BCN 視点 #11 「国産検索エンジンはグーグルを超えるか」 (2006年9月11日)
今年7月末、50以上の組織や個人が参加する「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」が発足した。報道によれば、インターネット上の検索サービスや検索技術がグーグルなどの米国企業によって支配されている現状を踏まえ、国内の企業や研究所などにおける研究を集約し、3─5年後の実用化を目指して次世代の検索技術を開発することが目標になっている。プロジェクト予算は未定であるが、年間数十億円だといわれている。
これだけの予算があれば、国産の検索エンジンを開発することは難しくない。ただ、その新技術やソフトウェアがグーグルを超えるものになるかどうか、あるいは世界を変える存在になるかどうかは、別の問題だ。情報技術分野では、世界を変えてきたのはお金でも大企業でもない。卓越したアイデアを持った天才たちが真に創造的なソフトウェアを生み出し、新しい世界を切り拓いてきたのである。
UNIXはケン・トンプソンとデニス・リッチーが、世界初の表計算ソフトはダン・ブルックリンとボブ・フランクストンが、インターネット・ブームの引き金になったブラウザソフトMosaicはマーク・アンドリーセンとその仲間たちが創り出したものである。また、グーグルの検索エンジンも、サーゲイ・ブリンとラリー・ペイジという二人のスタンフォード大学の学生によって生み出されている。
つまり、プロジェクトの成否は、予算の多寡でも、参加する組織や人の数でもなく、そこに天才がいるかどうかである。凡人や秀才を大勢集めても偉大なソフトウェアは生まれない。
仮に、研究開発費や参加する研究者の数がプロジェクトの成否を左右するのであれば、グーグルを相手にして勝ち目はない。『ウェブ進化論』の著書である梅田望夫氏の言葉を借りれば、グーグルは「今や世界中の才能がグーグル入社希望の列を作っているという化け物会社」になっており、社内に優秀な人材は山ほどいる。研究開発費は、今年上半期だけで、なんと600億円を超えている。
情報大航海プロジェクトに期待したいのは、世界が驚くような情報処理技術であり、使ってみてわくわくするようなソフトウェアである。グーグルに対抗できる国産検索エンジンという枠にとらわれず、大学や企業に埋もれている卓越した才能やアイデアを発掘し、世に送り出してほしい。
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