BCN 視点 #29 「インターネット大学の未来」 (2010年8月19日)
日本には、すべての授業をインターネットで行うインターネット制の大学は、4年前に開学したサイバー大学と、今年4月に開校したビジネス・ブレークスルー大学(略称BBT大学)の2校しかない。しかし、お隣の韓国には17校のインターネット大学があり、数万人が大学教育を受けている。
米国にも数多くのインターネット大学があり、なかでもアポログループが経営するユニバーシティ・オブ・フェニックスの学生数は、対面授業の学生を含めて30万人である。また、英国のオープン・ユニバーシティで学ぶ学生は、全世界で18万人を数える。
スクーリングのないインターネット大学は、通学する必要がない。ブロードバンドに接続できれば場所も問わない。授業はオンデマンドで配信されるので、24時間いつでも好きな時間に勉強ができる。通学が難しい障がい者でも、離島に住んでいても、仕事をもっていても大学で勉強ができる。さらに、インターネットの双方向性を活かし、教員と学生、学生間の緊密なコミュニケーションがとれるし、学生一人ひとりに対するきめ細かなフォローアップも実現できる。このため、従来の通信制大学に比べて、ドロップアウトする学生を少なくすることができる。
また、学習管理システムによって、学生の受講状況、テストやレポートの結果、電子掲示板による質疑応答、学業成績などの情報をリアルタイムに把握でき、この蓄積された情報を分析することによってカリキュラム、授業内容、講義方法などの改善を図ることができる。
インターネット大学は、こうした優れた特徴をもっているのだが、残念なことに日本ではこのタイプの大学で学ぶ学生はまだ少ない。韓国のインターネット大学のなかで最もレベルが高いといわれている漢陽サイバー大学には、6000人の学生が在学しているが、完成年度を迎えた日本のサイバー大学の総学生数は、その6分の1程度でしかない。
サイバー大学は5月21日、IT総合学部の強化を発表すると同時に、世界遺産学部の入学者数が減少していることを理由に、今年度の秋学期以降の新規学生募集を停止すると発表した。
幸いにしてIT総合学部の入学者数は昨年を底に上昇傾向にあるが、先行きは楽観できない。優れた特徴をもつインターネット制大学が日本でも定着し、インターネットで学ぶ学生が増加することを期待したい。