科学技術振興に関する重点指針に「研究情報流通のための基盤整備」が盛り込まれた
科学技術会議政策委員会に研究情報ネットワーク懇談会を設置( 7月22日に決定)
(仮称)研究情報整備・省際ネットワーク推進制度
94年度予算要求額:総額11億円(科学技術振興調整費)
(内訳)ネットワーク整備:6億円
アプリケーション:2億円
データベース:3億円
(6) 今後の課題(私見)
a. 安定した運用と人材の育成
現在運用されているネットワークの多くは、運用にはそれなりの知識と経験が必要であることもあり、大学の先生や研究所 の研究者によってボランタリに支えられているものが多い。しかし、インターネットは 24時間/日、365日/年の安定した運用が必要である(夜も、日曜も、祭日も、お正月もない)。したがって、今後、人材育成を重視し、人材が育つ環境整 備を整えるとともに、民間事業者が健全に発展して行くような環境を整備して行く必要がある。
b. 政府の支援
日本のインターネットは、米国に6、7年の遅れており、回線速度は現在2桁おそい。米国のNSFがNSFNETをサ ポートし発展の基礎をつくったように、少なくとも研究者のためのバックボーンネットの構築は政府が積極的にサポートすべきである。そのサポートの方法につ いては、新技術を取り込む柔軟なメカニズムが必要であり、多様な利用形態に対応できる柔軟さが必要である。また、OSIを含むマルチプロトコルネットワー クとして構築していく必要がある。
政府の支援方法については、米国の例も参考にしつつ、状況に応じ柔軟に変更していくことが重要である(米国は来年春か ら新しい運用体制になる)。
c. ネットワーク冗長性の問題
国内のバックボーン、海外との回線については、ある程度の冗長性が必要であるが、限度を越えて冗長である必要性はな い。こうした回線の調整が必要である。
d. 政府がサポートするネットワークのAUPとネットワーク間の調整
政府がサポートするネットワークのAUP(Acceptable Use Policy)および商用インターネットとの接続については、利用者ができる限り自由にネットワークが利用できるようなものになることが望ましい。また、 ネットワーク間の接続の調整、ルーティングの調整を行う仕組・組織を整備する必要がある。(政府がやるべきという意見ではない)調整はアカデミックネット 間だけでなく、当然商用ネットも含めて行う必要がある。
e. コスト負担の在り方
インターネットでは、利用者の利用量に応じて課金をすることは、一部(公衆電話網を通じたアクセス)を除いて、事実上 不可能である。したがって、コスト負担の在り方について、関係者で十分な調整が必要である。特に、現在ボランタリな形で発展しつつある地域ネットにおける 会費・接続料を海外回線を含むネットワークの運営費も適正に分担する形に整えていく必要がある。
f. アジア・パシフィックのインターネットの在り方
現在、アジア・パシフィック域内の各国は、それぞれが独自に米国への回線を保有している。アジア・パシフィックのハブ は必要か、必要ならどのように整備すべきかについて議論が必要である。また、アドレスの割当を行うAPNIC の設立についても検討が必要である。(当然、この中で日本の果たすべき役割についても考えていく必要がある。)
(以上)
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