BCN 視点 #58 「テレビ時代の終焉?」 (2015年9月10日)
8月に米国のメディア株が急落した。8月21日の終値は7月末に比べてタイム・ワーナーと21世紀フォックスは約2割、バイアコムは約3割下落した。米国の投資家はテレビ系メディアの将来に不安を感じている。
米国では若者を中心に「コードカッター」が急増している。コードカッターとは、CATVの契約を解約してネットフリックスやフールー、ユーチューブなどのインターネット系メディアに乗り換える消費者のことである。
広告市場からメディアをみると、すでにインターネットはテレビを凌駕している。米IABによれば、米国におけるインターネット広告費は、2011年にCATVを上回り、2013年には地上波テレビを追い越して1位になっている。(2014年のインターネット広告費は約500億ドル、地上波テレビは約400億ドル、CATVは約250億ドルである。)
さらに、米国では4Kテレビの市場が拡大しているにもかかわらず、テレビ系メディア事業者は4K対応の番組をほとんど提供していない。これに対して、ネットフリックス、ユーチューブなどのインターネット系メディアは、超高精細な4K対応コンテンツの提供を積極的に進めようとしている。このままの状況が続けば、いずれ4K対応のストリーミング動画を処理できるインターネット対応のセットトップボックスが普及し、視聴者のインターネットシフトが加速するだろう。
テレビ系メディアに残されたコンテンツは、リアルタイムで視聴されるスポーツだと言われている。しかし、この貴重なコンテンツもいずれネットに奪われるだろう。ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)は、10月25日にロンドンで行われるビルズ対ジャガーズの試合をインターネットのみで配信することを決定した。
では日本はどうだろう。広告市場をみる限り、まだテレビは健在だ。電通の「2014年日本の広告費」で媒体別の広告費をみると、第1位は地上波テレビ(1兆8347億円)であり、第2位がインターネット(1兆519億円)、第3位が新聞(6057億円)となっている。ただ、5年前と比べて、インターネットの広告費は49%増加しているのに対して、地上波テレビの広告費は7%しか増加していない。インターネットがテレビを超える日は近いのかもしれない。