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DX再考 #15 データ駆動(その4)

ホークアイ(Hawk-Eye)

 スポーツにおけるDXは日々進化している。おそらく、この原稿を書いている時点でスポーツ界で最もよく利用されているシステムの一つは「ホークアイ」だろう。
 2022年のサッカー・ワールドカップでは「三笘の1ミリ」がニュースになったが、この判定で利用されていたのもホークアイだと言われている。ホークアイは、サッカーだけでなく、さまざまなスポーツのボールのトラッキングやビデオ判定に活用されている。たとえば、テニスのイン・アウト判定や野球の投球や打撃の分析、ラグビーのビデオ判定などである。
 判定に利用できるということは、その適用ケースによっては判定を行う審判が不要になることもあり得る。実際に、全米オープンテニスでは2020年から、全豪オープンテニスでは2021年から、ホークアイ・ライブ(Hawk-Eye Live)を採用することによって、ボールのイン・アウト判定をする線審を廃止している。

出典:https://lond-jnl.me/2020/08/hawk-eye-live/

 このホークアイは、2022年3月時点で約25の競技、90を超える国の500以上のスタジアムで利用されている。米国のメジャーリーグでは、数年前にはトラックマン(TrackMan)というシステムが利用されていたが、より精度が高いという理由で、現在はホークアイが利用されている。
 日本のプロ野球でも2020年にヤクルトスワローズの本拠地である神宮球場に、2022年には広島東洋カープの本拠地であるマツダスタジアムに、2023年には中日ドラゴンズの本拠地であるバンテリンドームに導入されている。

 ホークアイを使えば、投手のリリースポイント、投球の速度、回転数、回転軸、軌跡、変化量、打球の速度、角度、軌跡、バットのスイングスピード、加速度、全選手の骨格情報と動作量などを計測できる。
 こうしたデータは、チームの戦略強化、作戦立案、審判の技術力向上のために利用されている。

 ホークアイはボールだけでなく選手の骨格情報を取得することも可能なので、ストライク・ボールの判定も可能である。
 ちなみに、2018年メジャーリーグでは、ボール/ストライクの誤審が、1ゲームあたり14回もあったと言われており、野球ファンの中にはボール/ストライクの判定にホークアイのようなシステムを利用すべきだという声も少なくない。
 実際、ホークアイの前に利用されていたトラックマンが、2019年7月に独立リーグの公式試合で、ボール/ストライクの判定に利用されている。こうしたことから、メジャーリーグでもそう遠くない未来にホークアイのようなシステムがボール/ストライクの判定に利用されるのではないかと思われる。

 余談であるが、このシステムを提供しているHawk-Eye Innovations社は、2011年にソニーが買収してソニーの子会社になっている。

ラプソード(Rapsodo)

 ホークアイやトラックマンはスタジアムなどの競技場に設置される比較的規模の大きなシステムであるが、機能を限定して小型化した装置もある。

出典:https://baseball-one.com/rapsodo/

 ラプソードは、野球やソフトボールに特化した持ち運び可能なトラッキング・システムで、投手の投球や打者の打球のデータを測定・分析することができる。
 投球については、球速、回転数、回転軸、変化量、ストライク/ボールなどの計測が、打球については、初速度、角度、方向、回転数、回転軸、推定飛距離などの計測が可能である。
 この装置の価格は数十万円であるため、プロ野球のチームだけでなく、大学や高校の野球チームでも利用されるようになってきており、個人的に購入している野球選手もいるらしい。


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