BCN 視点 #8 「電子商取引に関する統計の整備を」 (2005年12月12日)
米商務省センサス局は11月22日に2005年第3四半期(7─9月期)の小売業のオンライン売上高の推計値を発表した。季節調整済みで、前期比5.7%増の223億2300万ドルである。店頭販売を含む小売業全体の売上高は9578億6400万ドルなので、オンライン販売の占める割合は2.3%である。
00年第3四半期のオンライン売上高は72億6200万ドルだったので、この5年間で3倍に成長したことになる。年平均成長率はなんと25%以上になる。この成長はまだ続く。
米調査会社のeMarketerは、このセンサス局ベースのオンライン小売市場は、08年には1361億ドルにまで成長すると予測している。これは04年の推計値の約2倍に相当する。伸び率は若干低下するものの、オンライン市場の拡大はまだまだ続くと予想しているのである。
では、次は日本との比較、といきたいところなのだが、残念ながら日本にはこれに相当する統計がない。経済産業省とECOM(次世代電子商取引推進協議会)が毎年発表している電子商取引に関する調査結果があるが、これは対象も定義が異なっているので比較することはできない。まず、小売業のオンライン販売額ではなく、BtoC(消費者向け電子商取引)が対象となっている。
両者は同じように見えて別者である。前者には小売業の企業向け販売額が含まれるが、後者には含まれない。前者はサービス業の売上高(たとえばチケット販売や旅行サービス)は含まないが、後者には含まれている。
さらに(これは過去から何度も指摘されてきていることではあるが)経済産業省とECOMの電子商取引の定義は、ネット上で注文がなされなくても(店頭で購入したものでも)、購入の契機になったのがネット上の情報であれば電子商取引だということになっている。この拡張された定義が適用されるのは自動車と不動産だけではあるが、これはOECDにおける電子商取引の定義からも逸脱している。
「統計は未来をひらく道しるべ」、これは25年ほど前の「統計の日」の標語である。どんな政策も、まず実態をきちんと把握することからスタートする。社会の情報化や電子商取引を推進するならば、米センサス局の統計のように、国の統計としてその市場規模を捉える必要があるのではないだろうか。
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